[PE30] 動機づけ理論に基づく動機づけ調整方略尺度の作成および信頼性・妥当性の検討
Keywords:動機づけ調整方略、自己調整学習、大学生
問題と目的
動機づけ調整(motivational regulation)は,特定の活動や目標を開始,達成する意欲を始発,維持,あるいは補充する行為と定義されている(赤間,2015;Wolters, 2003)。やる気が出ない時に,学習者が自分自身の動機づけの状態を調整するために,様々な動機づけ調整方略を用いることが明らかにされてきた。これまで,国内外では,動機づけ調整方略を測定する尺度が複数開発されている(e.g., 梅本・田中,2013; Wolters & Benzon , 2013)。しかし,それらの尺度は,いずれもボトムアップ的な手法で作成されたものであり,一部の下位尺度には,信頼性・妥当性の問題が残されている。一方で,Miele & Scholer(2016,2017)では,主な動機づけ理論をもとに,ターゲットとする動機づけの質の視点から,動機づけ調整方略の分類を網羅的に整理した。そこで,本研究では,Miele & Scholer(2016, 2017)の視点に立ち,動機づけ理論に基づく動機づけ調整方略尺度の作成を試みる。
方 法
調査対象者:2つの国立大学,3つの私立大学生計269名(男性75名,女性191名,不明3名)を対象とした。
調査内容:(1)動機づけ調整方略:予備調査(N=169)として,自由記述による方略に関する項目収集を行い,Miele & Scholer(2016, 2017)の視点に基づく分類を行った。予備調査の結果をもとに作成した尺度原案計59項目を本調査で用いた。(2)学習動機づけ:畑野(2011)の大学生用学習動機づけ尺度(18項目)を使用した。(3)自己効力感:中西(2004)が翻訳したPintrich & De Groot(1990)の自己効力感尺度(6項目)を使用した。(4)制御焦点:外山他(2016)の学業領域における制御焦点尺度(14項目)を使用した。(5)満足遅延:小川内・龍(2013)の学業的満足遅延尺度(14項目)を使用した。すべての尺度は,7段評定で回答を求めた。
結果と考察
項目分析を行ったところ,肯定率が80%を超えた1項目を分析から除外した。そして,I-T相関を算出したところ,相関係数が低かった(r<.10)2項目を分析から除外した。次に,56項目に対して最尤法による探索的因子分析を行った。固有値の推移と解釈可能性の観点より,8因子解を採用した。そこで,8因子構造を仮定し,最尤法,プロマックス回転による因子分析を行った。因子負荷量の基準を.30とし,単純構造が得られるまで同様の因子分析を繰り返した。その結果,すべての項目において1つの因子のみに.30以上の因子負荷量を示した。最後に,各因子に対して負荷量が高かった3-4項目を選定し因子分析を行い,単純構造を確認した。回転前8因子構造27項目の累積寄与率は59.46%であった。得られた8因子は,負荷量の高い項目の内容より,第1因子から順に,“学習内容を自分の興味関心に結びつけて考える”などの興味高揚方略,“追い込まれるまで放置する”などの先延ばし方略,“友達と一緒に学習に取り組む”などの社会的方略,“終わった後の自分へのご褒美を考える”などの自己報酬方略,“やらなければいけないという責任感を持つようにする”などの義務強調方略,“再履修したくないと自分に言い聞かせる”などの遂行回避目標セルフトーク方略,“自分にはできると思い込む”などの自己効力感高揚方略,最後に,“やりたいことを先にやる”などの負担軽減方略と命名した。
各下位尺度の内的一貫性を確認するために,Cronbachのα係数を算出したところ(Table 1),.63-.91であり,許容できる範囲の値であると判断した。尺度の妥当性を検討するために,各下位尺度と他の動機づけ変数尺度の各下位尺度間の相関と偏相関係数を算出した(Table 1)。その結果,ほぼ予想通りの結果が得られ,尺度の妥当性の一部が確認された。
動機づけ調整(motivational regulation)は,特定の活動や目標を開始,達成する意欲を始発,維持,あるいは補充する行為と定義されている(赤間,2015;Wolters, 2003)。やる気が出ない時に,学習者が自分自身の動機づけの状態を調整するために,様々な動機づけ調整方略を用いることが明らかにされてきた。これまで,国内外では,動機づけ調整方略を測定する尺度が複数開発されている(e.g., 梅本・田中,2013; Wolters & Benzon , 2013)。しかし,それらの尺度は,いずれもボトムアップ的な手法で作成されたものであり,一部の下位尺度には,信頼性・妥当性の問題が残されている。一方で,Miele & Scholer(2016,2017)では,主な動機づけ理論をもとに,ターゲットとする動機づけの質の視点から,動機づけ調整方略の分類を網羅的に整理した。そこで,本研究では,Miele & Scholer(2016, 2017)の視点に立ち,動機づけ理論に基づく動機づけ調整方略尺度の作成を試みる。
方 法
調査対象者:2つの国立大学,3つの私立大学生計269名(男性75名,女性191名,不明3名)を対象とした。
調査内容:(1)動機づけ調整方略:予備調査(N=169)として,自由記述による方略に関する項目収集を行い,Miele & Scholer(2016, 2017)の視点に基づく分類を行った。予備調査の結果をもとに作成した尺度原案計59項目を本調査で用いた。(2)学習動機づけ:畑野(2011)の大学生用学習動機づけ尺度(18項目)を使用した。(3)自己効力感:中西(2004)が翻訳したPintrich & De Groot(1990)の自己効力感尺度(6項目)を使用した。(4)制御焦点:外山他(2016)の学業領域における制御焦点尺度(14項目)を使用した。(5)満足遅延:小川内・龍(2013)の学業的満足遅延尺度(14項目)を使用した。すべての尺度は,7段評定で回答を求めた。
結果と考察
項目分析を行ったところ,肯定率が80%を超えた1項目を分析から除外した。そして,I-T相関を算出したところ,相関係数が低かった(r<.10)2項目を分析から除外した。次に,56項目に対して最尤法による探索的因子分析を行った。固有値の推移と解釈可能性の観点より,8因子解を採用した。そこで,8因子構造を仮定し,最尤法,プロマックス回転による因子分析を行った。因子負荷量の基準を.30とし,単純構造が得られるまで同様の因子分析を繰り返した。その結果,すべての項目において1つの因子のみに.30以上の因子負荷量を示した。最後に,各因子に対して負荷量が高かった3-4項目を選定し因子分析を行い,単純構造を確認した。回転前8因子構造27項目の累積寄与率は59.46%であった。得られた8因子は,負荷量の高い項目の内容より,第1因子から順に,“学習内容を自分の興味関心に結びつけて考える”などの興味高揚方略,“追い込まれるまで放置する”などの先延ばし方略,“友達と一緒に学習に取り組む”などの社会的方略,“終わった後の自分へのご褒美を考える”などの自己報酬方略,“やらなければいけないという責任感を持つようにする”などの義務強調方略,“再履修したくないと自分に言い聞かせる”などの遂行回避目標セルフトーク方略,“自分にはできると思い込む”などの自己効力感高揚方略,最後に,“やりたいことを先にやる”などの負担軽減方略と命名した。
各下位尺度の内的一貫性を確認するために,Cronbachのα係数を算出したところ(Table 1),.63-.91であり,許容できる範囲の値であると判断した。尺度の妥当性を検討するために,各下位尺度と他の動機づけ変数尺度の各下位尺度間の相関と偏相関係数を算出した(Table 1)。その結果,ほぼ予想通りの結果が得られ,尺度の妥当性の一部が確認された。