[PG43] 中学生で東日本大震災を経験した青年が捉えた学校の支援に関する研究
中学校から大学・専門学校までの中長期の支援をふまえて
Keywords:子ども、支援、災害
問題と目的
災害後の子どもへの支援についての研究では,冨永(2014)や小林(2017)の研究のように,支援者側からの視点についての研究が多かった。しかし,今後支援を行っていくうえでは,支援を受けたことのある人たちに思いや考え,気持ちを聴き,それらを踏まえて今後の支援に反映していくことが必要であると考える。支援された子どもから支援を捉えた研究では,窪田ら(2017)が行ったような量的調査のみにとどまる。これらの調査では行われた支援や行って欲しい支援が明らかにされていた。しかし,支援に対してどのような感情を抱いていたか,長期的な支援を経験してきて現在どのように感じているかという振り返りなどはこれまでの研究では行われていない。そのため,インタビュー調査を行うことで,これまで研究が難しかった,時間に伴う支援への感情の変化や現在から当時を振り返って感じていることなど細やかな部分についても明らかにすることが出来るのではないかと考えた。そこで,本研究では,東日本大震災発生時に中学生であった大学生を対象とし,震災当時から今までに行われた支援について,その支援を受けた子どもの視点から当時どのように感じていたか,また現在どのように感じているかを分析し,災害後の時間の経過に伴い必要とされる支援に関して考察することを目的とする。
方 法
本研究は,東日本大震災から現在までの時間の流れに沿って検討を行っていく必要がある。そのため今回は,このようなプロセス的特性を持つ現象の分析に優れているM-GTAが適していると考えた。東日本大震災発生時にA県B市でC中学校2年生だった大学生,専門学生7名に半構造化面接を行い,面接過程は全てICレコーダーに録音した。分析の手順は,田村・石隈(2007)を参考とし,5つのステップで構成した(Table1)。発表について対象者の了承を受けている。
結果と考察
(1)中学校3年生時の支援について 震災から1か月が経過した後,中学3年生になったため,高校受験はどうなるのか説明してほしかったという≪進路への支援の要望≫があった。また,対象者は震災前に海外に興味を持ち始めていたが,震災後は何も考えることが出来なくなるという≪災害を経験したことによる短期的な考え方の変化≫について語っていた。葉養(2017)は東日本大震災後に仮設等居住者は元の自宅居住者と比較して大学進学の可能性に対する意識が低いこと明らかにしていた。しかし,高校進学はその後の進路にも影響を与えるため,災害時であっても十分に指導をしていく必要があると考えた。また,対象者は当時の支援を振り返って,震災後に様々な支援を受けて以降,社会の役に立ちたいという意識が芽生えたと述べている。これを肯定的な見方で捉えていた人がいた一方で,それによって視野を広く持って進路を考えられなかったという否定的な見方もあった。災害が起きた後の子どもへのキャリア教育に関する支援についてはこれまで研究されていないため災害後のキャリア教育についてさらに検討を行うべきであると考えた。(2)災害後の心理的支援 まず,対象者からは震災後にクラスが荒れ,特定の人をいじめるという行為が起きるという≪人間関係の不安定さ≫があげられた。次に,〈大きな被害を受けた級友への過度に気遣わない振る舞い〉をしていたり,級友からの関わり方に肯定感を持ったりする≪生徒同士での気遣い≫も述べられた。しかし,このような気遣いをする中でも生徒たちは自分の行動が級友を傷つけていないかを気にしていた。これまでは災害時の支援として,大きな被害を受けた生徒を中心としたカウンセリングなどの個別支援が必要であるとされているが,本調査では学級内での関係などに関する支援を求める意見を対象者が述べており,学級や学年単位といった大きな単位に対する中長期的な支援の必要性も明らかになった。
災害後の子どもへの支援についての研究では,冨永(2014)や小林(2017)の研究のように,支援者側からの視点についての研究が多かった。しかし,今後支援を行っていくうえでは,支援を受けたことのある人たちに思いや考え,気持ちを聴き,それらを踏まえて今後の支援に反映していくことが必要であると考える。支援された子どもから支援を捉えた研究では,窪田ら(2017)が行ったような量的調査のみにとどまる。これらの調査では行われた支援や行って欲しい支援が明らかにされていた。しかし,支援に対してどのような感情を抱いていたか,長期的な支援を経験してきて現在どのように感じているかという振り返りなどはこれまでの研究では行われていない。そのため,インタビュー調査を行うことで,これまで研究が難しかった,時間に伴う支援への感情の変化や現在から当時を振り返って感じていることなど細やかな部分についても明らかにすることが出来るのではないかと考えた。そこで,本研究では,東日本大震災発生時に中学生であった大学生を対象とし,震災当時から今までに行われた支援について,その支援を受けた子どもの視点から当時どのように感じていたか,また現在どのように感じているかを分析し,災害後の時間の経過に伴い必要とされる支援に関して考察することを目的とする。
方 法
本研究は,東日本大震災から現在までの時間の流れに沿って検討を行っていく必要がある。そのため今回は,このようなプロセス的特性を持つ現象の分析に優れているM-GTAが適していると考えた。東日本大震災発生時にA県B市でC中学校2年生だった大学生,専門学生7名に半構造化面接を行い,面接過程は全てICレコーダーに録音した。分析の手順は,田村・石隈(2007)を参考とし,5つのステップで構成した(Table1)。発表について対象者の了承を受けている。
結果と考察
(1)中学校3年生時の支援について 震災から1か月が経過した後,中学3年生になったため,高校受験はどうなるのか説明してほしかったという≪進路への支援の要望≫があった。また,対象者は震災前に海外に興味を持ち始めていたが,震災後は何も考えることが出来なくなるという≪災害を経験したことによる短期的な考え方の変化≫について語っていた。葉養(2017)は東日本大震災後に仮設等居住者は元の自宅居住者と比較して大学進学の可能性に対する意識が低いこと明らかにしていた。しかし,高校進学はその後の進路にも影響を与えるため,災害時であっても十分に指導をしていく必要があると考えた。また,対象者は当時の支援を振り返って,震災後に様々な支援を受けて以降,社会の役に立ちたいという意識が芽生えたと述べている。これを肯定的な見方で捉えていた人がいた一方で,それによって視野を広く持って進路を考えられなかったという否定的な見方もあった。災害が起きた後の子どもへのキャリア教育に関する支援についてはこれまで研究されていないため災害後のキャリア教育についてさらに検討を行うべきであると考えた。(2)災害後の心理的支援 まず,対象者からは震災後にクラスが荒れ,特定の人をいじめるという行為が起きるという≪人間関係の不安定さ≫があげられた。次に,〈大きな被害を受けた級友への過度に気遣わない振る舞い〉をしていたり,級友からの関わり方に肯定感を持ったりする≪生徒同士での気遣い≫も述べられた。しかし,このような気遣いをする中でも生徒たちは自分の行動が級友を傷つけていないかを気にしていた。これまでは災害時の支援として,大きな被害を受けた生徒を中心としたカウンセリングなどの個別支援が必要であるとされているが,本調査では学級内での関係などに関する支援を求める意見を対象者が述べており,学級や学年単位といった大きな単位に対する中長期的な支援の必要性も明らかになった。