[PE17] 協働的学習に対する生徒の意識に関する研究
高校生へのインタビューの結果から
Keywords:高等学校、協働的学習、修正版グラウンデッド・セオリー
問題と目的
現在,高等学校において「主体的・対話的で深い学び」が求められているが,協働的学習のようなアクティブ・ラーニング型授業を受講した高校生がどのように感じ,どのようなプロセスを経るのかといった研究については少ない。特に進学を重視した高等学校(以下,進学校)では知識の習得を重視するため,講義型授業が多く,他者と協働しながら授業を進めていくような経験が少ないと考えられる。そこで本研究では,進学校において知識の習得と汎用的能力の育成をねらいとした協働的学習を行った生徒に対してインタビュー調査を行い,協働的学習に対してどのように感じ,どのようなプロセスを経るのかを検討することを目的とする。
研究方法
高校生の協働的学習に対する意識を広く収集するために,半構造化面接を用いた質的研究法を採用し,分析方法として修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2003)を用いることにした。研究対象者は協働的学習を行った進学校の2年生30名(男子11名,女子19名)。研究対象校の学校長に文書と口頭で研究の趣旨を説明し,研究実施の許可をもらい,対象生徒に対しては,協力者の募集及びインタビューの実施の際に,研究目的や個人情報の保護,参加の任意性など紙面,口頭で知らせ,協力を承諾し,署名をした生徒に対してインタビュー調査を実施した。
結果と考察
分析の結果,「協働的学習のプロセス」の構造として47の概念,7つのカテゴリー,3つのコア・カテゴリーを抽出した(Table 1)。
協働的学習の実施により,生徒は《形式的な協働的学習(効果)》と《形式的な協働的学習(課題)》の両方を感じる。前者の《形式的な協働的学習(効果)》は【協働的学習への能動的な取組】であり,それを強く感じた生徒は協働して学習を進めることに対して肯定的な意識を持ち,互恵的な相互作用がさらに促進され,深い学びへとつながる《実質的な協働的学習》を行う。しかし,そこでのメンバの変更や学習意欲の低下によって,生徒同士の互恵的な相互作用がうまく機能しなくなった場合,協働的学習は実質的なものから形式的なものへと変わる可能性がある。その際,生徒の学習観,人間関係などが大きな影響を与えることが分かった。また,後者の《形式的な協働的学習(課題)》は【協働的学習への戸惑い・抵抗感】であり,それを強く感じた生徒は,協働的学習を行う意義が感じられず,グループでの学習においても《個人学習志向》で学習を進める。あるいは学習に対して意欲を持てない生徒などは《他者依存・交流志向》になり,学習課題への取り組みを他者に任せたり,学習課題とは関係のないことがらをグループメンバーと話しはじめる。そして協働的学習への意義や効果を感じられない生徒は,これまで進めていた講義型の授業を強く望む【講義型授業志向】を意識するようになることが明らかになった。
現在,高等学校において「主体的・対話的で深い学び」が求められているが,協働的学習のようなアクティブ・ラーニング型授業を受講した高校生がどのように感じ,どのようなプロセスを経るのかといった研究については少ない。特に進学を重視した高等学校(以下,進学校)では知識の習得を重視するため,講義型授業が多く,他者と協働しながら授業を進めていくような経験が少ないと考えられる。そこで本研究では,進学校において知識の習得と汎用的能力の育成をねらいとした協働的学習を行った生徒に対してインタビュー調査を行い,協働的学習に対してどのように感じ,どのようなプロセスを経るのかを検討することを目的とする。
研究方法
高校生の協働的学習に対する意識を広く収集するために,半構造化面接を用いた質的研究法を採用し,分析方法として修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(木下,2003)を用いることにした。研究対象者は協働的学習を行った進学校の2年生30名(男子11名,女子19名)。研究対象校の学校長に文書と口頭で研究の趣旨を説明し,研究実施の許可をもらい,対象生徒に対しては,協力者の募集及びインタビューの実施の際に,研究目的や個人情報の保護,参加の任意性など紙面,口頭で知らせ,協力を承諾し,署名をした生徒に対してインタビュー調査を実施した。
結果と考察
分析の結果,「協働的学習のプロセス」の構造として47の概念,7つのカテゴリー,3つのコア・カテゴリーを抽出した(Table 1)。
協働的学習の実施により,生徒は《形式的な協働的学習(効果)》と《形式的な協働的学習(課題)》の両方を感じる。前者の《形式的な協働的学習(効果)》は【協働的学習への能動的な取組】であり,それを強く感じた生徒は協働して学習を進めることに対して肯定的な意識を持ち,互恵的な相互作用がさらに促進され,深い学びへとつながる《実質的な協働的学習》を行う。しかし,そこでのメンバの変更や学習意欲の低下によって,生徒同士の互恵的な相互作用がうまく機能しなくなった場合,協働的学習は実質的なものから形式的なものへと変わる可能性がある。その際,生徒の学習観,人間関係などが大きな影響を与えることが分かった。また,後者の《形式的な協働的学習(課題)》は【協働的学習への戸惑い・抵抗感】であり,それを強く感じた生徒は,協働的学習を行う意義が感じられず,グループでの学習においても《個人学習志向》で学習を進める。あるいは学習に対して意欲を持てない生徒などは《他者依存・交流志向》になり,学習課題への取り組みを他者に任せたり,学習課題とは関係のないことがらをグループメンバーと話しはじめる。そして協働的学習への意義や効果を感じられない生徒は,これまで進めていた講義型の授業を強く望む【講義型授業志向】を意識するようになることが明らかになった。