日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 1:30 PM - 3:30 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE29] 理学療法士養成校の学生はいかにして国家試験を乗り切るか?

学習動機づけに着目して

成田亜希1, 宮本友弘2 (1.白鳳短期大学, 2.東北大学)

Keywords:国家試験、学習動機づけ

目  的
 理学療法士養成校の学生には卒業年度の2月に国家試験が待ち受けている。養成校では概ね半年前の9月頃から本格的な試験対策が開始されるが,学力水準の低い学生の多くは,即座に「受験モード」に切り替わるわけではない。一定期間過ぎた後,勉強に対するやる気や自信を示し始める。こうした国家試験に対する心理的な転換はいつ,なぜ生じるのであろうか。そのメカニズムを解明することは,学生の多様性が広がりつつある養成校においては重要な課題である。そこで,本研究では,学習動機づけに着目し,国家試験受験勉強の過程でどのように変化するのかを探索した。
方  法
調査対象・手続き 理学療法士養成校(3年制)に201X年~201X+4年に入学した165名を対象に最終学年の9月,12月,2月に模擬試験を実施し,その3日後に質問紙調査を行った。なお,本調査は白鳳短期大学 倫理委員会の承認を得て実施した。
調査内容 (1)学習動機づけ 速水・田畑・吉田(1996)が自己決定理論に基づき作成した動機づけ尺度を理学療法士学生用に修正して使用した。外的,取り入れ,同一化,内発の4因子,各7項目。(2)模擬試験の出来 「よくなかった」~「よかった」の5段階評定。(3)国家試験合格の自信 「全くない」~「非常にある」の5段階評定。
結  果
 9月の模擬試験成績の中央値を基準にして,成績上位群と成績下位群に分け,各変数について群×時期による分散分析を行った。
 学習動機づけ(Figure 1)では群または時期の主効果が有意で,(1)外的では,上位群<下位群,2月<9月,12月,(2)取り入れでは,上位群<下位群,(3)同一化では,9月<2月<12月,(4)内発では,下位群<上位群,9月<12月,2月であった。
 模擬試験の出来と合格の自信(Figure 2)では群×時期の交互作用が有意であった。単純主効果検定の結果,両変数とも,9月は成績上位群が下位群よりも有意に高かったが,下位群の伸びが大きく,2月は上位群と下位群の差は有意ではなかった。
考  察
 受験勉強開始3カ月後,学習動機づけについては,成績に関わらず統制的な動機づけ(外的)が弱まり,自律的な動機づけ(同一化,内発)が強まるようであった。また,学力水準についての自己評価(模擬試験の出来と合格の自信)は,下位群において,12月以降著しく高まった。今後はこうした学生の内面の変化に,教員がどのような影響を及ぼすかを明らかにしたい。