[PD60] 中高生の友だちグループの地位と学校への心理的適応
学級帰属意識と「スクールカースト」への意識を調整変数とした検討
Keywords:中高生、友人関係
問題と目的
学級内における「友だちグループ」といわれるインフォーマル集団(山中, 2014)に格差関係が生じることは「スクールカースト」といわれている(鈴木, 2012)。「スクールカースト」において,友だちグループの地位が高い生徒ほど学校適応も高い(水野・太田, 2017;水野・日高, 2019)。しかし,これらの研究は中学生を対象とした研究であり,高校生でも同様の知見が当てはまるかまではわからない。また,これらの関連における調整変数までは十分に検討されていない。そこで,本研究では中高生を対象として友だちグループの地位と学校への適応感の関連性を検討すること,またその関連性の調整変数として学級帰属感と「スクールカースト」への意識を取り上げて検討した。
方 法
協力者 中高生408名であった。㈱マクロミルのモニターで,中高生の子どもがいる親に協力を依頼し,子どもの同意が得られた場合,子どもに回答してもらうことでデータを収集した。
調査項目 水野・日高(2019)の手続きと項目を用い,グループの有無を尋ね,グループがあると回答した生徒のみグループ間地位(M=2.89, SD=0.71, r=.68)とグループ内地位(M=2.93, SD=0.75, r=.70)をそれぞれ2項目で尋ねた。その他,鹿島他(2011)の学級への帰属意識(例「私は今のクラスに入って良かったと思っている」)の5項目(M=3.51, SD=0.82, α=.93),独自に作成した「スクールカースト」への意識4項目(「普段の学校生活で」から続く「グループ間の上下関係を意識することがある/どんなグループでも平等だと意識することがある/自分たちとは違うグループが上だと思うことがある/自分たちとは違うグループが下だと思うことがある」),古市・玉木(1994)の学校享受感の10項目(M=3.40, SD=0.75, α=.91)を測定した。
結果と考察
「スクールカースト」への意識の4項目のα係数は逆転項目処理後で.71であったため許容範囲内の信頼性があるものと見なして平均値を算出した(M=3.51, SD=0.82)。なお,中高生の間で有意な差はなかった(ns, d=.08)。
変数間のゼロ次相関はTable 1のとおりであり(上三角が高校生),概ね先行研究に類した結果であった。グループ間地位,学級帰属意識,学校享受感の間は正の相関であり,中高生の間で係数は大きく変わらなかった。また,高校生のみ「スクールカースト」への意識とグループ間地位および学校享受感の間の相関は有意な負の値であった。
そして,従属変数を学校享受感,統制変数をグループ内の地位,性別・学年,独立変数をグループ間の地位,学級帰属意識,「スクールカースト」への意識とその交互作用項とした回帰分析を中高生別に行った。その結果,中学生でのみ交互作用項(グループ間地位×カーストへの意識)が有意傾向であり,単純傾斜検定(Figure 1)ではカーストへの意識が低い(-1SD)生徒はグループ間の地位と学校享受感の関連が有意であった(β=.35, p<.001;+1SDではβ=.11, ns)。すなわち,「スクールカースト」への意識が弱い中学生は自分の所属グループの地位が高いほど学校享受感も高かった。
学級内における「友だちグループ」といわれるインフォーマル集団(山中, 2014)に格差関係が生じることは「スクールカースト」といわれている(鈴木, 2012)。「スクールカースト」において,友だちグループの地位が高い生徒ほど学校適応も高い(水野・太田, 2017;水野・日高, 2019)。しかし,これらの研究は中学生を対象とした研究であり,高校生でも同様の知見が当てはまるかまではわからない。また,これらの関連における調整変数までは十分に検討されていない。そこで,本研究では中高生を対象として友だちグループの地位と学校への適応感の関連性を検討すること,またその関連性の調整変数として学級帰属感と「スクールカースト」への意識を取り上げて検討した。
方 法
協力者 中高生408名であった。㈱マクロミルのモニターで,中高生の子どもがいる親に協力を依頼し,子どもの同意が得られた場合,子どもに回答してもらうことでデータを収集した。
調査項目 水野・日高(2019)の手続きと項目を用い,グループの有無を尋ね,グループがあると回答した生徒のみグループ間地位(M=2.89, SD=0.71, r=.68)とグループ内地位(M=2.93, SD=0.75, r=.70)をそれぞれ2項目で尋ねた。その他,鹿島他(2011)の学級への帰属意識(例「私は今のクラスに入って良かったと思っている」)の5項目(M=3.51, SD=0.82, α=.93),独自に作成した「スクールカースト」への意識4項目(「普段の学校生活で」から続く「グループ間の上下関係を意識することがある/どんなグループでも平等だと意識することがある/自分たちとは違うグループが上だと思うことがある/自分たちとは違うグループが下だと思うことがある」),古市・玉木(1994)の学校享受感の10項目(M=3.40, SD=0.75, α=.91)を測定した。
結果と考察
「スクールカースト」への意識の4項目のα係数は逆転項目処理後で.71であったため許容範囲内の信頼性があるものと見なして平均値を算出した(M=3.51, SD=0.82)。なお,中高生の間で有意な差はなかった(ns, d=.08)。
変数間のゼロ次相関はTable 1のとおりであり(上三角が高校生),概ね先行研究に類した結果であった。グループ間地位,学級帰属意識,学校享受感の間は正の相関であり,中高生の間で係数は大きく変わらなかった。また,高校生のみ「スクールカースト」への意識とグループ間地位および学校享受感の間の相関は有意な負の値であった。
そして,従属変数を学校享受感,統制変数をグループ内の地位,性別・学年,独立変数をグループ間の地位,学級帰属意識,「スクールカースト」への意識とその交互作用項とした回帰分析を中高生別に行った。その結果,中学生でのみ交互作用項(グループ間地位×カーストへの意識)が有意傾向であり,単純傾斜検定(Figure 1)ではカーストへの意識が低い(-1SD)生徒はグループ間の地位と学校享受感の関連が有意であった(β=.35, p<.001;+1SDではβ=.11, ns)。すなわち,「スクールカースト」への意識が弱い中学生は自分の所属グループの地位が高いほど学校享受感も高かった。