日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 1:30 PM - 3:30 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE44] 反応スタイルと抑うつの2時点研究

島津直実1, 中村玲子2, 越川房子3 (1.帝京平成大学, 2.帝京平成大学, 3.早稲田大学)

Keywords:反応スタイル、抑うつ

問題と目的
 反応スタイル理論(Nolen-Hoeksema ,1987)では,抑うつ気分時の考え込み反応は抑うつの持続・重症化に,気そらし反応は抑うつの短期化・回復に繋がると説明する。精神的健康が阻害されるのは,抑うつが持続し重い抑うつ状態に陥る時である事が知られており,抑うつへの介入・予防には抑うつの持続と回復をもたらす要因の研究が求められる。
 抑うつの予防に高い効果を示しているものとして,マインドフルネス認知療法Mindfulness-Based Cognitive Therapy(MBCT)がある。MBCTがうつ病の再発予防プログラムとして効果が見込めるとされる理由の一つに,MBCTがマインドフルネス瞑想を通して自己受容を育成するからであると考えられている(越川,2016)ことがあげられる。このことより,抑うつの軽減に影響を及ぼす変数として受容の大切さが示唆される。
 そこで本研究では,反応スタイルが将来の抑うつに及ぼす直接的影響について,2時点のデータを用いて探索的に検討することを目的とする。その際に,反応スタイルと抑うつを媒介する変数としてメタ受容を組み込むこととする。メタ受容は,反応スタイルを用いているそのままの自分を,善悪という点から離れて許容すること(島津,2018)である。
方  法
手続きと調査協力者
 同一の調査を4週間の間隔をおいて2回(Time1:以下T1,Time2:以下T2)集団で実施した。分析には2回の調査に回答した都内某私立大学の学生73名(男性32名,女性41名,平均年齢19.3歳,SD=1.22)を対象とした。なお,T1の時点での調査協力者は78名であったが,T2の時点でドロップアウトは5名であった。
査定尺度と使用データ
 ①日本語改訂版反応スタイル尺度(日本語版RSS-R;島津, 2005):抑うつ時の反応スタイルを否定的考え込み反応尺度,回避的気そらし反応尺度,問題解決的考え込み反応尺度,気分転換的気そらし反応尺度の4因子で捉える反応スタイル尺度を用いた。②メタ受容尺度(島津,2005)。③自己評価式抑うつ性尺度(SDS): Zung(1965)の日本語版(福田・小林,1973)。また,分析にはT1の反応スタイルの各下位因子と各反応スタイルに対する受容および,T2の抑うつの程度のデータを用いた。
結果と考察
 まず,4つの反応スタイルを独立変数,抑うつを従属変数とした重回帰分析を行った。その結果,決定係数(R2)は.38(p<.001)であった。結果から,抑うつに対して否定的考えこみ反応のみ正の影響を及ぼしていた(B=.90, SE B=.16, β=.56, p<.001)。そこで,否定的考えこみ反応に対する受容(メタ受容)を独立変数,抑うつを従属変数とした回帰分析を行った。その結果,決定係数(R2)は.49(p<.001)であり,否定的考えこみ反応に対する受容で抑うつの分散のおよそ半分を説明していた。結果から,抑うつに対して否定的考えこみ反応に対する受容が有意な正の影響を及ぼしていた(B=-1.22, SE B=.148, β=-.70, p<.001)。また,否定的考えこみ反応および否定的考えこみ反応に対する受容を独立変数、抑うつを従属変数とした重回帰分析を行った結果,決定係数(R2)は.43(p<.001)であった。結果から,抑うつに対して否定的考えこみ反応は正の影響(B=.48, SE B=.204, β=.30, p<.001),否定的考えこみ反応に対する受容は負の影響(B=-.39, SE B=.12, β=-.42, p<.05)を及ぼしていた。
 探索的に反応スタイルとメタ受容と抑うつの関係を検討したところ,否定的考え込み反応を多くする人ほど,4週間後の抑うつが高いことが示された。また,否定的考え込み反応をとる自分を受け入れられる人ほど,4週間後の抑うつが低いことが示された。以上の結果は,考え込み反応が抑うつを重症化させるという反応スタイル理論を支持するものであった。また,反応スタイルと抑うつの関係を研究する際にメタ受容という変数も組み込むことが大事である可能性を示唆する結果となった。
付  記
本研究は科学研究費助成事業(学術研究助成基金)(課題番号 18K13328)の助成を受けた。