日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD57] 児童の他律的セルフ・エスティームとストレスの関連

全体およびコンピテンス領域別の他律的セルフ・エスティームに着目した横断的検討

賀屋育子1, 横嶋敬行2, 内田香奈子3, 山崎勝之4 (1.兵庫教育大学, 2.鳴門教育大学, 3.鳴門教育大学, 4.鳴門教育大学)

Keywords:他律的セルフ・エスティーム、児童、ストレス

目  的
 近年,セルフ・エスティーム(Self-Esteem: SE)を適応的な面と不適応的な面に弁別して捉える研究が行われている。山崎他(2017)は適応的な面を自律的SE,不適応的な面を他律的SEと提唱し,研究を展開している。他律的SEは外的な達成基準や他者との比較に依存して高まるSEを指す。このSEには全体と領域(特定の領域で特化して高まる)の観点があり,他律的SEの全体的な特徴を測定する尺度と(賀屋他,2018),学校教育で扱われるコンピテンス領域の他律的SEを測定する尺度が作成されている(賀屋他,印刷中)。
 子どもたちの学校教育の学習活動の過程で起こる他者との比較や他者が設定する基準との比較によって高められる全体およびコンピテンス領域別の他律的SEは,子どもたちのストレスを高めている可能性が懸念される。そこで本研究では,全体および領域別の他律的SEがストレス事象に及ぼす影響を検討する。
方  法
調査時期・調査対象 調査はA県の小学校(3校)の4から6年生と,B県の小学校(1校)の5年生から6年生の計592名(男子 291名,女子 301名)を対象に行った。
測定方法 全体的な他律的SEを測定するために,児童用他律的SE尺度(賀屋他,2018)を使用した。「わたし(ぼく)は,友だちよりも,よいところを多くもっている」など,7項目で構成されている。評定は,「1. まったくあてはまらない」から「4. とてもよくあてはまる」の4件法でたずねた。また,領域別の他律的SEを測定するために,コンピテンス領域別他律的SE尺度(賀屋他,印刷中)を使用した。全体的な他律的SEの尺度と同様の項目を勉強,運動,芸術・技術の3領域ごとにたずねる全21項目から構成される。評定も同様に4件法でたずねた。児童の学校生活におけるストレスを測定するために,心理的ストレス尺度(長根,1991)を使用した。classmate(対人関係に対するストレス), presentation(人前でのパフォーマンスに対するストレス), achievement(学業成績など評価に対するストレス), failure(失敗に対するストレス)の4因子,全20項目で構成されている。評定は,「1. いいえ」から「4. はい」の4件法でたずねた。
結果と考察
 すべての分析は全体および男女別で検討を行った。まず,各変数の相関係数を算出した。全体的な他律的SEに注目すると,classmateとfailureに有意な正の相関,presentationには全体と女子において有意な負の相関がみられた。次に各ストレスを目的変数,領域別(勉強,運動,芸術・技術)の他律的SEを説明変数として重回帰分析を行った。その結果,classmateの全体と男女,presentationとachievementの全体と女子,failureの全体と男子において重決定係数が有意であった。標準回帰係数をみると,classmateには勉強と芸術・技術領域が有意な正の影響を与える一方で,presentationやachievementには勉強領域が有意な負の,芸術・技術領域が正の影響を与えることが示された。failureには勉強領域が有意な正の影響を与える一方で,運動領域は有意な負の影響を与えていることが示された。これらの結果から,他律的SEのストレスに対する影響は正負の両方の関係がみられ,他律的SEがストレスを軽減する一方で,別のストレスを高めてしまう可能性が示された。