日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG52] ”気になる子”の学級集団認知とQuality of Lifeの関連

Person Centered Approachの視点から

山根倫也1, 押江隆#2 (1.関西大学大学院, 2.山口大学)

Keywords:気になる子、QOL、Person Centered Approach

問  題
 通常の学級において,医師による診断はないが発達障害と同様の問題行動の見られる児童生徒は“気になる子”と呼ばれ,特別な支援や配慮について明確な規定もないまま教育的対応の難しさのみが問題とされている(韓・太田・權,2016)。これまでの研究では,発達障害児や“気になる子”への支援を学級集団という他の子どもとの相互作用がある環境の中で行うことの重要性が示唆されている。ところで,村山 (2014) はエンカウンターグループの新しい方法としてPCA (Person-Centered Approach) グループを提唱しており,山根 (2019) は,学級内のPerson Centeredな風土が児童の学校適応感に寄与することを示している。そこで,本研究では“気になる子”を,“対人的相互作用や意思伝達に課題を呈しやすい自閉症スペクトラム障害の診断基準について教員側の主観的視点で評価し,その傾向が高いと判断される児童”と定義し,“気になる子”とそうでない児童のPerson Centeredな学級集団の認知とQOLの関連について検討することを目的とする。
方  法
 小学校2校の第5,6年生の児童256名 (男性118名,女性138名) を調査対象とした。調査にあたり,事前に各学校の学校長に調査を依頼し,職員会議を経て調査の承諾を受けた。学校長と教頭を含む管理職と教員数名に質問紙を確認してもらい,教員と児童に対して適切な質問,実施可能な分量であるかの確認を受け,一部の質問項目については,協議の上で修正した。倫理的配慮として,教員に対し本調査の質問紙は児童の障害や特徴を診断または特定するものでないこと,回答は任意であり回答しない自由があること,得られたデータは学年とクラス,出席番号を用いて前期と後期の整合を行うことを説明した。児童に対して,担任教諭による説明と質問紙のフェイスシートで,回答は任意であり回答しない自由があること,記名する必要がなく,調査者に誰が回答したか分からないようになっていることを教示した。質問紙は筆者が各学校の学校長に手渡し,学級担任の判断で適宜実施された。その後,筆者が学校を訪問し,質問紙を回収した。
 各学級担任は実態把握のためのチェックリスト (山口県教育委員会,2006) を基に作成された「気になる子のチェックリスト」を用いて,学級の児童を評価した。また児童はPCAグループ的学級集団形成尺度 (白井,2010) を基に作成された尺度と小学生版QOL尺度 (古荘ら,2014) を基に作成された尺度の2尺度について,前期 (2017年7-8月) と後期(2017年12月) にそれぞれ回答した。
結  果
 まず「気になる子のチェックリスト」について探索的因子分析を用いて,1次元性を確認した。次にベイズ推定法を用いて項目反応理論の一般化部分採点モデルによる分析を行い,児童の「気になる傾向」の値を抽出した。抽出した「気になる傾向」の値を変数としてward法による階層的クラスタ分析を行い,児童を「健常群」と「気になる子群」の2クラスタに分類した。次に,前期と後期の「小学生版QOL尺度」について探索的因子分析を用いて,1次元性を確認した。次にベイズ推定法を用いて項目反応理論の一般化部分採点モデルによる分析を行い,児童の「QOL」の値を抽出した。そして,PCAグループ的学級集団認知尺度について検証的因子分析を行い,「バラバラで一緒」因子と「自分らしさの肯定」因子を抽出した。さらに「健常群」と「気になる子群」において,ベイズ推定法の構造方程式モデリングによる多母集団同時分析を実施した。変数として,PCAグループ的学級集団認知尺度の下位2因子(「バラバラで一緒のつながり」,「自分らしさの肯定」)と,前期QOL,後期QOLの値を用いた。結果は当日提示する。
考  察
 本研究の結果から,「健常群」では前期のクラスメートとのつながりが後期のQOLに正の影響を及ぼすのに対し,「気になる子群」では,前期のクラスメートとのつながりが後期のQOLに負の影響を及ぼし,前期の自分らしさの肯定が後期のQOLに正の影響を及ぼすことが示された。これらのことから,クラスメートとのつながりや学級への所属感は,多くの児童にとってQOLに寄与する一方で,一部の児童にとっては負担になってしまう可能性が示された。
引用文献 (一部省略)
村山正治 (2014).「自分らしさ」を認めるPCAグループ入門 新しいエンカウンターグループ法 創元社