日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG19] 再声化介入が英語テストに対する有効性認知に与える影響

馬場正太郎 (東京外国語大学大学院)

Keywords:再声化、言語テスト、有効性認知

問  題
 近年の英語教育では,テストが学習者に与える影響(波及効果)が注目を集めている。望ましい波及効果を生み出す上で,テストに対する学習者の認知が重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある(e.g., Suzuki & Sun, 2018)。中でもBaba(in press)は,英語テストに対する有効性認知に着目し,動機づけや学習方略との関連について検証している。その結果から,暗記テスト(e.g., 単語テスト)が英語力の向上に役立つという認知と,活用テスト(e.g., スピーキングテスト)が英語力の向上に役立つという認知が,内的調整を媒介して,メタ認知的方略と社会的方略を高めることを明らかにしている。この知見から,英語テストに対する有効性認知を高めることで,適応的な英語学習を促進できる可能性が示唆される。
 しかし,英語テストに対する学習者の有効性認知を高める方法については検証されていない。大学生のように一定の学習経験がある学習者の場合,英語テストに対する有効性認知について固定的な価値観を有している可能性が考えられる。こうした学習者には,テストを実施することのメリットについて一方的に説くのではなく「暗記テストは英語力を高める上で役に立たないのではないですか」など,学習者の有効性認知を揺さぶり,再考を促すような介入を行うことが必要である。
 こうした介入に関連するものに「再声化(revoicing)」がある(O’Connor & Michaels, 1996; 田島, 2006)。再声化とは,教員が学習者の主張を引用しつつ,その主張に対する理解の深化を行う対話へと誘導することを目的とした介入法である。本来,テストに対する有効性認知を高めることを目的とした方法ではないが,英語テストに関する価値観に対して再声化介入を行うことで,英語テストに対する価値観の深化が促され,英語テストに対する有効性認知を高めることができる可能性が考えられる。そこで本研究では,英語学習経験の多い学生を対象に,英語テストに対する有効性について再声化介入を行い,英語テストに対する有効性認知に与える影響について検討する。
方  法
調査時期 2018年11~12月
実験協力者 都内国立大学生・大学院生20名(男性11名,女性19名; Mage = 21.3,SD=1.30)。
実験者 都内国立大学博士前期課程に所属する大学院生(男性,24歳)
実験手順 まず実験手続について説明を行い,実験協力への同意を求めた。同意が得られた場合,質問紙への回答を求めた。質問紙では,英語テストに対する有効性認知尺度(Baba, in press),自律的学習動機尺度(西村・河村・孫, 2011),英語学習観尺度(赤松, 2017)について尋ねた。
 次に,学習者の英語力を高めるためにはどんな評価方法が必要だと思うか尋ね,自由記述形式で回答を求めた。その後,自由記述内容について,実験者と1対1によるディスカッションを行った。
 ディスカッション中,実験者による再声化介入を行った。例えば,暗記テストに対する有効性認知が低い実験協力者には,「暗記テストは英語力の向上に役立たないなら,授業から暗記テストを全て廃止していいか」など,実験協力者の暗記テストに対する有効性認知の深化を促す問いを与えた。
 ディスカッション終了後,質問紙への回答を求めた(内容は実験開始時のものと同じ)。実験参加に関する感想についても自由記述で回答を求めた。最後にデブリーフィングを実施した。以上の手続きの所要時間はおよそ60分であった。
結  果
 対応のあるt検定を行い,実験前後で尋ねた質問紙尺度得点の差について検討した。その結果,暗記テストに対する有効性認知は,実験後の方が有意に高くなることが明らかにされた(t = -2.33, p < .05, d = -.45)。活用テストに対する有効性認知は,実験後の方が高くなることが示唆された(t = -1.85, p < .10, d = -.53)。また同一化的調整も,実験後の方が有意に高くなることが明らかにされた(t = -4.47, p < .001, d = -.31)。
考  察
 本研究の目的は,再声化介入が英語テストに対する有効性認知に与える影響について検討することであった。再声化介入により,英語テストに対する有効性認知が高くなることが示唆された。本研究では統制群を設けていないため,再声化介入が英語テストに対する有効性認知を高めたかについては断言できないものの,本実験により,英語学習経験が豊富な学習者であっても,英語テストに対する有効性認知に深化をもたらすことができる可能性が示唆される。今後は,授業実践の中で有効性認知を高めることができるような手法を開発する必要がある。