日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD31] 小中移行期における英語に対する目標認知,学習観,学習動機の変容

木澤利英子1, 篠ヶ谷圭太2 (1.駒沢女子大学, 2.日本大学)

Keywords:縦断研究、英語学習、小中接続

問題と目的
 現在,多くの小学校で高学年を対象とした外国語活動が行われており,英語の教科化が目前となった今,中学校における英語学習へのスムーズな移行を可能とする教育方法を確立させることが大きな課題となっている。しかし,これまで数学に関しては,小中移行期における変容を扱った縦断的な研究が行われているものの(cf., 鈴木, 2013),英語学習に対する学習者の学習観や動機づけが小中移行期でどのように変容するかについてはほとんど検討されていない。先行研究では,授業目標の認知(授業で何が重視されているかの認知)などの環境要因が学習者の信念や動機づけに影響を及ぼすことが指摘されていることを考慮し(e.g., Wolters, 2004),本研究では,3年間に渡って行われた縦断調査のデータを用いて,小中移行期における授業目標の認知,学習動機,学習観の変化について検討を行った。
方  法
 東京都および大阪府の公立小学校4校および中学校2校の児童・生徒に対し,小学校6年時から3年間にわたり質問紙調査(計3回)を行った。質問紙の表紙には調査の主旨や目的を明記し,回答は任意であり,回答内容は学校の成績と無関係であることを伝えた。分析では,同意を得た調査協力者のうち,3回の調査すべてに回答した173名のデータを使用した。質問紙の構成を以下に示す。回答はすべて5件法で求めた。
 英語(外国語活動)の目標認知 英語(外国語活動)の授業の目標認知について,篠ヶ谷・木澤(2017)と同様の22項目を使用して回答を求めた。下位尺度は「知識・スキル(単語や文法を身につけること)」「異文化理解(外国の文化を理解すること)」「反復練習(同じフレーズを何度も繰り返すこと)」「レクリエーション(英語に慣れ親しむこと)」の4つであった。
 学習観 学習観とは,効果的な学習方法に関する信念である。項目はUesaka et al.(2009)を参考に,認知主義的学習観(e.g., 英語の勉強では知識のつながりを理解することが重要だ),非認知主義的学習観(e.g., 英語の勉強ではとにかく覚えることが大切だ),それぞれ4項目を用いて測定した。
 学習動機 英語を勉強する理由である「学習動機」について,市川・堀野・久保(1998)を参考に,内容関与動機(面白いから,将来役に立つからなど学習内容に価値を見出している動機),内容分離動機(褒められたいから,いい点をとって自慢したいからなど学習内容と関係のない動機),それぞれ5項目を用いて測定した。
結果と考察
 想定される下位尺度ごとに項目平均値を算出し,分析に使用した。時期(3時点)を独立変数とした分散分析の結果をTable 1に示す。
 下位検定の結果,授業の目標認知のうち,レクリエーションや異文化理解の得点は,小学6年時から中学2年時にかけて年々低くなっていた。一方,暗記得点では小中移行期に変化はなく,中学1年時よりも中学2年時に高まっていた。また,スキルの得点は中学1年時よりも中学2年時の方が有意に低かった。こうした結果は,中学2年では高校受験が視野に入り,英語の授業でコミュニケーションスキルの習得ではなく知識の暗記が重視されるようになっていくことを示しているといえる。また,鈴木(2013)の数学学習の結果と異なり,学習観についてはむしろ非認知主義的な学習観(英語の勉強ではとにかく覚えることが大切だ)が中学校移行後に低まっていた。また,学習動機については,内容関与動機が6年時よりも中学2年時の方が低くなっていることが示された。今後はこうした縦断データを用いた構造方程式モデリングにより,変数間の因果関係の推定や変容パターンの個人差の検討が求められる。