日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 4:00 PM - 6:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF41] 重要な他者が生徒の自己効力感に与える影響

教師・保護者・地域住民の包括的影響

矢野隆彦1, 吉澤寛之2 (1.岐阜県多治見市立小泉中学校, 2.岐阜大学)

Keywords:自己効力感、包括的影響、重要な他者

 子どもの学校適応の予測因である自己効力感(Ajzen,1991;小川内,2013)は,周囲の他者の影響を受ける。教師効力感は,子どもの自己効力感に正の影響を及ぼすとされる(Gibson & Dembo,1984)。一方,家庭や地域も,生徒に成功体験等を与え,自己効力感を高める重要な要因であると考えられる。Smokowski et al. (2017)は,複数の身近な他者の包括的な影響を検証しており,包括的な保護要因が子どもの攻撃性を低下することを示している。これら包括的影響は,他者の自己効力感と子どもの自己効力感との関係にも存在すると考えられる。本研究の目的は,生徒にとって重要な他者である教師・保護者・地域住民の自己効力感と生徒の自己効力感や社会性の関連を分析し,相対的影響力を比較検証する。
方  法
調査・分析対象者 A県内中学校の全校生徒442名と保護者442名,教師23名と校区内の自治会役員198名を対象に,2018年4月下旬~5月初旬に調査を実施した。回答に不備がなかった生徒405名(1年126名,2年141名,3年138名:男子206名,女子199名),保護者376名(Mage=43.42,SD=5.10:父親30名,母親346名),教師23名(Mage=39.22,SD=11.19:男性15名,女性9名),地域住民179名(Mage=58.21,SD=12.79:男性121,女性72名)を分析対象とした。
調査内容 生徒には,児童生徒用一般性セルフエフィカシー(赤松,2005),対人的自己効力感(松島,2000),学校生活スキル(飯田他,2000),規範行動自己評定(山田,2013),社会的自己制御(原田他,2008),教師には,教師効力感(谷島,2013;町支,2014),フレンドシップ効力感(田崎他,2013)の各尺度を測定した。保護者には子育て効力感,地域住民には若者育成効力感(矢野・吉澤, 2018)の各尺度を独自に開発して測定した。
結果と考察
 生徒に保護者,担任教師データ,地域住民は各地域平均値を突合した上で,三者の自己効力感を独立変数,生徒の自己効力感や社会性を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施した(Table1)。「行動の積極性」「対人スキルの自信」には教師と保護者,「能力の社会的位置付け」「友人との信頼」には教師の効力感がそれぞれ影響を与えていた。「集団生活スキル」「対人間での望ましい行動」「対人間での遵守すべき行動」には保護者,「個人として遵守すべき行動」には保護者と地域住民,「自己抑制」には保護者と教師,「自己主張」には教師の効力感がそれぞれ影響していた。相対的に保護者の影響が大きく,教師には負の影響が見られた。子どもとの関係性が未熟な4月にもかかわらず,学級の始まりという強い意識も持った教師が,子どもとの関係形成に根拠のない自信を持ち,生徒に統制的な指導を展開した結果,負の影響が現れたのではないかと考える。
 今後は,影響の強い重要な他者の自己効力感を高めることで,生徒の効力感を高める実践研究が求められる。