日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD25] ジグソー法を用いた性教育指導に関する授業の学習効果

KH coderによるテキストマイニングから

郡司菜津美 (国士舘大学)

Keywords:性教育指導、ジグソー法、KH coder

問題と目的
 教員養成系大学では,性教育指導に関する必須カリキュラムが組まれておらず,教員志望の学生らが性教育に関する指導スキルを制度的に身につけないまま現場に出て行くことが問題視されてきた(天野ら,2001:西田ら,2005:児島,2015:津田ら,2017)。それにも関わらず,教員養成における性教育の指導スキルに関する研究はほとんど見当たらない。そこで本研究では,文部科学省が推奨するアクティブ・ラーニングの手法を採用した性教育指導のプログラム開発及び効果検証を試みる。本研究は,アクティブ・ラーニングの手法の一つであるジグソー法(Aronson, 1978)を用い,性教育指導観の涵養を目指した授業デザインの学習効果について検討することを目的とする。
方  法
 2018年7月,首都圏A私立大学の教員免許取得必修科目「教職論」において,受講者149名(男子84名,女子60名,不明5名)を対象に,「性は教育すべきことなのか?(郡司, 2016)」という課題を与え,ジグソー法を用いて文献を読み,議論する形式の講義を実施した。授業の学習効果を明らかにするため,授業の前後に(1)性に対するイメージ,(2)性教育を行う理由,(3)性教育による児童生徒の変化,についてたずねる質問紙調査を実施した。得られた回答をそれぞれテキストデータ化し,分析ソフトKH Coder3(Alpha13)を使用してテキストマイニングを実施した。前処理として同一ものを表す単語(例:子供・子ども→子供)を統一した。その後,共起ネットワーク図の作成をした。語の最小出現数を5と設定し,共起関係の絞り込みを描画数60とした。
結  果
 学生149名分の上記(1)〜(3)のテキストデータを総合的に把握するために,KH coderにて抽出した頻出上位150語を表にまとめた(本稿では割愛)。これらの出現頻度について共起ネットワークを用いて表したものがサブグラフで(Figure1・2参照,(1)・(3)の結果については割愛),出現数の多い語ほど大きな円となり,強い共起関係ほど太い線で結ばれる。頻出語のみでは読み解けない文脈の推測を可能にするものである。(1)〜(3)について比較した結果,2点の特徴的な変化が見られた。1点目は,事前事後両者ともに使用された用語(例:性・大人など)が出現する文脈に変化があったこと(例:事前「大人として知っておくべきこと」事後「大人と子供が共に成長する」),2点目は,授業内で取り扱った文献の内容を応用した記述が見られるようになったこと,である。
考  察
 同じ単語が異なる文脈の中で用いられるようになったことから,学生らに性についての概念変化が起こった可能性が示唆された。また,文献の内容について授業者が口頭で説明する機会がなかったにも関わらず,性について文献に記述されていない応用的な記述があったことから,ジグソー法で課題に回答する過程の中で他者と対話し,主体的に学習したことによる効果であったと推測できた。
付  記
 本研究はJSPS科研費17K18104の助成を受けたものです。