日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD24] 他者との学習における動機づけ調整過程

動機づけの変動性との関連

梅本貴豊1, 稲垣勉2 (1.京都外国語大学, 2.鹿児島大学)

Keywords:動機づけ調整、動機づけの変動性、協同学習

問題と目的
 近年,協同学習に関する注目がさらに高まっていることから,効果的な協同学習を促進するための要因について検討することが重要視されている。例えば,梅本他(2018)は,協同学習における動機づけ調整過程に着目し,「学習中の自分自身の動機づけの調整」という観点から,効果的な他者との学びについて検討を行っている。
 さて,学習への取り組みを支えている動機づけを捉える新たな視点として,一定期間内の動機づけの変動を示す「変動性」というものがある(岡田他, 2013)。動機づけの変動性と先延ばしとの間に正の関連が見られたことから(岡田他, 2015),安定した動機づけをもって学習を行うことの重要性がうかがえる。これに関して梅本・稲垣(2019)は,個人学習場面を対象とし,動機づけ調整方略によって授業中の状況的動機づけが安定する可能性を明らかにしている。こういった動機づけの変動性という視点に着目し,協同学習の促進について検討することも重要であろう。
 そこで本研究では,協同学習における動機づけ調整と動機づけの変動性との関連について検討する。特に今回は,協同学習の動機づけを前後半に分けて検討する。前半は課題の新規性などから意欲的に安定して学習に取り組みやすいが,後半は疲労や退屈さなどから,動機づけの低下や変動が大きいと考えられる。そのため,動機づけ調整は,特に協同学習の後半に重要になると考えられる。
方  法
手続き 2つの大学のそれぞれの授業において,40分間の協同学習(3名から5名程度でグループを構成)に参加した大学生計29名のうち28名のデータを分析対象とした(男性13名,女性15名; 2年生12名,3年生16名)。協同学習の前後には質問紙による調査を行い,倫理的配慮として,参加者から調査協力への同意を得た。
プレ調査内容 協同学習一般における動機づけ調整方略の使用について,梅本他(2018)の項目を用いて測定した(38項目,5件法)。
ポスト調査内容 協同学習中の状況的動機づけについて,開始から終了まで5分ごとに9時点の評定を求めた(9件法)。協同学習における行動的および感情的エンゲージメントについて,梅本他(2018)の項目を用いた(各5項目,5件法)。
結果と考察
 まず,9時点の状況的動機づけの平均値を動機づけレベル,個人内標準偏差を動機づけの変動性として変数化した。また,9時点中の5時点目以前を「前半」,5時点目以降を「後半」として,それぞれ変数化した。動機づけ調整方略については,5つの下位尺度間に正の関連が見られており(梅本他, 2018),また,本研究ではサンプルサイズが限られるため,下位尺度を構成せず,全ての項目を用いて動機づけ調整傾向を構成した。
 次に,偏相関分析を用いて動機づけ調整傾向と動機づけレベル,動機づけの変動性との関連について検討した(Table 1)。その結果,動機づけ調整傾向と後半の変動性との間に負の相関が示された。つまり,動機づけ調整の傾向が高い学習者は,協同学習の後半でも,安定した動機づけで学習に取り組むことができる可能性を示している。また,先行研究(梅本・稲垣, 2019)と同様に,動機づけレベルは積極的な学習への取り組みを概念化した行動的および感情的エンゲージメントとの間に正の関連を示した。これは,本研究の状況的動機づけの測定の妥当性を支持するものである。
 今後は,動機づけ調整方略の下位尺度を用いた詳細な検討や,学習中の発話分析などからより詳細な動機づけ調整過程について検討することも重要である。