[PE48] 発達に課題のある子どものスポーツ活動への参加について
母親へのインタビューを通して
Keywords:気になる子、スポーツ、母親
目 的
サッカーや野球,スイミング,ダンス等スポーツの習い事は昨今大変盛んである。ボール遊びや鬼ごっこ等自由に体を使った遊びが出来る場が減少しているなかで,スポーツの習い事は子どもたちが運動する機会として重要である。ところで,学校等公的な場では発達障害等の困難を持つ児童への対応の必要性が認識されるようになってきた。しかしスポーツの現場では,発達障害への理解や対応に温度差がある。特に地域スポーツでは,指導者はボランティアであることが多く,子どもの発達的視点や教育的視点を学ぶ機会が整っているとは言い難い。そのため,発達に課題のある子がいた場合その対応が難しく,スポーツ・ハラスメント等不適切な指導につながる恐れもある。また,指導者側もどのように指導をしたら良いか困り感を抱えていることも多い(川田他, 2016)。そこで本研究では,発達に課題のある子どものスポーツ活動への参加について,保護者が実際にどのように考え,また体験しているかについて検討することとした。
方 法
回答者 発達障害の診断を受けた子ども,又は診断は受けていないが発達に課題がある子どもを持つ母親8名(Table1)。
手続き 2018年7~8月に半構造化面接を行った。
質問内容 ①回答者の属性(性別,年齢,子どもの特性等),②習い事の有無,種類(スポーツ/それ以外),③コーチやチームメイトとの間で大変だったこと,困っていること 他
倫理的配慮 本研究は東京未来大学の倫理委員会の承認を得て実施された。また,インタビュー実施にあたり,調査の趣旨,録音許可,データの取り扱い,および回答拒否の保証について等,事前に口頭および文面で説明し,了解を得た。
結果と考察
回答者の属性はTable 1の通りである。習っているスポーツの種類は個人種目であるスイミングが多い。8名のインタビューを通して多くの方の語りに見られたスポーツの習い事に関する困難について,以下の3つの観点から考察する。
習い事を始めるにあたっての困難
E:「ダンスやりたい,踊りやりたい」って本人が……で,ダンススクールもお試しとかも行ったんですけど,お試しの結果「無理です」って。1人でどっか行っちゃうから。「指導が理解できないなら教えようがありません」って。
D:(スイミングスクール探す時)ほとんど難しい……。もうダメかと思ってた時療育施設で知り合った人に「あそこ体験いったんだけど良かったよ」と。(そこは)この時間なら人の余裕あるので……と前向きに受け入れてくれた。
多くの母親が受け入れてくれる習い事を探すことに苦労をしていた。事前に関係がある場所で受け入れてもらえた,という意見も多かった。
子どもの特性による他児とのトラブル
B:見てて「危ないな」と。自分の子よりも他の子に何かしちゃうと困るので,級もちょうど伸びてなかったので「今はいいかな」って感じで辞めた。
C:(ロッカールームで)他児とトラブル。「ワーッ」と暴れちゃって……。怪我させてしまった。先方に「何でお母さんは付いていなかったの?」と。
スイミングも集団での指導のため,先生の理解は得られても,周囲の子とのトラブルに苦労している様子であった。
上達しないことによるジレンマ
G:4年以上続けて,だけどまだクロール15mくらい。こんなに大きいのに泳げなくて「どうかな」とも思うんだけど,本人楽しそうなので。
A:積み重ねが感じられない……親としてもしんどいのは成長が見られないところなんですよね。見れないというか見えにくい。
子どもの上達が感じられないとき(特に周囲と比べて),傷つきを覚えたり続けることに迷いを感じる母親も多いことが語りから見られた。
引用文献
川田裕次郎他(2016)地域スポーツの指導者の直面している問題の把握 日本コミュニティ心理学会第19回大会発表論文集,98-99.
付 記
本研究は科研費18K03119の補助を受けた。
サッカーや野球,スイミング,ダンス等スポーツの習い事は昨今大変盛んである。ボール遊びや鬼ごっこ等自由に体を使った遊びが出来る場が減少しているなかで,スポーツの習い事は子どもたちが運動する機会として重要である。ところで,学校等公的な場では発達障害等の困難を持つ児童への対応の必要性が認識されるようになってきた。しかしスポーツの現場では,発達障害への理解や対応に温度差がある。特に地域スポーツでは,指導者はボランティアであることが多く,子どもの発達的視点や教育的視点を学ぶ機会が整っているとは言い難い。そのため,発達に課題のある子がいた場合その対応が難しく,スポーツ・ハラスメント等不適切な指導につながる恐れもある。また,指導者側もどのように指導をしたら良いか困り感を抱えていることも多い(川田他, 2016)。そこで本研究では,発達に課題のある子どものスポーツ活動への参加について,保護者が実際にどのように考え,また体験しているかについて検討することとした。
方 法
回答者 発達障害の診断を受けた子ども,又は診断は受けていないが発達に課題がある子どもを持つ母親8名(Table1)。
手続き 2018年7~8月に半構造化面接を行った。
質問内容 ①回答者の属性(性別,年齢,子どもの特性等),②習い事の有無,種類(スポーツ/それ以外),③コーチやチームメイトとの間で大変だったこと,困っていること 他
倫理的配慮 本研究は東京未来大学の倫理委員会の承認を得て実施された。また,インタビュー実施にあたり,調査の趣旨,録音許可,データの取り扱い,および回答拒否の保証について等,事前に口頭および文面で説明し,了解を得た。
結果と考察
回答者の属性はTable 1の通りである。習っているスポーツの種類は個人種目であるスイミングが多い。8名のインタビューを通して多くの方の語りに見られたスポーツの習い事に関する困難について,以下の3つの観点から考察する。
習い事を始めるにあたっての困難
E:「ダンスやりたい,踊りやりたい」って本人が……で,ダンススクールもお試しとかも行ったんですけど,お試しの結果「無理です」って。1人でどっか行っちゃうから。「指導が理解できないなら教えようがありません」って。
D:(スイミングスクール探す時)ほとんど難しい……。もうダメかと思ってた時療育施設で知り合った人に「あそこ体験いったんだけど良かったよ」と。(そこは)この時間なら人の余裕あるので……と前向きに受け入れてくれた。
多くの母親が受け入れてくれる習い事を探すことに苦労をしていた。事前に関係がある場所で受け入れてもらえた,という意見も多かった。
子どもの特性による他児とのトラブル
B:見てて「危ないな」と。自分の子よりも他の子に何かしちゃうと困るので,級もちょうど伸びてなかったので「今はいいかな」って感じで辞めた。
C:(ロッカールームで)他児とトラブル。「ワーッ」と暴れちゃって……。怪我させてしまった。先方に「何でお母さんは付いていなかったの?」と。
スイミングも集団での指導のため,先生の理解は得られても,周囲の子とのトラブルに苦労している様子であった。
上達しないことによるジレンマ
G:4年以上続けて,だけどまだクロール15mくらい。こんなに大きいのに泳げなくて「どうかな」とも思うんだけど,本人楽しそうなので。
A:積み重ねが感じられない……親としてもしんどいのは成長が見られないところなんですよね。見れないというか見えにくい。
子どもの上達が感じられないとき(特に周囲と比べて),傷つきを覚えたり続けることに迷いを感じる母親も多いことが語りから見られた。
引用文献
川田裕次郎他(2016)地域スポーツの指導者の直面している問題の把握 日本コミュニティ心理学会第19回大会発表論文集,98-99.
付 記
本研究は科研費18K03119の補助を受けた。