日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE06] 幼児における他者の心の理解と親の共感性との関連

野嵜茉莉1, 齋藤慈子2 (1.弘前大学, 2.上智大学)

キーワード:幼児、感情推測、共感性

背景と目的
 幼児において,共感性と他者理解の力に関連があることは多くの先行研究で示されてきた(e.g. Findlay et al., 2006) 。また,親が子ども自身の心的状態に注目させるような声掛けを多くするほど,子どもの他者理解の力が高まる(Dunn et al., 1991)。そこで,本研究では,親自身の共感性が,幼児の他者の心を理解する力とどのように関連するかについて検討した。
方  法
参加者 3~5歳の幼児57名(男児27名,女児30名; 平均年齢 = 4.37, SD = .90) 及びその親が参加した。
子どもの課題 (1)他者の偽りの感情推測課題 課題の手続き・内容・採点方法は溝川(2007) に従った。偽りの悲しみ表出場面4課題,偽りの喜び表出場面4課題を実施した。偽りの感情理解0-8点,他者信念理解0-8点で得点化した。
(2)心の理論課題 TOM 心の理論課題検査(サクセス・ベル株式会社) の中から,3つの一時的誤信念課題を実施した。各課題について,すべての質問に正答した場合に1点,1つでも誤答があった場合を0点とし,0-3点で得点化した。
親の質問紙調査 (1)情動的共感 日本語版情動的共感性尺度 (Mehrabian & Epstein, 1972; 加藤・高木, 1980; 7件法) を使用した。感情的暖かさ,感情的冷淡さ,感情的被影響性の3下位尺度から構成される。
(2)多次元共感 日本語版多次元共感測定尺度 (Davis, 1983; 桜井, 1988; 4件法) を使用した。視点取得,共感的配慮,空想,個人的苦悩の4下位尺度から構成される。
分析には,各下位尺度の合計得点を用いた。
結  果
 他者の心を理解する力の発達 子どもの課題の得点について,子どもの年齢との相関分析を行った。その結果,年齢との間に有意な正の相関が見られた(Table 1) 。
 次に,年齢を統制した残差を算出し,課題間の残差得点について相関分析を行った。その結果,他者の偽りの感情推測課題の得点と心の理論課題得点との間には,有意な正の相関が見られなかった(Table 2) 。
幼児における他者の心を理解する力と親の共感性との関連 子どもの課題の残差得点と親の共感性の各下位尺度との相関分析を行った。その結果,いずれにおいても有意な相関は見られなかった(Table 3) 。
考  察
 幼児における他者の心を理解する力と親の共感性との間には関連は見られなかった。また,偽りの感情の表出や理解には心の理論が必要とされる(林, 2016) が,本研究では,子どもの2つの課題の得点間に関連がなかった。
 本研究から,幼児における他者の心を理解する力の発達に親の共感性は直接的に影響しないことが示唆された。ただし,本研究の参加者には一次的誤信念の理解が未発達な3歳児も多く含まれており,参加者の年齢を区切るなどして再分析することで,異なる結果が得られる可能性はある。