日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG36] 非第1志望の学生が大学受験をとらえ直す可能性についての検討

第1志望の学生との比較より

堀井順平 (広島大学)

Keywords:大学受験のとらえ方、非第1志望の学生

問題と目的
 「現時点で,自分の大学受験をどのようにとらえているか」を表す,大学受験のとらえ方が否定的であればキャリア選択自己効力感が低いことを堀井 (2017) は報告している。第1志望の大学に進学できなかった非第1志望の学生は,第1志望の学生と比較すると,大学受験を否定的にとらえやすいことが考えられる。このような学生の大学受験のとらえ方を肯定的なものに変えることが,その後のキャリア形成のためにも重要であろう。
 そこで本研究では,まず入学してあまり時間の経っていない1年次では,非第1志望の学生が第1志望の学生よりも,否定的な大学受験のとらえ方をしていることを確認する (目的1)。さらに入学して時間が経つにつれて,非第1志望の学生が大学受験をとらえ直す可能性の有無について検討する (目的2)。非第1志望の学生が大学生活の中で大学受験をとらえ直す可能性があるのであれば,非第1志望の学生において,2年生が1年生より大学受験のとらえ方の肯定的な側面の得点が高く,否定的な側面の得点が低いと予測される。
方  法
 堀井(2017)が2015年12月から2016年2月に実施した質問紙調査から得たデータと同一のデータを用いた。大学1,2年生259名(1年生111名,2年生148名;第1志望の学生182名,非第1志望の学生77名)を分析対象とした。分析には,大学受験のとらえ方尺度 (堀井,2017)を使用した。
結果と考察
 学年と第1志望か否かを独立変数,大学受験のとらえ方の5下位尺度 (「連続的なとらえ」「否定的態度」「受容的態度」「わりきり態度」「否定的認識」) を従属変数として,2要因分散分析を行ったところ,Table 1のとおりとなった。
 「否定的認識」について交互作用が有意であったため,単純主効果の検定を行ったところ,2年生において,第1志望か否かの単純主効果が有意となり(F(1,255)=26.64,p<.001),非第1志望の学生が第1志望の学生より得点が高かった。この結果より,入学してある程度時間の経った2年次でのみ,非第1志望の学生が第1志望の学生よりも否定的な大学受験のとらえ方をしていることが示された。よって,目的1は支持されなかった。
 また,「否定的認識」については,非第1志望の学生において,学年の単純主効果が有意となり (F(1,255)=4.87,p<.05),2年生が1年生より得点が高かった。さらに,「受容的態度」について交互作用が有意傾向であったため,単純主効果の検定を行ったところ,非第1志望の学生において,学年の単純主効果が有意となり(F(1,255)=7.04,p<.01),1年生が2年生より得点が高かった。これらの結果より,非第1志望の学生は,1年生から2年生にかけて大学受験を否定的にとらえるようになるが,大学受験をとらえ直す可能性は示されなかった。よって,目的2は支持されなかった。その理由について,本研究の結果からは明らかにできないものの,入学後の大学生活への適応が関与しているかもしれない。
 以上より,非第1志望の学生は,入学してあまり時間の経っていない1年次では,第1志望の学生と同様の大学受験のとらえ方をしているが,入学して時間が経つにつれ,第1志望の学生よりも大学受験を否定的にとらえるようになり,大学受験をとらえ直す可能性は示されなかった。今後,非第1志望の学生の大学受験の否定的なとらえ方を抑制する要因についての検討が必要であろう。