[PG39] Dark Triadが母子間での叱りの評価に及ぼす影響
Keywords:Dark Triad
阿部(2019; 日本心理学会学会発表)は,叱りに関する先行研究で用いられてきた項目を整理した上で因子分析を行い,叱りの評価次元が“関係志向”“加罰志向”“改善志向”の3因子構造であること,また,母親は子どもよりも,自分の叱りの関係志向と改善志向を高く評価しやすく,加罰志向を低く評価しやすいことを明らかにしている。このような認識の差異は母子それぞれの個人特性によっていっそう広がり,母子関係に悪影響を及ぼす可能性も考えられる。そこで本研究では母子間での叱りの認識に影響を及ぼす個人特性としてDark Triad(以降,DT)を取り上げる。DTは,反社会的な性格特性として知られる,マキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛傾向の3つの総称である(Paulhus & Williams, 2002)。DTは多様な行動との関連が示されてきているが(たとえばFurnham et al., 2013),子育てや母子関係との関連についてはまだ十分に検討されていない。阿部・太田(2014)は,教師からの叱りが中学生の援助要請態度に影響すること,そしてその影響過程は自己愛傾向によって異なることを明らかにしているが,自己愛傾向だけでなく,DTの他の二つも,叱り方やその受けとめ方に関連する可能性がある。
方 法
調査方法および調査対象者 2018年10月にWeb上で調査を実施した。調査会社(株式会社クロス・マーケティング)を通じてモニター登録者に調査依頼し,中学生(1年生男78名, 女73名, 2年生男73名, 女64名, 3年生男66名, 女63名)とその母親の,計417組の有効回答を得た。
質問項目 DT: 日本語版Dark Triad Dirty Dozen (田村他, 2015)を使用した。選択肢は“1.全くあてはまらない”から“5.非常にあてはまる”までの5件法である。マキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛傾向それぞれのα係数は,母親はα= .83,
.68, .80,子はα= .84, .75, .83であった。叱りの評価: ふだん,どのように子どもを叱るか(母親への質問),母親からどのように叱られるか(子どもへの質問)について,阿部(2019)の分析結果から得られた3因子29項目を使用した。選択肢は“1.あてはまらない”から“5.あてはまる”までの5件法である。関係志向,加罰志向,改善志向それぞれのα係数は,母親はα= .82, .87, .86,子はα= .85,
.89, .84であった。
結果と考察
DTが叱りの評価に及ぼす影響 構造方程式モデリングによるAPIM(Actor-Partner Interdependence model)を行った(Figure1)。なお,図では簡略化しているが,実際には母子それぞれのDTおよび叱り評価の各3因子をすべて同時に並列させ,その間に共分散も設定した上で分析を行った。
母子それぞれのDTから叱りの評価へのパス係数をTable1に示す。
母親のサイコパシーは母子それぞれの関係志向および改善志向と負の関連がみられ,母親の自己愛傾向は母子それぞれの改善志向と正の関連がみられた。また,子のサイコパシーは母子それぞれの加罰志向と正の関連がみられた。一方,母親のマキャベリアニズムは母親の関係志向と正の関連がみられたが,子の関係志向とは関連がみられず,子のサイコパシーは子の関係志向と負の関連がみられたが,母親の関係志向とは関連がみられなかった。以上より,母親のマキャベリアニズムの高さと,子どものサイコパシーの高さは叱りの関係志向の認識のずれを大きくすることが示唆された。
方 法
調査方法および調査対象者 2018年10月にWeb上で調査を実施した。調査会社(株式会社クロス・マーケティング)を通じてモニター登録者に調査依頼し,中学生(1年生男78名, 女73名, 2年生男73名, 女64名, 3年生男66名, 女63名)とその母親の,計417組の有効回答を得た。
質問項目 DT: 日本語版Dark Triad Dirty Dozen (田村他, 2015)を使用した。選択肢は“1.全くあてはまらない”から“5.非常にあてはまる”までの5件法である。マキャベリアニズム,サイコパシー,自己愛傾向それぞれのα係数は,母親はα= .83,
.68, .80,子はα= .84, .75, .83であった。叱りの評価: ふだん,どのように子どもを叱るか(母親への質問),母親からどのように叱られるか(子どもへの質問)について,阿部(2019)の分析結果から得られた3因子29項目を使用した。選択肢は“1.あてはまらない”から“5.あてはまる”までの5件法である。関係志向,加罰志向,改善志向それぞれのα係数は,母親はα= .82, .87, .86,子はα= .85,
.89, .84であった。
結果と考察
DTが叱りの評価に及ぼす影響 構造方程式モデリングによるAPIM(Actor-Partner Interdependence model)を行った(Figure1)。なお,図では簡略化しているが,実際には母子それぞれのDTおよび叱り評価の各3因子をすべて同時に並列させ,その間に共分散も設定した上で分析を行った。
母子それぞれのDTから叱りの評価へのパス係数をTable1に示す。
母親のサイコパシーは母子それぞれの関係志向および改善志向と負の関連がみられ,母親の自己愛傾向は母子それぞれの改善志向と正の関連がみられた。また,子のサイコパシーは母子それぞれの加罰志向と正の関連がみられた。一方,母親のマキャベリアニズムは母親の関係志向と正の関連がみられたが,子の関係志向とは関連がみられず,子のサイコパシーは子の関係志向と負の関連がみられたが,母親の関係志向とは関連がみられなかった。以上より,母親のマキャベリアニズムの高さと,子どものサイコパシーの高さは叱りの関係志向の認識のずれを大きくすることが示唆された。