[PD22] 保育者養成課程学生の保護者支援に対する意識
Keywords:保育者養成、保護者支援
問題と目的
保育所における「保護者に対する支援」は,2008年告示の保育所保育指針で保育士の業務として明記され,2017年の改訂では「子育て支援」という章立てのもと,支援の更なる充実が謳われている。幼稚園教育要領においても同様で,保育者の専門性を活かし,施設の機能を活用しながら子育て支援を積極的に行うことは,保育者の職務の一環とされている。保育者養成課程学生は,「保育相談支援」「相談援助」などの科目で保護者支援について学ぶ。保育現場からも養成校に期待することとして保護者対応力の資質があげられている(太田,2008)。しかし,多くの学生にとって,保護者は自分より年上で経験が豊富であることから,支援への不安や戸惑いを抱く者は少なくない。そこで,本研究では,保護者支援に対する学生の意識を明らかにして,学生に必要な学びについて検討した。
方 法
調査対象者と手続き
保育者養成短期大学2年生165人を対象に,「保育相談支援」の授業(全15回)の初回開始時(以後,授業前)と第9回終了時(以後,授業後)に質問紙調査を行った。第9回を授業後としたのは,この回までに保育相談支援の原理と構造,方法と技術,展開など,保護者支援に関する基本を押さえること,第9回授業後に学生は3週間の幼稚園実習に入ることから,この回を一区切りと考えたことによる。なお,調査は研究を目的に実施するものであり,回答により不利益を被ることはない旨を,調査用紙に明記した。
調査内容
授業前調査では,「この授業を受ける以前に,保護者への支援について調べたり勉強したことがありますか」を尋ねた。次に,保護者支援について「大切だと思う」「興味がある」「イメージがもてる」「学ぶのは難しい」「自信はある」の5項目について,4件法で回答を求め,各々の回答理由を自由に記述してもらった。授業後調査においても,上記の5項目を尋ねた。
結果と考察
授業前調査の「保護者支援について学んだ機会の有無」では「なし」の回答が149人で,89.8%は保護者支援を初めて学ぶ学生だった。次に保護者支援について「大切だと思う」「興味がある」「イメージがもてる」「学ぶのは難しい」「自信はある」の5項目について,対応のあるt検定を行い,授業前と授業後の学生の意識を比較した(Table 1)。
その結果,「大切だと思う」「イメージがもてる」では,授業前より授業後で高く,授業後の自由記述からは,授業を通して,子どもの健全な成長のために,また親自身のために保護者支援は大切であることへの理解を深め,どのように支援していくのかを具体的にイメージできるようになったことが示された。一方,「学ぶのは難しい」についても授業前より授業後で高く,授業後の自由記述では,マニュアルがなく正解もなく,一人ひとりに自分の言葉で向き合い対応することの難しさがあげられた。また,「興味がある」に関しては授業前と後で差はみられなかったが,自由記述において,授業前では「分からないから学びたい」という回答が多かったのに対し,授業後では「学ぶほどに難しさを感じてもっと学びたい」という内容へと,質的な変化がみられた。「自信はある」についても授業の前と後での差はなく,自信のなさが示された。授業後の自由記述からは,授業で学んでも実際にできる自信がもてないことや,実践や経験がないことによる自信のなさが窺われた。
以上からは,授業での学びにより,保護者支援に関する知識やイメージはもてるようになる一方,実際に自分が支援者になることへの不安は高く,実体験のないことがひとつの要因として示された。したがって,実習やその他の機会を利用して,学生が実際に保護者と関わることのできる場の提供が,教授における課題として示唆された。
保育所における「保護者に対する支援」は,2008年告示の保育所保育指針で保育士の業務として明記され,2017年の改訂では「子育て支援」という章立てのもと,支援の更なる充実が謳われている。幼稚園教育要領においても同様で,保育者の専門性を活かし,施設の機能を活用しながら子育て支援を積極的に行うことは,保育者の職務の一環とされている。保育者養成課程学生は,「保育相談支援」「相談援助」などの科目で保護者支援について学ぶ。保育現場からも養成校に期待することとして保護者対応力の資質があげられている(太田,2008)。しかし,多くの学生にとって,保護者は自分より年上で経験が豊富であることから,支援への不安や戸惑いを抱く者は少なくない。そこで,本研究では,保護者支援に対する学生の意識を明らかにして,学生に必要な学びについて検討した。
方 法
調査対象者と手続き
保育者養成短期大学2年生165人を対象に,「保育相談支援」の授業(全15回)の初回開始時(以後,授業前)と第9回終了時(以後,授業後)に質問紙調査を行った。第9回を授業後としたのは,この回までに保育相談支援の原理と構造,方法と技術,展開など,保護者支援に関する基本を押さえること,第9回授業後に学生は3週間の幼稚園実習に入ることから,この回を一区切りと考えたことによる。なお,調査は研究を目的に実施するものであり,回答により不利益を被ることはない旨を,調査用紙に明記した。
調査内容
授業前調査では,「この授業を受ける以前に,保護者への支援について調べたり勉強したことがありますか」を尋ねた。次に,保護者支援について「大切だと思う」「興味がある」「イメージがもてる」「学ぶのは難しい」「自信はある」の5項目について,4件法で回答を求め,各々の回答理由を自由に記述してもらった。授業後調査においても,上記の5項目を尋ねた。
結果と考察
授業前調査の「保護者支援について学んだ機会の有無」では「なし」の回答が149人で,89.8%は保護者支援を初めて学ぶ学生だった。次に保護者支援について「大切だと思う」「興味がある」「イメージがもてる」「学ぶのは難しい」「自信はある」の5項目について,対応のあるt検定を行い,授業前と授業後の学生の意識を比較した(Table 1)。
その結果,「大切だと思う」「イメージがもてる」では,授業前より授業後で高く,授業後の自由記述からは,授業を通して,子どもの健全な成長のために,また親自身のために保護者支援は大切であることへの理解を深め,どのように支援していくのかを具体的にイメージできるようになったことが示された。一方,「学ぶのは難しい」についても授業前より授業後で高く,授業後の自由記述では,マニュアルがなく正解もなく,一人ひとりに自分の言葉で向き合い対応することの難しさがあげられた。また,「興味がある」に関しては授業前と後で差はみられなかったが,自由記述において,授業前では「分からないから学びたい」という回答が多かったのに対し,授業後では「学ぶほどに難しさを感じてもっと学びたい」という内容へと,質的な変化がみられた。「自信はある」についても授業の前と後での差はなく,自信のなさが示された。授業後の自由記述からは,授業で学んでも実際にできる自信がもてないことや,実践や経験がないことによる自信のなさが窺われた。
以上からは,授業での学びにより,保護者支援に関する知識やイメージはもてるようになる一方,実際に自分が支援者になることへの不安は高く,実体験のないことがひとつの要因として示された。したがって,実習やその他の機会を利用して,学生が実際に保護者と関わることのできる場の提供が,教授における課題として示唆された。