[PG53] 学級集団と児童理解のためのアセスメントツール(C-SCT)の開発
Keywords:学級経営、学級集団と児童理解、文章完成法テスト
問題と目的
学級集団や児童の様相を調べる際に使われてきた多くの質問紙調査では, 集団や個人の変容を連続的に捉えることは難しく,さらに実施や分析に時間がかかるため,短い期間で何度も調査するには不向きであると考えられてきた。そこで本研究では,このような質問紙による調査法を補完するべく,学級集団版文章完成法テスト(Classroom- Sentence Completion Test)を開発し,これを用いて学級集団のアセスメントを行い,その有用性について検討を行うことを目的とした。
方 法
調査対象:X県公立A小学校2年生1クラス22名(男子11名・女子11名)。
調査期間:2018年4月から2019年3月にかけて1年間の縦断的調査を行った。1週間に1度,学級担任により実施された。
調査手続き:品田(2016)及び品田・高橋(2017)で示されたC-SCTの作成手順は以下の通りである。
①学級集団の変容を捉える視点を定めるために,「担任教師が望ましいと考える学級の様相(学級を捉える教師の視点)」について調査を行った。因子分析(主因子法,プロマックス回転)にかけ,固有値が1.0以上のものを5因子抽出し,それぞれ「一体感」「信頼感」「自己表現」「活動意欲」「協働性」と命名した。②上記で示された5つの視点から文章完成法テストの刺激文を作成した。作成の際には各視点と刺激文を組み合わせるテストを実施し,一致率は十分であることを確認した。
③分析の際には松井(2009)を参考に児童の記述内容を「肯定的表現」,「否定的表現」,「両価的表現」,「無回答,その他」の4観点で分け,集団全体の変容と児童の記述内容の変容を追った。表現の分類の際には判定の一致率を求め,妥当性は十分であることを確認した。
結果と考察
(1)集団全体の把握 集団全体における変容をFigure 1のように表した。視点ごとの児童の記述内容の変化から,学級集団全体の変容を連続的に見ることができる。変容について数値化して可視化できるため,時期に応じた集団指導の評価やその後につながる手立てを検討する判断材料になると考えられる。
(2) 児童の把握 Table 1は児童の記述内容の変化を表したものである。比較的容易に児童一人一人の変容を把握することができるため,児童に対する個別的なアセスメントを行うことができる。また,いじめなど児童個人や学級集団に生じる可能性のある問題に対して,担任教師は早期に把握することができると考えられる。
(3) C-SCTの有用性の検討 ①従来の質問紙調査よりも教師や児童への負担が少なく,短時間で行うことが可能である。②各視点をもとに,個人と集団という2つの側面から,幅広く学級の状態像を捉えることができる。③表現ごとに分類することで,肯定面,否定面など多角的に学級の現状を知ることができる。④記述内容を評価しながら,学級集団の変容を連続的に把握することができる。
引用文献
品田(2016)「学級集団と児童理解のためのアセスメント方法の試案」上越教育大学大学院修士論文
品田・高橋(2017)「学級集団と児童理解のためのアセスメント方法の試案」日本教育心理学会第 59 回総会発表論文集
学級集団や児童の様相を調べる際に使われてきた多くの質問紙調査では, 集団や個人の変容を連続的に捉えることは難しく,さらに実施や分析に時間がかかるため,短い期間で何度も調査するには不向きであると考えられてきた。そこで本研究では,このような質問紙による調査法を補完するべく,学級集団版文章完成法テスト(Classroom- Sentence Completion Test)を開発し,これを用いて学級集団のアセスメントを行い,その有用性について検討を行うことを目的とした。
方 法
調査対象:X県公立A小学校2年生1クラス22名(男子11名・女子11名)。
調査期間:2018年4月から2019年3月にかけて1年間の縦断的調査を行った。1週間に1度,学級担任により実施された。
調査手続き:品田(2016)及び品田・高橋(2017)で示されたC-SCTの作成手順は以下の通りである。
①学級集団の変容を捉える視点を定めるために,「担任教師が望ましいと考える学級の様相(学級を捉える教師の視点)」について調査を行った。因子分析(主因子法,プロマックス回転)にかけ,固有値が1.0以上のものを5因子抽出し,それぞれ「一体感」「信頼感」「自己表現」「活動意欲」「協働性」と命名した。②上記で示された5つの視点から文章完成法テストの刺激文を作成した。作成の際には各視点と刺激文を組み合わせるテストを実施し,一致率は十分であることを確認した。
③分析の際には松井(2009)を参考に児童の記述内容を「肯定的表現」,「否定的表現」,「両価的表現」,「無回答,その他」の4観点で分け,集団全体の変容と児童の記述内容の変容を追った。表現の分類の際には判定の一致率を求め,妥当性は十分であることを確認した。
結果と考察
(1)集団全体の把握 集団全体における変容をFigure 1のように表した。視点ごとの児童の記述内容の変化から,学級集団全体の変容を連続的に見ることができる。変容について数値化して可視化できるため,時期に応じた集団指導の評価やその後につながる手立てを検討する判断材料になると考えられる。
(2) 児童の把握 Table 1は児童の記述内容の変化を表したものである。比較的容易に児童一人一人の変容を把握することができるため,児童に対する個別的なアセスメントを行うことができる。また,いじめなど児童個人や学級集団に生じる可能性のある問題に対して,担任教師は早期に把握することができると考えられる。
(3) C-SCTの有用性の検討 ①従来の質問紙調査よりも教師や児童への負担が少なく,短時間で行うことが可能である。②各視点をもとに,個人と集団という2つの側面から,幅広く学級の状態像を捉えることができる。③表現ごとに分類することで,肯定面,否定面など多角的に学級の現状を知ることができる。④記述内容を評価しながら,学級集団の変容を連続的に把握することができる。
引用文献
品田(2016)「学級集団と児童理解のためのアセスメント方法の試案」上越教育大学大学院修士論文
品田・高橋(2017)「学級集団と児童理解のためのアセスメント方法の試案」日本教育心理学会第 59 回総会発表論文集