[PE25] 高校生が感じる各教科の有用性
Keywords:価値、教科、高校生
問題と目的
文部科学省(2016)の答申において,“学習する子供の視点に立ち,教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成を目指す資質・能力を整理する必要がある”と述べられている。従来の“何を学ぶのか”といった観点にとどまらず,“どのように学ぶのか”,学ぶことで“何ができるようになるのか”といった視点から学校教育の見直しが行われている。子どもたちは自分たちにとって重要で,価値が高いと感じた学習内容に関しては,高い動機づけを持つことが想定されるため(Wigfield, Tonks, & Klauda, 2009),学習内容が日常や将来とどのように関わっているのかを考えることは重要である。
しかし,急速に社会が変化する現代において,実際に子どもたちが学ぶことにどのような価値を感じているのかは十分に明らかではない。今後,様々な教育政策を進めるにあたって,まずは子どもたちの学習に対する考え方を整理する必要があるだろう。そこで本研究では,高校生が各教科(数学,国語,理科,社会,英語)に対して,どの程度有用性を感じているのか,また具体的にどのような有用性を感じているのかを明らかにする。
方 法
調査協力者 東海地方の私立高校に通う高校生305名(1年生141名,2年生164名,男性71名,女性234名)から回答を得られた。回答は6つの学科から得られた。就職から大学進学まで様々な進路を希望する学生が属している。
調査内容 ①文理:文系または理系のいずれか,②有用性認知:各教科がどの程度役立つと思うか(5件法),③具体的な有用性:“次の教科を勉強することは,みなさんの生活や将来にどのように役に立つと思いますか?”という教示のもと,各教科に感じる有用性を自由記述で回答を求めた。
結果と考察
各教科についての有用性認知の得点を文系,理系の別に見るために2(文理)×5(教科)の2要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,教科の主効果(F (4, 1140)=108.41, p=.00, ηp2=.28)および教科と文理の交互作用(F (4, 1140)=4.97, p=.00, ηp2=.02)が有意となった。そこで,下位検定を行ったところ,文理の違いによる有用性認知の得点は,数学(d=0.38)および理科(d=0.32)において差がみられ,ともに理系の方が文系よりも得点が高かった。残りの教科においては有意な差はみられなかった。
また,得点を高い順に並べると,理系も文系も英語,国語,数学,社会,理科の順となった。ただし,理系においては,“英語と国語”および“国語と数学”の間には有意な差はみられなかった。また,文系においては,“英語と国語”および“数学と社会”の間には有意な差はみられなかった。特に数学の評価について,文系と理系で違いがみられることがうかがえる。
加えて,各教科の学習は“どのように役立つと思うか”について得られた自由記述より,KH coder (樋口, 2014) を用いて頻出単語を抜き出した。なお,同様の意味ととらえることのできる言葉は統合した(買い物とショッピングなど)。また,頻出単語においては文系と理系を区別しないで表示した。頻出単語をみると,数学は買い物やお金などの計算について,国語は漢字の力や相手の気持ちを推測するなどのコミュニケーションについて,理科は生物や天気などについて,社会は歴史や政治や選挙について,英語は外国人との関わりについて,それぞれ出現数が多かった。今後は,学生が感じている有用性を理解したうえで,価値介入(Harackiewicz, Tibbetts, Canning, & Hyde, 2014)などにより,価値を高める教育が求められる。
文部科学省(2016)の答申において,“学習する子供の視点に立ち,教育課程全体や各教科等の学びを通じて「何ができるようになるのか」という観点から、育成を目指す資質・能力を整理する必要がある”と述べられている。従来の“何を学ぶのか”といった観点にとどまらず,“どのように学ぶのか”,学ぶことで“何ができるようになるのか”といった視点から学校教育の見直しが行われている。子どもたちは自分たちにとって重要で,価値が高いと感じた学習内容に関しては,高い動機づけを持つことが想定されるため(Wigfield, Tonks, & Klauda, 2009),学習内容が日常や将来とどのように関わっているのかを考えることは重要である。
しかし,急速に社会が変化する現代において,実際に子どもたちが学ぶことにどのような価値を感じているのかは十分に明らかではない。今後,様々な教育政策を進めるにあたって,まずは子どもたちの学習に対する考え方を整理する必要があるだろう。そこで本研究では,高校生が各教科(数学,国語,理科,社会,英語)に対して,どの程度有用性を感じているのか,また具体的にどのような有用性を感じているのかを明らかにする。
方 法
調査協力者 東海地方の私立高校に通う高校生305名(1年生141名,2年生164名,男性71名,女性234名)から回答を得られた。回答は6つの学科から得られた。就職から大学進学まで様々な進路を希望する学生が属している。
調査内容 ①文理:文系または理系のいずれか,②有用性認知:各教科がどの程度役立つと思うか(5件法),③具体的な有用性:“次の教科を勉強することは,みなさんの生活や将来にどのように役に立つと思いますか?”という教示のもと,各教科に感じる有用性を自由記述で回答を求めた。
結果と考察
各教科についての有用性認知の得点を文系,理系の別に見るために2(文理)×5(教科)の2要因分散分析を行った(Table 1)。その結果,教科の主効果(F (4, 1140)=108.41, p=.00, ηp2=.28)および教科と文理の交互作用(F (4, 1140)=4.97, p=.00, ηp2=.02)が有意となった。そこで,下位検定を行ったところ,文理の違いによる有用性認知の得点は,数学(d=0.38)および理科(d=0.32)において差がみられ,ともに理系の方が文系よりも得点が高かった。残りの教科においては有意な差はみられなかった。
また,得点を高い順に並べると,理系も文系も英語,国語,数学,社会,理科の順となった。ただし,理系においては,“英語と国語”および“国語と数学”の間には有意な差はみられなかった。また,文系においては,“英語と国語”および“数学と社会”の間には有意な差はみられなかった。特に数学の評価について,文系と理系で違いがみられることがうかがえる。
加えて,各教科の学習は“どのように役立つと思うか”について得られた自由記述より,KH coder (樋口, 2014) を用いて頻出単語を抜き出した。なお,同様の意味ととらえることのできる言葉は統合した(買い物とショッピングなど)。また,頻出単語においては文系と理系を区別しないで表示した。頻出単語をみると,数学は買い物やお金などの計算について,国語は漢字の力や相手の気持ちを推測するなどのコミュニケーションについて,理科は生物や天気などについて,社会は歴史や政治や選挙について,英語は外国人との関わりについて,それぞれ出現数が多かった。今後は,学生が感じている有用性を理解したうえで,価値介入(Harackiewicz, Tibbetts, Canning, & Hyde, 2014)などにより,価値を高める教育が求められる。