日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD68] 理科の活用志向性測定尺度の開発

スーパーサイエンスハイスクール指定校の取組の評価を見据えて

草場実1, 原田勇希2, 斎藤恵介#3 (1.高知大学, 2.高知大学・日本学術振興会, 3.高知大学)

Keywords:理科の活用志向性、スーパーサイエンスハイスクール、尺度開発

問題の所在
 理科の学習では,学習内容と日常生活との関連性を見いだすことが重要であり,これは新学習指導要領によって育成が目指される資質・能力(学びに向かう力・人間性等)の一部として位置づけられている(e.g., 文部科学省,2017)。動機づけの期待-価値理論(Eccles & Wigfield, 2002; Wigfield & Eccles, 2000)において,学習内容に対する有用性の認知は利用価値(utility value)として概念化されており,利用価値の認知は理科での興味の追求を説明することが実証されている(解良・中谷,2014)。
 ところで,文部科学省によるスーパーサイエンスハイスクール(以下,SSH)事業では,「将来国際的に活躍し得る科学技術人材等の育成」を制度の趣旨としている(科学技術振興機構,2015)。そのため,SSH指定校の取組の評価という観点からは,日常生活との関連性や有用性を実感するという水準に留まらず,理科で学習した内容や考え方を日常生活でも積極的に活用しようとする態度や,将来の職業として活用しようとする態度を評価し,これを育成することが重要だろう。
目  的
 上記の背景を受け,本研究ではSSH指定校の取組の評価を見据えた理科の活用志向性測定尺度を作成することを目的とする。
方  法
項目の作成 SSH指定校の取組の評価を見据えるにあたり,以下2点に注意した。1点目は理科に対する「有用性の実感」(文部科学省,2017)という水準を超え,活用志向性を反映する項目表現にすることであった。すなわちSSH指定クラスの生徒であっても天井効果が生じないよう困難度の高い項目を作成した。2点目はSSH事業の趣旨を受け,日常生活での活用志向性(以下,日常活用志向)と将来の職業への活用志向性(以下,職業活用志向)の2つの構成概念を測定することであった。最終的に各6項目(計12項目)が作成された。
調査手続き SSH指定校1校(n = 500)と非SSH指定校1校(n = 521)の2校に通う高校1〜3年生を対象とした。
測定変数 作成した理科の活用志向性尺度の12項目を使用した。
結果と考察
 理科の活用志向性尺度12項目に対し,因子分析を行った(カテゴリカル因子分析,プロマックス回転; Table 1)。想定通り,職業活用志向と日常活用志向の2因子構造が確認された(固有値:6.96, 1.76, 0.53, 0.48…)。
 2年生以上の参加者の各活用志向性について,文系クラス,理系クラス,SSH指定クラスの3群間で平均値を比較した(Figure 1)。職業活用志向(F (2, 543) = 135.85, p<.001, ηp2 = .333),日常活用志向(F (2, 543) = 56.84, p<.001, ηp2 = .173)とも有意な差があり,SSH指定クラスが高い値を示した。またSSH指定クラスでも天井効果は見られなかった(職業活用志向:Mean = 3.37, SD = 1.11, 日常活用志向:Mean = 3.93, SD = 0.84)。以上の結果より,本尺度はSSH指定コース生徒の理科の活用志向性を測定できると考えられ,SSH指定校の取組の評価に使用できると考えられる。