[PF50] 発達に遅れのある幼児の母親へのソーシャルエモーショナルラーニング
Keywords:発達障害、感情調節、ソーシャルエモーショナルラーニング
問題と目的
ソーシャルエモーショナルラーニング(以下SEL)とは,自分自身の感情に気付き,適切に対応することを目指す教育実践である(渡辺,2015)。発達障害児の親は,子どもへの“育てにくさ”を強く感じ,叱責が多くなるとされていることから(中島他,2012),SELによる支援の必要性が高いといえるが,イライラや怒りなどの感情に焦点を当てたプログラムの実践は少ない。そこで本研究では,SELの枠組みで,感情調節や問題解決をターゲットスキルとする親向けの集団ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)を実施し,その効果を検討することを目的とした。
方 法
参加者
関東の児童発達支援事業所に子どもを通わせる母親であった。本研究ではSSTに参加した7名のうち,すべての回に出席した3名(A,B,C)を分析対象とした。
調査手続き
参加者は,SSTの1週間前と1週間後に個別で質問紙調査と半構造化インタビューに回答した。
親向け集団SSTプログラム
子どもが支援を受けている時間を用いて,親向けSSTを実施した。プログラムは80分×全4回(隔週)で構成され,ターゲットスキルは「感情に気付く」,「感情をコントロールする」,「問題解決をする」,「ストレスに対処する」であった。渡辺・小林(2009)を基に,毎回インストラクション,モデリング,リハーサル,フィードバックの手続きに沿って行い,ホームワークを課した。インストラクションでは子育てでよくある事例について,ターゲットスキルを身につけることでどのように対応できるかを示し,動機づけを行った。モデリングでは,親子のやりとりの良い例と悪い例を動画で観せた。リハーサルでは,ワークシートに沿って自分自身がイライラする場面や,実際にどのような対応ができるかを記入し,グループでロールプレイを行った。フィードバックでは,ファシリテーターがワークシートへの記入内容やロールプレイの様子について,ターゲットスキルに紐づけて評価をした。講義の最初には前回の復習とホームワークの共有を行った。
測度
育児ストレスショートフォーム(荒木他,2005),育児に対する自己効力感尺度(PSE)(金岡,2011),育児関連レジリエンス尺度(宮野他,2014)への回答を求めた。
インタビュー
普段子どもと関わっていてイライラする場面(preとpostで同一の場面)について,「どう対応しているか」,「望ましいと思う対応」,「望ましい対応の実施率(%)」「望ましい対応を増やす方法」について尋ねた。
結果と考察
育児ストレス,自己効力感,レジリエンス
全参加者において,SST前後で各尺度の得点に差はみられなかった。その要因として,効力感などSSTのターゲットスキルの習得により副次的に向上する項目を用いたことが挙げられる。今後の課題は,プログラム終了後短期間における直接的効果の測定と,フォローアップの効果測定である。
日常のイライラ場面における子どもへの対応
「望ましい対応の実施率」は,全員がpostで向上しており(Figure),その要因として,SSTで身につけたスキルが般化したことが挙げられる。参加者はプログラムを通して,普段自分がどんな場面でイライラしやすいかを振り返り,どのように感情を鎮静化したらよいか,何が問題で,どう対処したらよいかを具体的に考えた。その結果,子どもへの適切な関わりが増えたものと考えられる。
「どう対応しているか」のインタビューデータをコード化しカテゴリーを抽出した結果,postのみで【自分の気持ちを落ち着ける】がみられた。また,【放置する】が減り,【事前に環境を整える】が増えていた。このことからも,プログラムによって参加者が感情調節スキルや,より効果的な問題解決のスキルを身につけたことが示唆された。
ソーシャルエモーショナルラーニング(以下SEL)とは,自分自身の感情に気付き,適切に対応することを目指す教育実践である(渡辺,2015)。発達障害児の親は,子どもへの“育てにくさ”を強く感じ,叱責が多くなるとされていることから(中島他,2012),SELによる支援の必要性が高いといえるが,イライラや怒りなどの感情に焦点を当てたプログラムの実践は少ない。そこで本研究では,SELの枠組みで,感情調節や問題解決をターゲットスキルとする親向けの集団ソーシャルスキルトレーニング(以下SST)を実施し,その効果を検討することを目的とした。
方 法
参加者
関東の児童発達支援事業所に子どもを通わせる母親であった。本研究ではSSTに参加した7名のうち,すべての回に出席した3名(A,B,C)を分析対象とした。
調査手続き
参加者は,SSTの1週間前と1週間後に個別で質問紙調査と半構造化インタビューに回答した。
親向け集団SSTプログラム
子どもが支援を受けている時間を用いて,親向けSSTを実施した。プログラムは80分×全4回(隔週)で構成され,ターゲットスキルは「感情に気付く」,「感情をコントロールする」,「問題解決をする」,「ストレスに対処する」であった。渡辺・小林(2009)を基に,毎回インストラクション,モデリング,リハーサル,フィードバックの手続きに沿って行い,ホームワークを課した。インストラクションでは子育てでよくある事例について,ターゲットスキルを身につけることでどのように対応できるかを示し,動機づけを行った。モデリングでは,親子のやりとりの良い例と悪い例を動画で観せた。リハーサルでは,ワークシートに沿って自分自身がイライラする場面や,実際にどのような対応ができるかを記入し,グループでロールプレイを行った。フィードバックでは,ファシリテーターがワークシートへの記入内容やロールプレイの様子について,ターゲットスキルに紐づけて評価をした。講義の最初には前回の復習とホームワークの共有を行った。
測度
育児ストレスショートフォーム(荒木他,2005),育児に対する自己効力感尺度(PSE)(金岡,2011),育児関連レジリエンス尺度(宮野他,2014)への回答を求めた。
インタビュー
普段子どもと関わっていてイライラする場面(preとpostで同一の場面)について,「どう対応しているか」,「望ましいと思う対応」,「望ましい対応の実施率(%)」「望ましい対応を増やす方法」について尋ねた。
結果と考察
育児ストレス,自己効力感,レジリエンス
全参加者において,SST前後で各尺度の得点に差はみられなかった。その要因として,効力感などSSTのターゲットスキルの習得により副次的に向上する項目を用いたことが挙げられる。今後の課題は,プログラム終了後短期間における直接的効果の測定と,フォローアップの効果測定である。
日常のイライラ場面における子どもへの対応
「望ましい対応の実施率」は,全員がpostで向上しており(Figure),その要因として,SSTで身につけたスキルが般化したことが挙げられる。参加者はプログラムを通して,普段自分がどんな場面でイライラしやすいかを振り返り,どのように感情を鎮静化したらよいか,何が問題で,どう対処したらよいかを具体的に考えた。その結果,子どもへの適切な関わりが増えたものと考えられる。
「どう対応しているか」のインタビューデータをコード化しカテゴリーを抽出した結果,postのみで【自分の気持ちを落ち着ける】がみられた。また,【放置する】が減り,【事前に環境を整える】が増えていた。このことからも,プログラムによって参加者が感情調節スキルや,より効果的な問題解決のスキルを身につけたことが示唆された。