日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH03] 中学生の登校回避感情に与える要因の検討

学校の規模・学年とストレッサー,及びソーシャルサポート

陳燕群1, 島義弘2 (1.鹿児島大学大学院, 2.鹿児島大学)

Keywords:登校回避感情、ストレッサー、ソーシャルサポート

目  的
 森田(1991)は欠席願望を持ちつつ登校する児童生徒を「グレイゾーン」と名付け,その生徒は容易に不登校に陥る。通学しているものの学校に通いたくないと感じることがある「不登校傾向」の中学生が約33万人に上るとの推計結果がある(日本財団,2018)。今登校している子供達がその感情にうまく対処できなくなったら,不登校に陥るリスクが高まると考えている(森田,1991)。
 そのため,本研究では不登校になる前の中学生が持っている「登校回避感情」を研究する。中学生を対象としたアンケートを行い,登校回避感情を低減・緩和するソーシャルサポート要因と増悪させるようなストレス要因(学業,先生との関係,友人関係,テスト不安)との関連性,ひいては不登校を予防するための方策を探すことを目的にした。
方  法
調査協力者:大規模中学校Aの生徒820名(男性408名,女子412名),中規模中学校Bの生徒390名(男性194名,女性194名,不明2名),小規模中学校Cの生徒37名(男性21名,女性16名)を対象とした。
質問紙構成:(1)登校回避感情尺度(渡辺・小石,2000) 回答は1(当てはまる)から5(全然当てはまらない)までの5件法で求めた。(2)中学生用ストレッサー尺度簡易版(岡安・高山,1999) 回答は0(全然なかった)から3(よくあった)までの4件法で求めた。(3)テスト不安尺度 Sarason(1972)が作成したTest Anxiety Scaleの邦訳版を用いた。回答は0(いいえ)と1(はい)の2件法で求めた。(4)中学生用ソーシャルサポート尺度簡易版(岡安・高山,1999) 4つのサポート源(お父さん,お母さん,先生,友達)のそれぞれについてのソーシャルサポートの期待を1(違うと思う)から4(きっとそうだと思う)までの4件法で回答を求めた。
結果および考察
 登校回避感情に与える学校の規模と学年の影響を分析するために,分散分析を行った。その結果,学校の主効果が有意であった。(F(2,1221)=13.706,p<.001)。多重比較の結果,学校の規模が大きいほど登校回避感情が強くなることが示された。これは学校で友人関係,教師との関係づくりなどの問題が多くなる可能性があるのだと考えられる。各因子の平均値と標準偏差をTable1に示した。
 ストレッサーとソーシャルサポートが登校回避感情に与える影響を検討するために,重回帰分析を行った(R2=.445,R2=.328,R2=.298)。学校への反発感傾向と登校嫌悪感傾向は学業(β=.115,β=.099),先生との関係(β=.256,β=.13)の間に正の有意な影響があり,学業,先生との関係のストレス得点が高いほど登校回避感情が強くなる傾向が見られた。友人関係における孤立感傾向と友人関係(β=.206),登校嫌悪感傾向とテスト不安(β=.108)の間に有意な影響があり,友人関係とテスト不安の得点が高いほど登校回避感情得点が高い。そのため,ストレッサーが多い児童・生徒の登校回避感情が強い可能性があると考えられる。また,登校回避感情の3因子とも友達からのソーシャルサポートが高いほど得点が低かった。(β=-.079,β=-.447,β=-.208)。学校への反発感傾向はお母さん(β=-.09)と先生(β=-.37)からのソーシャルサポートと負の有意な影響があり,登校嫌悪感傾向と先生からのソーシャルサポートと負の有意な影響が見られた(β=-.114)。ソーシャルサポートを受けると登校回避感情が低くなることを明らかにした。そのことから,児童・生徒のソーシャルサポートの重要性を示唆した。