[PG33] 教職科目履修生における職業への志向性
Keywords:教職科目履修生、職業選択、志向性
問題と目的
本研究では,開放制の教員養成課程を持つ大学の教職科目履修学生を対象に,対人援助という側面の強い教育職への興味が高い学生では人間関係への志向と職業決定との間にどのような関係が示されるかを検討することを目的とする。
方 法
参加者
開放制の教職課程を持つA市内の私立B大学で,教職科目の教育心理学を受講している文学部の学生104名を対象とした。(男子53名,女子51名; 2年生78名,3年生16名,4年生8名,5年生2名; 平均年齢20.2歳,SD1.4歳)。
質問紙の構成
1)職業専門性志向尺度
森田(2006)の調査1で作成された質問紙を使用した。32項目で構成されており,それぞれの職業について,6件法で評定を求めた。
2)職業決定尺度
下山(1986)の「職業未決定」尺度から「決定」尺度4項目を用いた。回答は3件法であった。
3)手続き
調査は2018年11月に実施された。教職科目の教育心理学の授業終了後の教室で,受講生に調査への協力を呼び掛けた。
結果と考察
職業専門性志向尺度
職業専門性志向尺度(森田,2006)の32項目を用いた因子分析(主因子法)を行い4因子を採用し,バリマックス回転を施した。第一因子は「知識・技術の習得と発展志向」,第二因子は「社会性志向」,第三因子は「自律性志向」,第四因子は「仕事仲間との連携志向」と命名した。各下位尺度における項目群の得点を合計したものを,職業専門性志向尺度の各下位尺度得点とした。信頼性係数αはいずれも .75以上と十分であった。
職業決定尺度
職業決定尺度の4項目の信頼性係数は.896であり,十分な信頼性が示された。そこで4項目の合計得点を職業決定尺度得点とした。
重回帰分析
職業専門性志向尺度の4つの下位尺度得点を説明変数として,職業決定尺度得点を目的変数とする重回帰分析を実行した。初期モデルを加法モデルとし,ステップワイズ増減法により情報基準BICを用いたモデル選択を行った結果,「職業決定=-0.11*社会性志向+0.10*自律性志向+0.41*仕事仲間との連携志向+1.44」を選出した。モデルR2は0.5133で有意だった(F (3,100) = 35.161, p = 0.0000, adjusted R2 = 0.4987)。社会的評価を望む人ほど,職業決定が進みにくいという結果が得られた。また標準化偏回帰係数を比べると,「仕事仲間との連携志向」が他の項目以上に強い影響を及ぼしていた(stb= .64)。これは,仕事を通じて人間関係を深め,仲間を得たいという学生の強い志向が反映された結果と考えられる。
モデル選択過程で「知識・技術の習得と発展志向」が除外されたが,これは,職業決定において学校で身につけた知識や技術が直接的には結びつかないという学生の考えを反映したと考えられる。
今後の課題
本研究の課題は,参加者の少なさと,学年が2回生から5回生まで分布していることである。今後対象者を増やすと共に,学年の違いによる影響を検討する必要があると考えられる。
引用文献
森田慎一郎 (2006).大学生における職業の専門性への志向:尺度の作成と医学部進学予定者の職業決定への影響の検討.発達心理学研究,17,252-262.
下山晴彦 (1986).大学生の職業未決定の研究.教育心理学研究,34,20-30.
本研究では,開放制の教員養成課程を持つ大学の教職科目履修学生を対象に,対人援助という側面の強い教育職への興味が高い学生では人間関係への志向と職業決定との間にどのような関係が示されるかを検討することを目的とする。
方 法
参加者
開放制の教職課程を持つA市内の私立B大学で,教職科目の教育心理学を受講している文学部の学生104名を対象とした。(男子53名,女子51名; 2年生78名,3年生16名,4年生8名,5年生2名; 平均年齢20.2歳,SD1.4歳)。
質問紙の構成
1)職業専門性志向尺度
森田(2006)の調査1で作成された質問紙を使用した。32項目で構成されており,それぞれの職業について,6件法で評定を求めた。
2)職業決定尺度
下山(1986)の「職業未決定」尺度から「決定」尺度4項目を用いた。回答は3件法であった。
3)手続き
調査は2018年11月に実施された。教職科目の教育心理学の授業終了後の教室で,受講生に調査への協力を呼び掛けた。
結果と考察
職業専門性志向尺度
職業専門性志向尺度(森田,2006)の32項目を用いた因子分析(主因子法)を行い4因子を採用し,バリマックス回転を施した。第一因子は「知識・技術の習得と発展志向」,第二因子は「社会性志向」,第三因子は「自律性志向」,第四因子は「仕事仲間との連携志向」と命名した。各下位尺度における項目群の得点を合計したものを,職業専門性志向尺度の各下位尺度得点とした。信頼性係数αはいずれも .75以上と十分であった。
職業決定尺度
職業決定尺度の4項目の信頼性係数は.896であり,十分な信頼性が示された。そこで4項目の合計得点を職業決定尺度得点とした。
重回帰分析
職業専門性志向尺度の4つの下位尺度得点を説明変数として,職業決定尺度得点を目的変数とする重回帰分析を実行した。初期モデルを加法モデルとし,ステップワイズ増減法により情報基準BICを用いたモデル選択を行った結果,「職業決定=-0.11*社会性志向+0.10*自律性志向+0.41*仕事仲間との連携志向+1.44」を選出した。モデルR2は0.5133で有意だった(F (3,100) = 35.161, p = 0.0000, adjusted R2 = 0.4987)。社会的評価を望む人ほど,職業決定が進みにくいという結果が得られた。また標準化偏回帰係数を比べると,「仕事仲間との連携志向」が他の項目以上に強い影響を及ぼしていた(stb= .64)。これは,仕事を通じて人間関係を深め,仲間を得たいという学生の強い志向が反映された結果と考えられる。
モデル選択過程で「知識・技術の習得と発展志向」が除外されたが,これは,職業決定において学校で身につけた知識や技術が直接的には結びつかないという学生の考えを反映したと考えられる。
今後の課題
本研究の課題は,参加者の少なさと,学年が2回生から5回生まで分布していることである。今後対象者を増やすと共に,学年の違いによる影響を検討する必要があると考えられる。
引用文献
森田慎一郎 (2006).大学生における職業の専門性への志向:尺度の作成と医学部進学予定者の職業決定への影響の検討.発達心理学研究,17,252-262.
下山晴彦 (1986).大学生の職業未決定の研究.教育心理学研究,34,20-30.