[PE21] 幼児教育における教材活用の様相
領域言葉の観点から
Keywords:領域言葉、教材活用、絵本
問題と目的
本研究の目的は,幼児教育における言語活動を充実させていく教育方法のあり方を探索していくことにある。幼児教育領域言葉においては,「経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し,相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て,言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う」ことが目的として定められている。これを受け保育現場では,絵本が言葉に慣れ親しむための保育教材として広く用いられている。しかし実習を終えた多くの学生は絵本を用いた保育活動に対して,主活動を補うための導入あるいは単なる時間稼ぎの読み聞かせといった,一義的かつ否定的な側面しか捉えていない実態がある。そこで本研究では,保育者養成段階における学生から,実習時,乳幼児に紹介したいと考える絵本を分析して,そこにどの様な願いが込められているのかを考察し,領域言葉の目的を達成するため,絵本を教材として向上させていく方途について検討を行う。
方 法
2018年11月,A大学教育学部在籍で,幼稚園教諭並びに保育士資格の取得を希望している2年次の男女学生57名に,保育実習・教育実習において,乳幼児に紹介したい絵本10冊について回答を求め,①タイトル,②出版社順,③作家順について分析・考察を行った。
結 果
①紹介したい絵本(タイトル順)
1位「はらぺこあおむし」,2位「ぐりとぐら」,3位「くれよんのくろくん」「そらまめくんのベッド」であった。このことから大半の学生が物語絵本を選書し,これらの本を乳幼児に読んで聞かせたいと考えている様子がうかがわれた。
②紹介したい絵本(出版社順)
1位「福音館書店」,2位「講談社」,3位「偕成社」の出版社が上位を占めていたが,ここでも物語絵本が大半であった。しかし一部,赤ちゃん絵本が含まれていたことから,学生は保育活動において,一方的に読み聞かせるだけではなく,子どもの様子に合わせながら言葉のリズムや音を絵で活かし,言葉を交わそうとしている様子もうかがわれた。
③紹介したい絵本(作家順)
1位「なかやみわ」,2位「島田ゆか」,3位「エリック・カール」であった。このことから学生は,絵本の内容を精査するよりも,シリーズものといった知名度の高い絵本を選書に挙げている様子がうかがわれた。
考 察
幼稚園教諭免許,保育士資格を目指す学生を対象に,実習時,乳幼児に紹介したい絵本の調査を行った結果,大半の学生がストーリー性のある物語絵本を選書に挙げ,絵本=読み聞かせる教材というイメージをもっていることが明らかとなった。領域言葉の砦である「言葉の伝え合い」には,言葉の基礎となる言語の獲得なくしては,これを可能にしていくことは不可能である。その基礎を培うため,本来,絵本は幼児教育の場においてもっと広義な用いられ方がされなければならないはずである。しかし,学生が実習で学び得てきた用いられ方や今回の結果を招くに至った背景には,保育者養成校として,教授者が己の研究分野に留まって,目的を達成すべく教材研究を十分に行ってこなかった事実も否めない。今後は,従来の演者を志向しようとする傾向を改め,言葉の伝え合いを意識して絵本を選択し,また提供の仕方を考える等して,絵本を言語力育成の教材として活用していく必要があろう。
本研究の目的は,幼児教育における言語活動を充実させていく教育方法のあり方を探索していくことにある。幼児教育領域言葉においては,「経験したことや考えたことなどを自分なりの言葉で表現し,相手の話す言葉を聞こうとする意欲や態度を育て,言葉に対する感覚や言葉で表現する力を養う」ことが目的として定められている。これを受け保育現場では,絵本が言葉に慣れ親しむための保育教材として広く用いられている。しかし実習を終えた多くの学生は絵本を用いた保育活動に対して,主活動を補うための導入あるいは単なる時間稼ぎの読み聞かせといった,一義的かつ否定的な側面しか捉えていない実態がある。そこで本研究では,保育者養成段階における学生から,実習時,乳幼児に紹介したいと考える絵本を分析して,そこにどの様な願いが込められているのかを考察し,領域言葉の目的を達成するため,絵本を教材として向上させていく方途について検討を行う。
方 法
2018年11月,A大学教育学部在籍で,幼稚園教諭並びに保育士資格の取得を希望している2年次の男女学生57名に,保育実習・教育実習において,乳幼児に紹介したい絵本10冊について回答を求め,①タイトル,②出版社順,③作家順について分析・考察を行った。
結 果
①紹介したい絵本(タイトル順)
1位「はらぺこあおむし」,2位「ぐりとぐら」,3位「くれよんのくろくん」「そらまめくんのベッド」であった。このことから大半の学生が物語絵本を選書し,これらの本を乳幼児に読んで聞かせたいと考えている様子がうかがわれた。
②紹介したい絵本(出版社順)
1位「福音館書店」,2位「講談社」,3位「偕成社」の出版社が上位を占めていたが,ここでも物語絵本が大半であった。しかし一部,赤ちゃん絵本が含まれていたことから,学生は保育活動において,一方的に読み聞かせるだけではなく,子どもの様子に合わせながら言葉のリズムや音を絵で活かし,言葉を交わそうとしている様子もうかがわれた。
③紹介したい絵本(作家順)
1位「なかやみわ」,2位「島田ゆか」,3位「エリック・カール」であった。このことから学生は,絵本の内容を精査するよりも,シリーズものといった知名度の高い絵本を選書に挙げている様子がうかがわれた。
考 察
幼稚園教諭免許,保育士資格を目指す学生を対象に,実習時,乳幼児に紹介したい絵本の調査を行った結果,大半の学生がストーリー性のある物語絵本を選書に挙げ,絵本=読み聞かせる教材というイメージをもっていることが明らかとなった。領域言葉の砦である「言葉の伝え合い」には,言葉の基礎となる言語の獲得なくしては,これを可能にしていくことは不可能である。その基礎を培うため,本来,絵本は幼児教育の場においてもっと広義な用いられ方がされなければならないはずである。しかし,学生が実習で学び得てきた用いられ方や今回の結果を招くに至った背景には,保育者養成校として,教授者が己の研究分野に留まって,目的を達成すべく教材研究を十分に行ってこなかった事実も否めない。今後は,従来の演者を志向しようとする傾向を改め,言葉の伝え合いを意識して絵本を選択し,また提供の仕方を考える等して,絵本を言語力育成の教材として活用していく必要があろう。