[PD45] 大学生の共感経験とアイデンティティとの関連
キーワード:共感経験、アイデンティティ
問題と目的
共感経験(角田,1994)は,「①情動伝染などの受動的な共感性を除く,②感情的・認知的アプローチの両方が含まれる,③過去の経験という制約がある,④感情の種類に幅がある」といった定義から成り立ち,自分と他者が異なるということを意識した共感ができる者とそうでない(同情)者とを識別できるとされている(角田,1994)。
自分と他者が異なることを意識した共感ができる者とそうでない者の相違の要因の1つとして,たとえば青年期におけるアイデンティティ発達の様相との関連が予想される。
そこで本研究では,自他の区別に注目した共感の類型化により,大学生のアイデンティティ発達の様相とどのような関連がみられるかを検討することを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生157名。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」20項目。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)加藤(1983)の「自我同一性地位判定尺度」12項目。評定は,「6.まったくそのとおりだ」~「1.全然そうではない」の6件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE )」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
つづいて,自我同一性地位判定尺度(加藤,1983)による類型化を試みた。水本・山根(2011)を参考に,「現在の自己投入の水準」「一般的な過去の危機の水準」「一般的な将来の自己投入の希求の水準」の各項目の素点を合計し項目数で除したものを「投入」得点,「危機」得点,「将来」得点とし,これらの中央値を基準に高低で2分割した。そして,「投入」低群で「将来」低群を「同一性拡散」,「投入」低群で「将来」高群を「モラトリアム」,「投入」高群で「危機」低群を「早期完了」,「投入」高群で「危機」高群を「同一性達成」と分類した。
共感経験と自我同一性地位との関連を調べるために度数分布を算出し,χ二乗検定を行ったところ,双方に有意傾向が見られた(χ²=14.73,p<.10,df=9)。さらに残差分析を行ったところ,「両向型」においては「同一性達成」地位の度数が有意に高く,「不全型」は「同一性拡散」地位の度数が高い傾向,および「両貧型」においては「同一性達成」地位の度数が有意に低い傾向にあった(Table 1)。
考 察
結果より,共感経験タイプにおけるアイデンティティ発達の様相には差が見られた。
「両向型」は,同一性達成地位の者が多く,自他の個別性の認識をもってアイデンティティを確立していると推測される。
「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,アイデンティティを確立しづらいと予想される。
「両貧型」は,同一性達成地位の者が少なく,アイデンティティ形成に至るほどの共感体験が不足しているためと推測される。
共感経験(角田,1994)は,「①情動伝染などの受動的な共感性を除く,②感情的・認知的アプローチの両方が含まれる,③過去の経験という制約がある,④感情の種類に幅がある」といった定義から成り立ち,自分と他者が異なるということを意識した共感ができる者とそうでない(同情)者とを識別できるとされている(角田,1994)。
自分と他者が異なることを意識した共感ができる者とそうでない者の相違の要因の1つとして,たとえば青年期におけるアイデンティティ発達の様相との関連が予想される。
そこで本研究では,自他の区別に注目した共感の類型化により,大学生のアイデンティティ発達の様相とどのような関連がみられるかを検討することを目的とした。
方 法
調査対象 私立A大学の大学2~4年生157名。
調査時期 2016年1月中旬
使用尺度
1)角田(1994)の「共感経験尺度改定版」20項目。評定は,「1.全くあてはまらない」~「7.とてもあてはまる」の7件法である。
2)加藤(1983)の「自我同一性地位判定尺度」12項目。評定は,「6.まったくそのとおりだ」~「1.全然そうではない」の6件法である。
結 果
共感経験尺度改定版(角田,1994)の因子分析の結果,「共有経験尺度(Scale of Sharing Experience:SSE)」および「共有不全経験尺度(Scale of Insufficient Sharing Experience:SISE )」の2尺度に分かれた。先行研究と同様に,全体の中央値を基準に高得点群と低得点群に分け,2尺度の組み合わせ(両向型,共有型,不全型,両貧型)から,共感性の類型化をおこなった。
つづいて,自我同一性地位判定尺度(加藤,1983)による類型化を試みた。水本・山根(2011)を参考に,「現在の自己投入の水準」「一般的な過去の危機の水準」「一般的な将来の自己投入の希求の水準」の各項目の素点を合計し項目数で除したものを「投入」得点,「危機」得点,「将来」得点とし,これらの中央値を基準に高低で2分割した。そして,「投入」低群で「将来」低群を「同一性拡散」,「投入」低群で「将来」高群を「モラトリアム」,「投入」高群で「危機」低群を「早期完了」,「投入」高群で「危機」高群を「同一性達成」と分類した。
共感経験と自我同一性地位との関連を調べるために度数分布を算出し,χ二乗検定を行ったところ,双方に有意傾向が見られた(χ²=14.73,p<.10,df=9)。さらに残差分析を行ったところ,「両向型」においては「同一性達成」地位の度数が有意に高く,「不全型」は「同一性拡散」地位の度数が高い傾向,および「両貧型」においては「同一性達成」地位の度数が有意に低い傾向にあった(Table 1)。
考 察
結果より,共感経験タイプにおけるアイデンティティ発達の様相には差が見られた。
「両向型」は,同一性達成地位の者が多く,自他の個別性の認識をもってアイデンティティを確立していると推測される。
「不全型」は,他者との共有体験を得にくく,アイデンティティを確立しづらいと予想される。
「両貧型」は,同一性達成地位の者が少なく,アイデンティティ形成に至るほどの共感体験が不足しているためと推測される。