日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG06] 重さの保存の縦断的研究

大西真樹男 (立命館大学)

Keywords:重さの保存、縦断的、一時的混乱

問題と目的
 筆者の横断的研究において,9~10歳の頃に通過率が上昇するが,10~11歳ころでは停滞あるいはやや下降がみられた(「8~10歳の『重さの保存』に関する研究」(2017),「学童期における重さの単位の発見に関する研究」(2019),など)。10~11歳は小学校5年生から6年生の頃であるが,そのころに保存課題等で正答率が横ばいあるいは低下傾向がみられるという事実は,以前から実践者や研究者によって指摘されてきた(銀林,青木など)。また,それまでの生活の中で培ってきた概念などから科学的概念に発展していく過程も,右肩上がりに進んでいくのではなく「行きつ戻りつ」「往復運動」「相互浸透」などを行う期間が必要とする議論もある。
 重さの保存の獲得について,3年間継続した質問紙調査結果を縦断的に分析することで,どのような特徴が見いだせるのか検討することが本研究の目的である。
方  法
 重さの保存課題は,「うすくする課題」「ひも課題」「小さな玉課題」の3つ(以下,保存3課題)である。その内容は以下のようなものである。「うすくする課題」は球形の粘土をうすく平らに伸ばすと重さはどうなるか,「ひも課題」は球形の粘土をひものように細長くすると重さはどうなるか,「小さな玉課題」は球形の粘土をいくつかの小さな玉に分けた時その全部の重さはどうなるか,というものである。
 対象となる学年と参加者数は次の通りである。なお,各学年を誕生月によってAとBに分けた。Aは10月~3月生まれ,Bは4月~9月生まれである。小学校4年生(A14人・B16人),小学校5年生(A19人・B20人),小学校6年生(A14人・B10人)の6つのグループについて,重さの保存の16・17・18年の質問紙データを基に経年変化を分析した。なお,09Aなどは,2009年度生まれのAグループを示している。保存3課題をすべて正答した場合を通過とした。
結  果
 Figure 1より,小学校3年生から4年生にかけて変化が大きいことが分かる。また小学校4年生から5年生にかけて横ばいまたは下降傾向がみられる。これは小学校4年生で一定のピークに達した後,停滞ないしは後退がみられることを示している。
考  察
 小学校3年生の2学期に重さ,3学期に重さの保存の学習,小学校5年生の3学期ではものの溶け方の学習をしている。これらの学習が影響している可能性もある。他教科の学習の影響もあり得る。いずれにせよ,9歳以降重さの保存が認識できるようになっていると考えられる。また,学習内容がより科学的になり深く読み取ることが必要になることから,それまでの自分の認識が覆されたり,深まったりする。また,当然のこととしていたことに対して疑問を抱くようになる。この全体としての認識の深まりが,保存3課題の判断にも反映されるのではないか。認識の深まりと広がりが次の課題解決の手段となると同時に一時的な混乱と矛盾をもたらすことにもなるのではないか。