[PD40] 小学生の問題行動の規定要因
家庭環境,個人の特性,友人環境,学校生活による影響の検討
Keywords:問題行動、小学生
問題と目的
これまで,問題行動に関する研究は数多く行われており,様々な要因が指摘されてきた。問題行動の要因については,内閣府(2001)が実施した「少年非行問題等に関する世論調査」によると,非行の要因として第1位に家庭環境,第2位に本人自身の性格や資質,第3位に友人環境,第4位に学校生活が挙げられている。しかし,この調査の問題点として,個人の主観的な意見を集計したものであり,回答者が13歳以上と小学生の意見が入っていないことが挙げられる。したがって,本研究ではこれらの要因が小学生の問題行動に及ぼす影響について検討を行う。
そこで,本研究では,小学生を対象として,家庭環境として親子関係,個人の特性として攻撃性,友人環境として友人への同調,学校生活として学級適応感を取り上げ,問題行動との関連について検討する。
方 法
調査協力者と手続き 小学4~6年生297名(男子153名,女子144名)を対象に質問紙調査を実施した。なお,調査実施に際して,調査協力者に成績と関連がないことや外部に回答結果が漏れないこと,調査協力者の回答結果は研究成果の発表にのみ使用され,回答結果は分析後に破棄されることを伝えることで,倫理面への配慮を行った。
調査内容 ①問題行動の経験:加藤・大久保(2008)の問題行動の経験尺度の「対人的問題行動」,「非対人的問題行動」の2因子10項目を使用した。②親子関係:小保方・無藤(2007)の父親・母親・友達との関係測定尺度のうち3項目を使用した。③攻撃性:坂井・山崎(2004)の小学生用P-R攻撃性質問紙の「表出性攻撃」,「不表出性攻撃」,「関係性攻撃」の3因子9項目を使用した。④友人への同調性:石本ら(2009)の友人への同調性尺度のうち3項目を使用した。⑤学級適応感:江村・大久保(2012)の小学生用学級適応感尺度の「居心地の良さ」,「充実感」,「被信頼・受容感」の3因子9項目を使用した。
結果と考察
問題行動の経験の性差と学年差の検討 問題行動の経験の性差と学年差を検討するため,性別と学年を独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果,「対人的問題行動」では,性別の主効果(F(1,288)=4.045,p<.05)がみられ,男子が女子よりも有意に高かった。また,「対人的問題行動」では,学年の主効果(F(2,288)=2.747,p<.1)がみられ,6年生が4年生よりも有意に高い傾向がみられた。
親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感が問題行動の経験に及ぼす影響の検討 問題行動の経験に及ぼす影響を検討するために,親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感を独立変数として,性別ごとに重回帰分析を行った。その結果,男子において,「対人的問題行動」については「関係性攻撃」(β=.383,p<.001),「友人への同調」(β=.157,p<.05)が正の影響を与えていた。「非対人的問題行動」得点については「関係性攻撃」(β=.334,p<.01)が正の影響を与え,「被信頼・受容感」(β=-.173,p<.1),「充実感」(β=-.214,p<.1)が負の影響を与えていた。女子において,「対人的問題行動」については「親子関係」(β=-.187,p<.05)が負の影響を与え,「表出性攻撃」(β=.535,p<.001),「関係性攻撃」(β=.158,p<.05)が正の影響を与えていた。「非対人的問題行動」については,「友人への同調」得点(β=.174,p<.1)が負の影響を与えていた。
問題行動の要因の特徴別の分類による検討 問題行動の要因の特徴により調査協力者を分類するために,まず,親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感の標準化得点に基づいて,ウォード法によるクラスター分析を行った。その結果,「中間群」,「友人への同調高群」「関係性良好群」「関係性不良群」の4つに分類することが妥当であると判断した。次に,問題行動の要因の特徴を検討するために,各クラスターを独立変数とした1要因の分散分析を行った。その結果,有意差が認められたため,Tukey法による多重比較を行った。その結果,「対人的問題行動」(F(3,290)=14.789,p<.001)では,「関係性不良群」が「中間群」と「友人への同調高群」と「関係性良好群」よりも有意に高く,「中間群」と「友人への同調高群」が「関係性良好群」よりも有意に高かった。「非対人的問題行動」(F(3,290)=8.882,p<.001)では,「関係性不良群」が「中間群」と「関係性良好群」よりも有意に高かった。
