日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 1:30 PM - 3:30 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE66] デザイン工学科の学生に適したプログラミング言語(Processing)の導入効果

モチベーションの向上を目指すために

土肥紳一1, 今野紀子2 (1.東京電機大学, 2.東京電機大学)

Keywords:モチベーション、プログラミング入門教育

目  的
 システムデザイン工学部デザイン工学科は,2017年4月に開設した。デザイン工学科の入学者は,デザイナーを目指す人が多く,プログラミングの専門家を目指す人は少ない。女性の割合は,約3割である。プログラミング言語を何にするかが,重要な問題になった。システムデザイン工学部の前身である情報環境学部では, Java言語を導入していたが,初学者にとって敷居が高い欠点があった。デザイン工学科の学生には,実行結果が絵で表示される方が興味を喚起すると考え,Processing言語を導入した。受講者のモチベーションを測定および分析で,その導入効果を示す。
方  法
 Processingは,スケッチブックに絵を描く感覚でプログラミングを学習できるように開発された言語である。これはJavaで作られており,Javaの機能を継承している。一般的にプログラミングには「おまじない」が必要であるが,Processingにはこれが無い。簡潔な命令を入力し,その結果を順次絵で確認しながらプログラミングを学習できる。Processingは,インタープリタのため,ソースプログラムを入力した時点で,構文チェックが始まる。誤りが発見されると,即座にエラーが表示され,初学者に親切である。Figure 1は,目玉がマウスの方を見るプログラムの例である。右側の例は目玉が多く不気味であるが,それを見たさにプログラミングに励む。完成して目玉が動くと,あちこちから「キャー」と言った声があがる。
導入効果は,SIEM(ジーム)を使って受講者のモチベーションを分析した[1]。測定は授業の前期,中期,後期の3回実施する。モチベーションは1から25の数値に定量化される。通常,前期のモチベーションは高く,中期,後期にかけて低下する。
結  果
 2018年度のモチベーションの推移は,前期が18.2,中期が18.4,後期が18.3となり,変化しなかった。中期のCS分析を行った。Figure 2に中期のCSグラフを示す。後期に向けた授業改善策は,「成功機会度(ILI=7.0)」「自己コントロール度(ILI=6.6)」の改善,工夫が効果的であることが指摘された.ILIは改善度指数を示しており,特に5以上は要改善,10以上は即改善項目と考えられる。具体的には,①授業中に練習問題や基礎演習などを取り入れることで,学生ができた・わかったという実感や成功体験を得る機会を増やす,②最初はできそうな課題で「やればできる」という感覚をつかませながら,馴れた頃にチャレンジ精神をくすぐるような課題に挑戦させることで,学生に自らの工夫を生かした成功体験を与えるなどが有効と考えられる」が提案された。
考  察
 デザイン工学科の1年生を対処に,コンピュータプログラミングⅠのモチベーションを分析した。その結果,モチベーションの推移は,大きく低下していないことが明らかになった。通常は,前期から後期にかけてモチベーションが低下する傾向にあるが,低下が抑えられたことは,Processing言語がデザイン工学科の受講者に合っているためと考えられる。今後は,受講者の興味を喚起できるように教授内容を工夫し,さらなるモチベーションの向上を目指したい。
参考文献
(1)異なる学科におけるプログラミング入門教育のSIEMによるモチベーションの分析,土肥紳一,今野紀子,日本教育心理学会,第60回総会発表論文集,p273,2018