日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PG] ポスター発表 PG(01-59)

Mon. Sep 16, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PG54] 合唱コンクールによる学級集団の変容に関する一考察

丸山貴則1, 高橋知己2 (1.上越教育大学大学院, 2.上越教育大学)

Keywords:合唱コンクール、集団教育、学級経営

問題と目的
 学校行事はコミュニケーション能力や生徒の自主性を高めるために有効である。数ある学校行事の中でも本研究では,合唱コンクールに注目する。高橋(2018)によると,合唱コンクールは教師生徒関係の向上や集団内の関係づくりにおいて重要であると指摘している。学校行事は学級経営の側面において重要な役割を担っていると考えられる。本研究では,合唱コンクールにより対人関係に及ぼす影響を明らかにすることが目的である。
方  法
調査対象:A県公立B中学校に通う486名 (中学1年生132名,中学2年生176名,中学3年生178名)。
調査時期:合唱コンクール後の平成XX年10月下旬に実施。
調査手続き:「合唱コンクールに取り組むうえで,学級内で印象に残ったことはありましたか。思い出せる範囲で具体的に記入してください。」と教示文し,自由記述による回答を求めた。分析には,田中 (2014) に依拠し,KH CoderとRを使用した。
結  果
 本研究で使用した文章は601文,総抽出語は13,024語であった。分析結果は,KH Coderによる共起ネットワーク分析とRによる共起ネットワークの媒介中心性を計算し得点を抽出した。共起ネットワークを設定する際に,ネットワークの煩雑を防ぐため,今回は名詞のみに注目した。媒介中心性得点においては,「最初」「印象」「気持ち」が上位に見られた (Table 1)。
考  察
本研究の結果,中学生は合唱コンクールを行うことで,「取り組む前の心情」「取り組む中で生まれる人間関係の変 化」を感じていることが示唆された (Figure 1)。「最初」から「練習」や「合唱」につながっていることから,上手く行えるかどうか不安を感じていることが考えられる。「印象」から「クラス」「全員」とつながっていることから,活動していく中で,他者に対する見方が変容し,集団内の関係性に変化が出ていることを捉えていると示唆される。また活動が終盤になるにつれ,生徒自身の気持ちや学級の雰囲気が変化していることも考えられる。合唱コンクールを実施することにより,生徒同士の関係性が一時的に広がり,普段関わることのない他者の新たな一面を知る機会が得られることが示唆される。教師が指導に当たる際に,活動に取り組む前にどう指導を行うべきか重要であると考える。集団活動の良さを生徒に伝えること,一人一人が合唱コンクールに関与できる環境づくりを活動前に行うことにより,学級集団づくりを有効にすることが言えよう。