これまで,問題行動に関する研究は数多く行われており,様々な要因が指摘されてきた。問題行動の要因については,内閣府(2001)が実施した「少年非行問題等に関する世論調査」によると,非行の要因として第1位に家庭環境,第2位に本人自身の性格や資質,第3位に友人環境,第4位に学校生活が挙げられている。しかし,この調査の問題点として,個人の主観的な意見を集計したものであり,回答者が13歳以上と小学生の意見が入っていないことが挙げられる。したがって,本研究ではこれらの要因が小学生の問題行動に及ぼす影響について検討を行う。
そこで,本研究では,小学生を対象として,家庭環境として親子関係,個人の特性として攻撃性,友人環境として友人への同調,学校生活として学級適応感を取り上げ,問題行動との関連について検討する。
方 法
調査協力者と手続き 小学4~6年生297名(男子153名,女子144名)を対象に質問紙調査を実施した。なお,調査実施に際して,調査協力者に成績と関連がないことや外部に回答結果が漏れないこと,調査協力者の回答結果は研究成果の発表にのみ使用され,回答結果は分析後に破棄されることを伝えることで,倫理面への配慮を行った。
調査内容 ①問題行動の経験:加藤・大久保(2008)の問題行動の経験尺度の「対人的問題行動」,「非対人的問題行動」の2因子10項目を使用した。②親子関係:小保方・無藤(2007)の父親・母親・友達との関係測定尺度のうち3項目を使用した。③攻撃性:坂井・山崎(2004)の小学生用P-R攻撃性質問紙の「表出性攻撃」,「不表出性攻撃」,「関係性攻撃」の3因子9項目を使用した。④友人への同調性:石本ら(2009)の友人への同調性尺度のうち3項目を使用した。⑤学級適応感:江村・大久保(2012)の小学生用学級適応感尺度の「居心地の良さ」,「充実感」,「被信頼・受容感」の3因子9項目を使用した。
結果と考察
問題行動の経験の性差と学年差の検討 問題行動の経験の性差と学年差を検討するため,性別と学年を独立変数とした2要因分散分析を行った。その結果,「対人的問題行動」では,性別の主効果(F(1,288)=4.045,p<.05)がみられ,男子が女子よりも有意に高かった。また,「対人的問題行動」では,学年の主効果(F(2,288)=2.747,p<.1)がみられ,6年生が4年生よりも有意に高い傾向がみられた。
親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感が問題行動の経験に及ぼす影響の検討 問題行動の経験に及ぼす影響を検討するために,親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感を独立変数として,性別ごとに重回帰分析を行った。その結果,男子において,「対人的問題行動」については「関係性攻撃」(β=.383,p<.001),「友人への同調」(β=.157,p<.05)が正の影響を与えていた。「非対人的問題行動」得点については「関係性攻撃」(β=.334,p<.01)が正の影響を与え,「被信頼・受容感」(β=-.173,p<.1),「充実感」(β=-.214,p<.1)が負の影響を与えていた。女子において,「対人的問題行動」については「親子関係」(β=-.187,p<.05)が負の影響を与え,「表出性攻撃」(β=.535,p<.001),「関係性攻撃」(β=.158,p<.05)が正の影響を与えていた。「非対人的問題行動」については,「友人への同調」得点(β=.174,p<.1)が負の影響を与えていた。
問題行動の要因の特徴別の分類による検討 問題行動の要因の特徴により調査協力者を分類するために,まず,親子関係,攻撃性,友人への同調,学級適応感の標準化得点に基づいて,ウォード法によるクラスター分析を行った。その結果,「中間群」,「友人への同調高群」「関係性良好群」「関係性不良群」の4つに分類することが妥当であると判断した。次に,問題行動の要因の特徴を検討するために,各クラスターを独立変数とした1要因の分散分析を行った。その結果,有意差が認められたため,Tukey法による多重比較を行った。その結果,「対人的問題行動」(F(3,290)=14.789,p<.001)では,「関係性不良群」が「中間群」と「友人への同調高群」と「関係性良好群」よりも有意に高く,「中間群」と「友人への同調高群」が「関係性良好群」よりも有意に高かった。「非対人的問題行動」(F(3,290)=8.882,p<.001)では,「関係性不良群」が「中間群」と「関係性良好群」よりも有意に高かった。