[PG05] 学齢期の子どもの家庭学習・授業態度を子どもの気質と母親の介入態度との観点から考える
Keywords:学習態度、気質、介入態度
問 題
情動反応性の気質特性としての「行動的抑制傾向(扁桃体が生理基盤)」・「接近快活性(線条体が生理基盤)」と情動制御性の気質特性としての「エフォートフル・コントロール(前部帯状回・前頭前野が生理基盤)」に焦点を絞り,それらの気質的個人差が,対人場面・学業場面での自己制御行動とどのように関連しているのかを明らかにするのが本研究の目的である。
方 法
2010年生まれの第一子の子どもとその母親に回答を求めるウェブ調査を実施し,635名から回答を得た(2019年1月)。調査内容は,子どもの家庭学習・授業態度(子どもが回答),母親回答による子どもの気質測定,子どもの勉強への母親の介入態度,母親認識による子どもの算数勉強法,である。子どもの気質はTemperament in Middle Childhood Questionnaireを翻訳して使用した。使用した気質次元は, Activation Control:AC, Assertive/Dominance:AD,Attention Focusing:AF, Fear:FE, High-Intensity Pleasure:HP, Impulsivity:IM, Inhibitory Control:IC,Low-Intensity Pleasure:LP, Perceptual Sensitivity:PS, Shyness:SHである(7段階評定)。親による介入・日常的サポートは高柳 (1994) の行った質問紙調査において有効だった質問項目を参考に作成した(5段階評定)。子どもの学習態度は苅谷 (2008) の質問紙調査を参考に作成した(5段階評定)。算数の学習方略はChen, P. P., Cleary, T. J., & Lui, A. M. (2015)を参考に,対象が日本の小学校低学年である事を踏まえた上で検討を行い作成した(5段階評定)。
結果・考察
尺度得点の算出
TMCQの10次元尺度についての確認的因子分析の結果,Effortful control1:AC,AF,IC, Effortful control2:LP,PS,Exuberance:AD,HP,IM, Behavioral inhibition:FE,SHの4つの因子で構成された。この結果に基づき,上位気質次元尺度(EC1, EC2, EX, BI)の得点を算出した。
親による勉強への介入態度・日常的支援態度については成績圧力支援尺度・一緒に勉強支援尺度・励まし尺度・日常的支援尺度の4尺度得点を,子どもの学習態度は家庭学習尺度・授業態度尺度,算数の学習方略は自己調整学習尺度・集中環境配慮方略尺度の4尺度得点を算出した。
子どもの学習態度・算数勉強方略
子どもの学習態度や算数の勉強法が子どもの気質や母親の介入態度・支援と関連しているかを検討するため,尺度相関を求めた(Table1)。その結果,自分から家庭学習に進んで取り組む態度や授業に熱心に取り組む態度の子どもほど,エフォートフル・コントロールが高く,母親が日常的支援をすることが多いこと,勉強の時にそばにいることや励ましたり慰めたりすることが多いこと,成績を他者と比較したりよい成績を取るよう圧力をかけることは少ないことがわかった。また,情動反応性に係る気質的個人差は,意見を言ったり先生に尋ねたりする学習態度に関連していた。効率的な算数勉強方略には母親の成績圧力型支援がプラスに働いていることが示唆された。
付 記
本研究は,科学研究費助成(課題番号:17K04377)を受けて実施した。
情動反応性の気質特性としての「行動的抑制傾向(扁桃体が生理基盤)」・「接近快活性(線条体が生理基盤)」と情動制御性の気質特性としての「エフォートフル・コントロール(前部帯状回・前頭前野が生理基盤)」に焦点を絞り,それらの気質的個人差が,対人場面・学業場面での自己制御行動とどのように関連しているのかを明らかにするのが本研究の目的である。
方 法
2010年生まれの第一子の子どもとその母親に回答を求めるウェブ調査を実施し,635名から回答を得た(2019年1月)。調査内容は,子どもの家庭学習・授業態度(子どもが回答),母親回答による子どもの気質測定,子どもの勉強への母親の介入態度,母親認識による子どもの算数勉強法,である。子どもの気質はTemperament in Middle Childhood Questionnaireを翻訳して使用した。使用した気質次元は, Activation Control:AC, Assertive/Dominance:AD,Attention Focusing:AF, Fear:FE, High-Intensity Pleasure:HP, Impulsivity:IM, Inhibitory Control:IC,Low-Intensity Pleasure:LP, Perceptual Sensitivity:PS, Shyness:SHである(7段階評定)。親による介入・日常的サポートは高柳 (1994) の行った質問紙調査において有効だった質問項目を参考に作成した(5段階評定)。子どもの学習態度は苅谷 (2008) の質問紙調査を参考に作成した(5段階評定)。算数の学習方略はChen, P. P., Cleary, T. J., & Lui, A. M. (2015)を参考に,対象が日本の小学校低学年である事を踏まえた上で検討を行い作成した(5段階評定)。
結果・考察
尺度得点の算出
TMCQの10次元尺度についての確認的因子分析の結果,Effortful control1:AC,AF,IC, Effortful control2:LP,PS,Exuberance:AD,HP,IM, Behavioral inhibition:FE,SHの4つの因子で構成された。この結果に基づき,上位気質次元尺度(EC1, EC2, EX, BI)の得点を算出した。
親による勉強への介入態度・日常的支援態度については成績圧力支援尺度・一緒に勉強支援尺度・励まし尺度・日常的支援尺度の4尺度得点を,子どもの学習態度は家庭学習尺度・授業態度尺度,算数の学習方略は自己調整学習尺度・集中環境配慮方略尺度の4尺度得点を算出した。
子どもの学習態度・算数勉強方略
子どもの学習態度や算数の勉強法が子どもの気質や母親の介入態度・支援と関連しているかを検討するため,尺度相関を求めた(Table1)。その結果,自分から家庭学習に進んで取り組む態度や授業に熱心に取り組む態度の子どもほど,エフォートフル・コントロールが高く,母親が日常的支援をすることが多いこと,勉強の時にそばにいることや励ましたり慰めたりすることが多いこと,成績を他者と比較したりよい成績を取るよう圧力をかけることは少ないことがわかった。また,情動反応性に係る気質的個人差は,意見を言ったり先生に尋ねたりする学習態度に関連していた。効率的な算数勉強方略には母親の成績圧力型支援がプラスに働いていることが示唆された。
付 記
本研究は,科学研究費助成(課題番号:17K04377)を受けて実施した。