[PG47] Relative Autonomy Indexによる登校への動機づけの検討
(2)中学生について
Keywords:登校への動機づけ
問題と目的
先に報告した通り,小学生ではRAI(Relative Autonomy Index)を用いた視点から登校への動機づけを検討したところ,RAIが高い者の方が学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低いという結果が得られた。また,RAIの程度によって,不登校傾向の増減に関与する学校生活は異なることが示された。このように,小学生においてはRAIを用いた視点から登校への動機づけを検討することの有用性が示唆されたが,中学生についてはいまだ検討されていない。そこで本研究では,中学生の登校への動機づけをRAIの観点から検討し,学校生活や不登校傾向との関連を検証することを目的とする。
方 法
調査対象 調査対象はA県内の中学校2校の中学生1~3年生706名(1年生男子103名,1年生女子120名,2年生男子124名,2年生女子118名,3年生男子123名,3年生女子118名)であった。
調査内容 (1)登校への動機づけ尺度(五十嵐・茅野, 2018a):「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子から成る。4件法。この尺度をもとに,岡田(2005)などが示す計算式((− 2×外的理由)+(− 1×取入れ的理由)+(1×同一化的理由)+(2×内発的理由))を用いて,RAIを算出する。取り得る値の範囲は,-9~+9である。(2)学校生活尺度(大久保, 2010):「教師との関係」「友人との関係」「学業」の3因子から成る。4件法。(3)不登校傾向尺度(五十嵐, 2015):「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の3因子から成る。4件法。
調査時期および実施方法 2016年10月上旬~12月中旬に,学級内において,調査協力者である担任が無記名で一斉に実施し,その場で回答・回収された。
結果と考察
1.RAIによる群分け
まず,対象者のRAIを算出し,それをもとに対象者を群分けすることとした。群分けにあたっては,まずRAIが負の値である者を抽出した。その後,RAIの正の値の中央値である4.5を基準に対象者をさらに群分けした。その結果,RAIが負の値である者(外的動機づけ傾向群)が96名,RAIが0.0~4.5である者(内的動機づけ傾向低群)が269名,RAIが4.5~9.0である者(内的動機づけ傾向高群)が341名であった。
2.RAI群による学校生活および不登校傾向の違い
RAI群によって学校生活および不登校傾向に違いがあるかを明らかにするため,RAI群を要因とする1要因分散分析を実施した。その結果,RAIが高い群ほど学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低い(F[2/705]=44.30~243.08, p<.001)ことが明らかとなった。
3.RAI群による学校生活と不登校傾向との関連の違い
RAI群によって学校生活と不登校傾向との関連性に違いがあるかを明らかにするため,RAI群別に学校生活と不登校傾向とのピアソンの積率相関係数を算出した(Table 1)。その結果,友人との関係は,RAIの程度に関わらず,「全般的な登校意欲の喪失傾向」「心理的な不調傾向」を低め,一方で「享楽的な活動の優先傾向」を高めることが明らかとなった。さらに,学業はRAIが低い場合には不登校傾向に関与せず,内的動機づけ傾向低群および内的動機づけ傾向高群において,「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的な活動の優先傾向」を低めることが示された。また,RAIが低い場合には,教師との関係が「享楽的活動の優先傾向」を低めるが,同時に「心理的な不調傾向」を高めることも示された。
先に報告した通り,小学生ではRAI(Relative Autonomy Index)を用いた視点から登校への動機づけを検討したところ,RAIが高い者の方が学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低いという結果が得られた。また,RAIの程度によって,不登校傾向の増減に関与する学校生活は異なることが示された。このように,小学生においてはRAIを用いた視点から登校への動機づけを検討することの有用性が示唆されたが,中学生についてはいまだ検討されていない。そこで本研究では,中学生の登校への動機づけをRAIの観点から検討し,学校生活や不登校傾向との関連を検証することを目的とする。
方 法
調査対象 調査対象はA県内の中学校2校の中学生1~3年生706名(1年生男子103名,1年生女子120名,2年生男子124名,2年生女子118名,3年生男子123名,3年生女子118名)であった。
調査内容 (1)登校への動機づけ尺度(五十嵐・茅野, 2018a):「外的理由」「取入れ的理由」「同一化的理由」「内発的理由」の4因子から成る。4件法。この尺度をもとに,岡田(2005)などが示す計算式((− 2×外的理由)+(− 1×取入れ的理由)+(1×同一化的理由)+(2×内発的理由))を用いて,RAIを算出する。取り得る値の範囲は,-9~+9である。(2)学校生活尺度(大久保, 2010):「教師との関係」「友人との関係」「学業」の3因子から成る。4件法。(3)不登校傾向尺度(五十嵐, 2015):「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的活動の優先傾向」「心理的な不調傾向」の3因子から成る。4件法。
調査時期および実施方法 2016年10月上旬~12月中旬に,学級内において,調査協力者である担任が無記名で一斉に実施し,その場で回答・回収された。
結果と考察
1.RAIによる群分け
まず,対象者のRAIを算出し,それをもとに対象者を群分けすることとした。群分けにあたっては,まずRAIが負の値である者を抽出した。その後,RAIの正の値の中央値である4.5を基準に対象者をさらに群分けした。その結果,RAIが負の値である者(外的動機づけ傾向群)が96名,RAIが0.0~4.5である者(内的動機づけ傾向低群)が269名,RAIが4.5~9.0である者(内的動機づけ傾向高群)が341名であった。
2.RAI群による学校生活および不登校傾向の違い
RAI群によって学校生活および不登校傾向に違いがあるかを明らかにするため,RAI群を要因とする1要因分散分析を実施した。その結果,RAIが高い群ほど学校生活を良好に捉え,不登校傾向が低い(F[2/705]=44.30~243.08, p<.001)ことが明らかとなった。
3.RAI群による学校生活と不登校傾向との関連の違い
RAI群によって学校生活と不登校傾向との関連性に違いがあるかを明らかにするため,RAI群別に学校生活と不登校傾向とのピアソンの積率相関係数を算出した(Table 1)。その結果,友人との関係は,RAIの程度に関わらず,「全般的な登校意欲の喪失傾向」「心理的な不調傾向」を低め,一方で「享楽的な活動の優先傾向」を高めることが明らかとなった。さらに,学業はRAIが低い場合には不登校傾向に関与せず,内的動機づけ傾向低群および内的動機づけ傾向高群において,「全般的な登校意欲の喪失傾向」「享楽的な活動の優先傾向」を低めることが示された。また,RAIが低い場合には,教師との関係が「享楽的活動の優先傾向」を低めるが,同時に「心理的な不調傾向」を高めることも示された。