[PF44] 大学生の発達障害に関するメンタルヘルスリテラシー尺度の作成
大学生を対象として
Keywords:発達障害、メンタルヘルスリテラシー、大学生
問題と目的
近年,4年制大学に所属する発達障害の大学生は増加傾向にあり,2017年には4458人と過去最大の数値となっている(独立行政法人日本学生支援機構, 2018)。このような状況の中で,水野(印刷中)は大学教員が発達障害への正しい知識や対応を身に着けることが重要であることを指摘し,大学生の発達障害のメンタルヘルスリテラシー(以下,MHL)尺度を作成している。
しかし,発達障害の大学生が適応的に大学生活を送るためには大学教員によるサポートだけでなく,周囲の学生の理解も必要である。実際,周囲の友人の態度が発達障害の学生の学業的・社会的達成の調整変数となりうることが指摘されている(Nevill & White, 2011)。
そこで本研究では,大学教員を対象に作成された,大学生の発達障害に関するMHL尺度(水野, 印刷中)を参考に,大学生に適用できる大学生の発達障害に関するMHL尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討する。
方 法
調査対象者 大学2-4年生306名(男性90名,女性216名,平均年齢=21.16歳,SD=1.16)。
調査手続き 2018年1月にインターネット調査会社を通して回答を求めた。
調査内容 (1)大学生の発達障害に関するMHL尺度(大学生用)原版: MHLの6つの構成要素を含む,大学生の発達障害に関するMHLを測定する尺度。大学生の発達障害に関するMHL尺度(大学教員用)(水野,印刷中)を参考に作成した。(2)達障害者への接触経験尺度:うつ病患者への接触経験尺度(Kashihara,2015)の項目を変更し,発達障害の人との関係性の指標として用いた。
結果と考察
大学生の発達障害に関するMHL尺度(水野, 印刷中)に対応するように因子構造を設定し,確認的因子分析を行った。その結果,「疾患の認識に関する能力」(CFI=.93, RMSEA=.06),「自己対処に関する知識と信念」(CFI=1.00, RMSEA=.00),「認識や援助要請を促す態度」(CFI=.95, RMSEA=.07)については十分な適合度指標を示した。他方,「専門的支援に関する知識と信念」(CFI=.90, RMSEA=.16)と「情報の入手方法に関する知識」(CFI=.97, RMSEA=.11)についてはRMSEAの値がやや高かったが,大学教員用の尺度との対応関係を優先することとした。なお,「原因に関する知識と信念」については,大学教員をサンプルとしたときと同様に,3項目を説明する因子を抽出することができなかった。
次に,信頼性の検討としてω係数を算出したところ,ω=.70-.92であり,十分な内的一貫性が示された。
その後,妥当性の検討として,(1)「発達障害と関連のある専攻の学生の方が,関連のない専攻の学生よりも有意にMHLの得点が高い」,(2)「発達障害の人との関係性が深い人は浅い人よりもMHLが高い」という仮説を検証した。なお,発達障害に関連のある専攻を,医学,看護学,教育学・保育学,心理学,社会福祉学と操作的に定義した。
「発達障害と関連のある専攻の学生の方が,関連のない専攻の学生よりも有意にMHLの得点が高い」という仮説について,専攻を独立変数,MHLを従属変数とした対応のないt検定を実施した。その結果,「ASDの反復的な行動様式を認識する能力」「ADHDを認識する能力」「LDを認識する能力」「適切な自己対処に関する知識」「専門的支援に関する知識と信念」「発達障害への肯定的態度」「支援を受けることへの肯定的態度」「情報の入手方法に関する知識」において,有意または有意傾向で発達障害に関連のある専攻の大学生の方がそうでない大学生よりも得点が高かった。一方,「発達障害への否定的態度」については,有意に発達障害に関連のある専攻の大学生の方が得点が低かった。
「発達障害の人との関係性が深い人は浅い人よりもMHLが高い」という仮説を検証するために,発達障害の人と直接関わったことのある6点以上を関係性高群(63名),5点以下(198名)を関係性低群とし,関係性の2群を独立変数,MHLを従属変数とした対応のないt検定を実施した。その結果,「発達障害は生物学的な要因(遺伝など)の影響が強い」「発達障害への否定的態度」を除いたMHLにおいて有意または有意傾向で得点差が示された。
以上より,「発達障害は生物学的な要因(遺伝など)の影響が強い」のみ,いずれの妥当性の検証の仮説とも一致しない結果が示されたが,本尺度は十分な信頼性と一定の妥当性が確認された尺度であると言える。
