[PF62] 子どもの喪失体験に伴う悲嘆と教師から受けた対応の研究
大学1年生の振り返りと小・中学校教師の対応の調査を通して
Keywords:喪失体験、悲嘆、教師の対応
問題と目的
学校教育においては,大規模災害や大きな事故・事件等が発生した場合を除き,何らかの形で身近な死に遭遇してしまった子どもたちへの対応は,各教師にほぼ全て任されているのが実情である。子どもの喪失体験直後の感情とその時に教師から受けた対応の検討を通して,子どもの実態に即した心のケアの進め方を明らかにする。
方 法
<研究1>対象:大学1年生469名(男性260名,女性209名,平均年齢18.3歳)。調査内容:喪失体験の振り返りとその時の教師の対応について,「死別体験の相手及び時期」,「悲嘆を伴う死別体験時に教師から受けた対応・内容・方法」,「悲嘆を伴う死別体験時の感情」に関する予備調査を実施した。分析:「悲嘆を伴う死別体験時の感情」尺度25項目への回答を1~4まで数値化し,因子分析(主因子法,Promax回転)を行った。抽出された4因子を下位尺度とし,それまでの経験等との関係性を分析した。<研究2>対象:小・中学校教師194名(男性96名,女性98名;小学校4校77名,中学校6校117名;平均年齢40.6歳)。調査内容:子どもの喪失体験直後の対応の方法・内容等について質問紙調査を行った。分析:子どもから見た教師の対応<研究1>と教師自身が捉えている子どもへの対応を比較検討した。
結 果
<研究1>4下位尺度は,「生や死への興味・関心」,「現実からの逃避」,「故人との絆保持」,「生活・人生志向」と命名された。これらと「経験等の有無」の関係を検討した結果,「生や死への興味・関心」に関しては,「社会の出来事などにより生死について思いをめぐらした経験」の有無で0.1%水準で有意な差があり,「大好きな芸能人(有名人)が亡くなってショックを受けた経験」の有無で5%水準で有意な差が示された。また,「現実からの逃避」に関しては男女で1%水準で有意な差があり,「誰か(ペットを含む)の臨終場面に立ち合った経験」の有無では5%水準で有意な差が示された。さらに,「故人との絆保持」については,男女で0.1%水準で有意な差があり,「誰か(ペットを含む)の臨終場面に立ち合った経験」の有無では5%水準で有意な差が示された。また,「特に可愛がっていた動物が死んだ経験」の有無では5%水準で有意な差があった。
<研究2>子どもから見た教師の対応と教師自身が捉えている子どもへの対応を比較検討した結果, 0.1%水準で有意な差が示された項目は6項目(「分からない」を除く)であった(Table 1)。
考 察
死別体験の有無で「悲嘆を伴う死別体験時の感情」の下位尺度を比較した結果,子どもにとって身近な人や可愛がっていた動物が死んだとき,亡くなった人(動物)との絆を保持したいという気持ちや,現実から逃避したいという気持ちが強まること,またその気持ちは男子より女子が強いことが示された。子どもがそのような状況にある時,教師は子どものケアに努めたと認識していても,当該の子どもは教師から必ずしも満足なケアを受けたとは感じないことが明らかになった。喪失体験をした子どもへの教師の対応は極めて困難な様相を呈するが,「チーム支援」(小林,2011),「重層的支援」(冨永,2011)の考え方は,教師の支援の在り方に有益な示唆を与えていると考えられる。
学校教育においては,大規模災害や大きな事故・事件等が発生した場合を除き,何らかの形で身近な死に遭遇してしまった子どもたちへの対応は,各教師にほぼ全て任されているのが実情である。子どもの喪失体験直後の感情とその時に教師から受けた対応の検討を通して,子どもの実態に即した心のケアの進め方を明らかにする。
方 法
<研究1>対象:大学1年生469名(男性260名,女性209名,平均年齢18.3歳)。調査内容:喪失体験の振り返りとその時の教師の対応について,「死別体験の相手及び時期」,「悲嘆を伴う死別体験時に教師から受けた対応・内容・方法」,「悲嘆を伴う死別体験時の感情」に関する予備調査を実施した。分析:「悲嘆を伴う死別体験時の感情」尺度25項目への回答を1~4まで数値化し,因子分析(主因子法,Promax回転)を行った。抽出された4因子を下位尺度とし,それまでの経験等との関係性を分析した。<研究2>対象:小・中学校教師194名(男性96名,女性98名;小学校4校77名,中学校6校117名;平均年齢40.6歳)。調査内容:子どもの喪失体験直後の対応の方法・内容等について質問紙調査を行った。分析:子どもから見た教師の対応<研究1>と教師自身が捉えている子どもへの対応を比較検討した。
結 果
<研究1>4下位尺度は,「生や死への興味・関心」,「現実からの逃避」,「故人との絆保持」,「生活・人生志向」と命名された。これらと「経験等の有無」の関係を検討した結果,「生や死への興味・関心」に関しては,「社会の出来事などにより生死について思いをめぐらした経験」の有無で0.1%水準で有意な差があり,「大好きな芸能人(有名人)が亡くなってショックを受けた経験」の有無で5%水準で有意な差が示された。また,「現実からの逃避」に関しては男女で1%水準で有意な差があり,「誰か(ペットを含む)の臨終場面に立ち合った経験」の有無では5%水準で有意な差が示された。さらに,「故人との絆保持」については,男女で0.1%水準で有意な差があり,「誰か(ペットを含む)の臨終場面に立ち合った経験」の有無では5%水準で有意な差が示された。また,「特に可愛がっていた動物が死んだ経験」の有無では5%水準で有意な差があった。
<研究2>子どもから見た教師の対応と教師自身が捉えている子どもへの対応を比較検討した結果, 0.1%水準で有意な差が示された項目は6項目(「分からない」を除く)であった(Table 1)。
考 察
死別体験の有無で「悲嘆を伴う死別体験時の感情」の下位尺度を比較した結果,子どもにとって身近な人や可愛がっていた動物が死んだとき,亡くなった人(動物)との絆を保持したいという気持ちや,現実から逃避したいという気持ちが強まること,またその気持ちは男子より女子が強いことが示された。子どもがそのような状況にある時,教師は子どものケアに努めたと認識していても,当該の子どもは教師から必ずしも満足なケアを受けたとは感じないことが明らかになった。喪失体験をした子どもへの教師の対応は極めて困難な様相を呈するが,「チーム支援」(小林,2011),「重層的支援」(冨永,2011)の考え方は,教師の支援の在り方に有益な示唆を与えていると考えられる。