[PF27] 批判的思考育成としての防災・減災の学習活動の評価
オンライン討論活動への教員活動の影響
Keywords:批判的思考態度、防災教育、オンライン討論
目 的
批判的思考態度の育成に討論(ディスカッション)の効果が期待されている。また,オンライン討論でも有効とされている(楠見・田中,2008)。本研究グループでは,これまで防災・減災の大規模授業にオンライン討論を導入して,その学習活動を継続的に検討している(中山ほか,2018)。本稿では,オンライン討論への指導者の介入が及ぼす影響を中心に,学習者属性も考慮して分析し,指導法を検討した。
方 法
大学学部1年生(238名)を対象にした防災・減災に関する授業で,2017年に実施した授業と同様に,以下の調査を行った。ただし,小テストの実施回数などのいくつかの条件で違いがあった。
学習者属性:Big5(川本ほか,2015), 批判的思考力(4因子:平山・楠見,2004),科学技術リテラシー(4因子:川本ほか,2008),情報処理スタイル(合理性-直観性)尺度(2因子:内藤ほか,2004)を調査して属性とした。
学習活動:授業ではオンライン討論ができる掲示板を,全受講生が登録されたmoodleシステム上に提供し,その発言を記録した。掲示板の討論は,担当教員も参加できる。2017年では頻繁に参加したが,2018年では,教員参加による発言活動は抑制した。掲示板での全ての参加者の発言については,発言回数,発言文字数などを抽出し、授業中に行われた小テストやレポート課題の成績もあわせて分析した。
結果と考察
調査した尺度間の相関関係を調べ,その一部をTable 1に示す。批判的思考力の4因子(「思考への自覚」「探求心」「客観性」「証拠の重視」)は,性格の「外向性」や「開放性」,科学技術リテラシーの因子や情報処理スタイルの「合理性」との正の相関関係が認められた。全体的な傾向は,前年の結果とほぼ同様である。ただし,性格の因子得点で2017年の調査結果との違いが見られた。
担当教員のオンライン討論頻度は2018年10回(2017年41回)と抑制された。オンライン討論に参加した学生数は全体の31%(同40%)で,平均発言回数は3.2回(同2.4回)であった。ただし,小テストやレポート課題得点の合計点は,2017年と同様に討論参加者の方が有意に高かった(p<0.01)。
オンライン討論に参加した学生の学習者属性と発言回数を同時分析し,パス図にまとめた。図中の太字の係数は2群間で差があった係数である。この結果から,性格や情報処理スタイルが,教員介入の有無によって発言回数への影響が変わることを確認した。
参考文献
楠見,田中 (2008). 日教心50回総会,PF2-35.
川本他 (2015). 発達心理学研究,26(2) 107-122.
平山,楠見 (2004). 教心研,52, 186-198.
川本他 (2008). 日心72回大会,2AM151.
内藤他 (2004). パーソナリティ研究, 13(1) 67-78.
中山他 (2018). 日教心60回総会,PC39.
批判的思考態度の育成に討論(ディスカッション)の効果が期待されている。また,オンライン討論でも有効とされている(楠見・田中,2008)。本研究グループでは,これまで防災・減災の大規模授業にオンライン討論を導入して,その学習活動を継続的に検討している(中山ほか,2018)。本稿では,オンライン討論への指導者の介入が及ぼす影響を中心に,学習者属性も考慮して分析し,指導法を検討した。
方 法
大学学部1年生(238名)を対象にした防災・減災に関する授業で,2017年に実施した授業と同様に,以下の調査を行った。ただし,小テストの実施回数などのいくつかの条件で違いがあった。
学習者属性:Big5(川本ほか,2015), 批判的思考力(4因子:平山・楠見,2004),科学技術リテラシー(4因子:川本ほか,2008),情報処理スタイル(合理性-直観性)尺度(2因子:内藤ほか,2004)を調査して属性とした。
学習活動:授業ではオンライン討論ができる掲示板を,全受講生が登録されたmoodleシステム上に提供し,その発言を記録した。掲示板の討論は,担当教員も参加できる。2017年では頻繁に参加したが,2018年では,教員参加による発言活動は抑制した。掲示板での全ての参加者の発言については,発言回数,発言文字数などを抽出し、授業中に行われた小テストやレポート課題の成績もあわせて分析した。
結果と考察
調査した尺度間の相関関係を調べ,その一部をTable 1に示す。批判的思考力の4因子(「思考への自覚」「探求心」「客観性」「証拠の重視」)は,性格の「外向性」や「開放性」,科学技術リテラシーの因子や情報処理スタイルの「合理性」との正の相関関係が認められた。全体的な傾向は,前年の結果とほぼ同様である。ただし,性格の因子得点で2017年の調査結果との違いが見られた。
担当教員のオンライン討論頻度は2018年10回(2017年41回)と抑制された。オンライン討論に参加した学生数は全体の31%(同40%)で,平均発言回数は3.2回(同2.4回)であった。ただし,小テストやレポート課題得点の合計点は,2017年と同様に討論参加者の方が有意に高かった(p<0.01)。
オンライン討論に参加した学生の学習者属性と発言回数を同時分析し,パス図にまとめた。図中の太字の係数は2群間で差があった係数である。この結果から,性格や情報処理スタイルが,教員介入の有無によって発言回数への影響が変わることを確認した。
参考文献
楠見,田中 (2008). 日教心50回総会,PF2-35.
川本他 (2015). 発達心理学研究,26(2) 107-122.
平山,楠見 (2004). 教心研,52, 186-198.
川本他 (2008). 日心72回大会,2AM151.
内藤他 (2004). パーソナリティ研究, 13(1) 67-78.
中山他 (2018). 日教心60回総会,PC39.