近年,4年制大学に所属する発達障害の大学生は増加傾向にあり,2017年には4458人と過去最大の数値となっている(独立行政法人日本学生支援機構, 2018)。このような状況の中で,水野(印刷中)は大学教員が発達障害への正しい知識や対応を身に着けることが重要であることを指摘し,大学生の発達障害のメンタルヘルスリテラシー(以下,MHL)尺度を作成している。
しかし,発達障害の大学生が適応的に大学生活を送るためには大学教員によるサポートだけでなく,周囲の学生の理解も必要である。実際,周囲の友人の態度が発達障害の学生の学業的・社会的達成の調整変数となりうることが指摘されている(Nevill & White, 2011)。
そこで本研究では,大学教員を対象に作成された,大学生の発達障害に関するMHL尺度(水野, 印刷中)を参考に,大学生に適用できる大学生の発達障害に関するMHL尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討する。
方 法
調査対象者 大学2-4年生306名(男性90名,女性216名,平均年齢=21.16歳,SD=1.16)。
調査手続き 2018年1月にインターネット調査会社を通して回答を求めた。
調査内容 (1)大学生の発達障害に関するMHL尺度(大学生用)原版: MHLの6つの構成要素を含む,大学生の発達障害に関するMHLを測定する尺度。大学生の発達障害に関するMHL尺度(大学教員用)(水野,印刷中)を参考に作成した。(2)達障害者への接触経験尺度:うつ病患者への接触経験尺度(Kashihara,2015)の項目を変更し,発達障害の人との関係性の指標として用いた。
結果と考察
大学生の発達障害に関するMHL尺度(水野, 印刷中)に対応するように因子構造を設定し,確認的因子分析を行った。その結果,「疾患の認識に関する能力」(CFI=.93, RMSEA=.06),「自己対処に関する知識と信念」(CFI=1.00, RMSEA=.00),「認識や援助要請を促す態度」(CFI=.95, RMSEA=.07)については十分な適合度指標を示した。他方,「専門的支援に関する知識と信念」(CFI=.90, RMSEA=.16)と「情報の入手方法に関する知識」(CFI=.97, RMSEA=.11)についてはRMSEAの値がやや高かったが,大学教員用の尺度との対応関係を優先することとした。なお,「原因に関する知識と信念」については,大学教員をサンプルとしたときと同様に,3項目を説明する因子を抽出することができなかった。
次に,信頼性の検討としてω係数を算出したところ,ω=.70-.92であり,十分な内的一貫性が示された。
その後,妥当性の検討として,(1)「発達障害と関連のある専攻の学生の方が,関連のない専攻の学生よりも有意にMHLの得点が高い」,(2)「発達障害の人との関係性が深い人は浅い人よりもMHLが高い」という仮説を検証した。なお,発達障害に関連のある専攻を,医学,看護学,教育学・保育学,心理学,社会福祉学と操作的に定義した。
「発達障害と関連のある専攻の学生の方が,関連のない専攻の学生よりも有意にMHLの得点が高い」という仮説について,専攻を独立変数,MHLを従属変数とした対応のないt検定を実施した。その結果,「ASDの反復的な行動様式を認識する能力」「ADHDを認識する能力」「LDを認識する能力」「適切な自己対処に関する知識」「専門的支援に関する知識と信念」「発達障害への肯定的態度」「支援を受けることへの肯定的態度」「情報の入手方法に関する知識」において,有意または有意傾向で発達障害に関連のある専攻の大学生の方がそうでない大学生よりも得点が高かった。一方,「発達障害への否定的態度」については,有意に発達障害に関連のある専攻の大学生の方が得点が低かった。
「発達障害の人との関係性が深い人は浅い人よりもMHLが高い」という仮説を検証するために,発達障害の人と直接関わったことのある6点以上を関係性高群(63名),5点以下(198名)を関係性低群とし,関係性の2群を独立変数,MHLを従属変数とした対応のないt検定を実施した。その結果,「発達障害は生物学的な要因(遺伝など)の影響が強い」「発達障害への否定的態度」を除いたMHLにおいて有意または有意傾向で得点差が示された。
以上より,「発達障害は生物学的な要因(遺伝など)の影響が強い」のみ,いずれの妥当性の検証の仮説とも一致しない結果が示されたが,本尺度は十分な信頼性と一定の妥当性が確認された尺度であると言える。