日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG21] 看護系大学低学年生における学習上のバーンアウトと学業的援助要請の関連

熊谷たまき1, 小竹久実子#2, 藤村一美#3, 三宮有里#4 (1.大阪市立大学大学院, 2.奈良医科大学大学院, 3.愛媛大学大学院, 4.大阪市立大学大学院)

Keywords:バーンアウト、学業的援助要請、看護系大学

問題と目的
 看護学生を対象に実施した入学時から就職1年目までの縦断調査研究において,学習上のバーンアウトは,入学年次から学年が進むに従ってその割合が高くなること,さらに学生時に学習バーンアウトにあるものは就職1年目の離職意向が高く,また就業意欲が低く,知識の応用に乏しいことを明らかにしている(Rudman, 2012)。わが国における看護師の早期離職率に関しては,2010年以降わずかに減少傾向にあるものの,日本看護協会による「2017年病院看護実態調査」では,新卒者7.6%で近年5年間はほぼ横ばいの傾向が続いている(日本看護協会広報部,2018.5)。先述した看護基礎教育課程における学生の学習上のバーンアウト状態と就職後の離職の関連は,わが国においても看過できない課題である。
 看護系大学の教育カリキュラムは,1年生では学内で講義・演習による科目が主であるが,2年生以降は臨地実習が加わり,学年が進むにしたがって過密な学習スケジュールとなる。教員は効果的な教授方略の工夫や学習支援が必要であり,また学生には主体的・自律的に学習を進めて行くことができることが重要である。自律的に学習するためには,低学年から,学習状況をモニタリングし自己調整すること,また適時,他者に支援を求めることが効果的に学習をすすめて行く上で必要である。そこで,本研究は,看護系大学低学年生における学習上のバーンアウトと学業的援助要請との関連を検討し,学習支援に資する情報を得ることを目的とした。
方  法
調査対象 関東にある2校の看護系大学に在学する学生に,無記名自記式質問票を用いて調査を行った。調査は学生519名(1年生283名,2年生236名)に調査協力を依頼し,200名(1年生88名,2年生112名)から回答を得た。なお,調査は2015年7月から9月に実施した。
測定 1) 学習上のバーンアウトは先行研究を参考にthe Oldenburg Burnout Inventory(以下,OLBI)16項目を用いて測定した。OLBI日本語版の作成にあたっては尺度開発者に許可を得た上で,順翻訳から逆翻訳の順序で日本語版を作成した。2) 学業的援助要請は学業的援助要請尺度(野崎,2003)を用いて,自律的援助要請(以下,自律的要請),依存的援助要請(以下,依存的要請),要請回避を把握した。
解析 OLBI得点と学業的援助要請の学年による差はt検定により検討し,OLBI得点と各援助要請の相関関係は偏相関係数を算出した。
倫理的配慮
 本研究は順天堂大学医療看護学部研究等倫理委員会の承認を得て実施した。
結  果
 OLBI得点(range; 16〜64)は大学1年生では30.9 ± 5.4,2年生は32.0 ± 5.2であり学年による差はみられなかった(t = -1.4, p = .164)。学業的援助要請の自律的要請,依存的要請,要請回避の得点(range; 1〜5)は順に,1年生で3.50 ± 0.59,2.74 ± 0.69, 2.42 ± 0.80, 2年生で3.54 ± 0.62,2.72 ± 0.71, 2.50 ± 0.78,であった。なOLBI得点と自律的要請,依存的要請,要請回避との相関関係を偏相関係数でみた結果は,1年生で,r = - .273, r = .166, r = .003,であり,2年生ではr = -.030, r = .051, r = .237であった。
考  察
 本研究対象において,学習上のバーンアウトは1年生に比べて2年生で高くなっていた。学業上の援助要請に関しては学年による特徴的な違いはみられなかったが,学習上のバーンアウトと学業上の援助要請の関係においては,1年生で自律的援助要請が学習上のバーンアウトと負の関係を示したことに対し,2年生においては要請回避が学習バーンアウトと正の相関関係にあった。学年が上がるに従い学習課題が増えることがバーンアウト傾向を高め,学習行動も異なる特徴を示した結果と推察される。また,2年生に援助要請を回避することがバーンアウトに関連していたことは,学生の学習状況をとらえるとともに学習支援のあり方を検討する必要が示唆された。
付  記
 本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C)課題番号25463357, 17K12130)の助成を受けて実施されました。