[PG24] 女子短大生に対するグループワークプログラム実践の試み(7)
Keywords:グループワーク、社会的スキル、自己概念
問 題
日本経済団体連合会の調査(2014)によれば,企業が新卒採用時に重視する要素は11年連続で「コミュニケーション能力」である。また,厚生労働省(2007)は「若年者就職基礎能力」の中で意思疎通・協調性・自己表現力の必要性をあげるなど,大学におけるより具体的なコミュニケーション能力の育成が求められている。そこで高岡ら(2013;2014)は,大学生のコミュニケーション能力として重視されている社会的スキルを高めるためのプログラムを開発し,継続してその効果検証を行っている。臼井ら(2018)はプログラムを実施し,特にアサーションスキルの向上に有効であること,問題解決スキルに対しても一定の効果があることを明らかにした。
本研究では,高岡ら(2014)のプログラムを実施し,特にどのスキル向上に役立つのかをさらに検証すること,また,これまでの実践において「自分のことがよくわかるようになった」という感想がよく聞かれたことから自己概念の変化についても調査することを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生9名(平均年齢19.11歳,SD=0.60)がプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され(高岡ら,2014),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第8回は社会的スキル訓練,第9回中間演習,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を扱った。また,実生活への般化やスキル維持促進を狙って,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮(三田村ら,2014),②Problem Solving Inventory 邦訳版(PSI:丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版(FNE:笹川ら,2004),を使用した。また自己概念に関する調査(「私は」から始まる文を思いつくだけ記述する質問紙)も実施した。
測定時期:すべての尺度について介入前と中間演習後(第9回),介入後に測定を行った。
結 果
プログラム効果を検討するため,機能的アサーション尺度,PSI,FNE,自己概念の記述数を従属変数,時期(介入前,中間,介入後)を独立変数とする1要因分散分析を行った。その結果,どの尺度についても有意な時期の主効果が認められなかった(table1)。効果サイズとして介入前後のCohen’s dを算出したところ,機能的アサーションではd=.44,問題解決スキルではd=-.43,自己概念の記述数ではd=.53となり,中程度とされる効果サイズであった(竹内ら,2008)。
また,問題解決スキル訓練前後における解決法の案出数の増加について対応のあるt検定を実施したところ,有意傾向であった(t(8)=2.23,p<.10)。
考 察
有意差は認められなかったものの,機能的アサーション,問題解決スキルに中程度の効果サイズが認められたこと,解決法の案出数の増加傾向が認められたことから,一定の効果があったと考えられる。グループワーク中心のプログラム内で自分の考えや気持ちを表現し人に伝えることを繰り返し体験することでアサーティブな伝え方について学習できたこと,問題解決にあたっての手順など学習したことをホームワークによって般化を促したことが有効であった可能性が考えられる。
また,自己概念の記述数の増加傾向から,コミュニケーション能力の向上だけでなくアイデンティティ形成という点において有効に機能した可能性も示唆される。他者と質の良いコミュニケーションの機会が増えることは,自分自身についてのフィードバックを多く受けることに繋がり,自己概念が豊かになるのではないかと思われる。
今後の課題としてはサンプルサイズを十分に確保することがあげられる。また,2013年から継続的に実施しており,総括的な分析も必要であろう。
日本経済団体連合会の調査(2014)によれば,企業が新卒採用時に重視する要素は11年連続で「コミュニケーション能力」である。また,厚生労働省(2007)は「若年者就職基礎能力」の中で意思疎通・協調性・自己表現力の必要性をあげるなど,大学におけるより具体的なコミュニケーション能力の育成が求められている。そこで高岡ら(2013;2014)は,大学生のコミュニケーション能力として重視されている社会的スキルを高めるためのプログラムを開発し,継続してその効果検証を行っている。臼井ら(2018)はプログラムを実施し,特にアサーションスキルの向上に有効であること,問題解決スキルに対しても一定の効果があることを明らかにした。
本研究では,高岡ら(2014)のプログラムを実施し,特にどのスキル向上に役立つのかをさらに検証すること,また,これまでの実践において「自分のことがよくわかるようになった」という感想がよく聞かれたことから自己概念の変化についても調査することを目的とした。
方 法
対象者:女子大学生9名(平均年齢19.11歳,SD=0.60)がプログラムに参加した。
プログラムの概要:本プログラムは各180分,全15回で構成され(高岡ら,2014),X年9月~X+1年1月の講義時間内に実施した。第1回は心理教育を行い,第2回~第8回は社会的スキル訓練,第9回中間演習,第10回~第15回は問題解決スキル訓練を扱った。また,実生活への般化やスキル維持促進を狙って,毎回ホームワークを課した。
測定尺度:①機能的アサーション尺度;下位因子として課題達成,語用論的配慮(三田村ら,2014),②Problem Solving Inventory 邦訳版(PSI:丸山ら,1995),③Fear of Negative Evaluation Scale 短縮版(FNE:笹川ら,2004),を使用した。また自己概念に関する調査(「私は」から始まる文を思いつくだけ記述する質問紙)も実施した。
測定時期:すべての尺度について介入前と中間演習後(第9回),介入後に測定を行った。
結 果
プログラム効果を検討するため,機能的アサーション尺度,PSI,FNE,自己概念の記述数を従属変数,時期(介入前,中間,介入後)を独立変数とする1要因分散分析を行った。その結果,どの尺度についても有意な時期の主効果が認められなかった(table1)。効果サイズとして介入前後のCohen’s dを算出したところ,機能的アサーションではd=.44,問題解決スキルではd=-.43,自己概念の記述数ではd=.53となり,中程度とされる効果サイズであった(竹内ら,2008)。
また,問題解決スキル訓練前後における解決法の案出数の増加について対応のあるt検定を実施したところ,有意傾向であった(t(8)=2.23,p<.10)。
考 察
有意差は認められなかったものの,機能的アサーション,問題解決スキルに中程度の効果サイズが認められたこと,解決法の案出数の増加傾向が認められたことから,一定の効果があったと考えられる。グループワーク中心のプログラム内で自分の考えや気持ちを表現し人に伝えることを繰り返し体験することでアサーティブな伝え方について学習できたこと,問題解決にあたっての手順など学習したことをホームワークによって般化を促したことが有効であった可能性が考えられる。
また,自己概念の記述数の増加傾向から,コミュニケーション能力の向上だけでなくアイデンティティ形成という点において有効に機能した可能性も示唆される。他者と質の良いコミュニケーションの機会が増えることは,自分自身についてのフィードバックを多く受けることに繋がり,自己概念が豊かになるのではないかと思われる。
今後の課題としてはサンプルサイズを十分に確保することがあげられる。また,2013年から継続的に実施しており,総括的な分析も必要であろう。