日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH10] 中学生・大学生における“自認するキャラ”の種類と承認欲求・評価懸念との関連

村井史香1, 太田正義2, 加藤弘通3 (1.北海道大学病院, 2.常葉大学, 3.北海道大学)

Keywords:キャラ、承認欲求、評価懸念

問題と目的
 現代青年の友人関係をとらえる一視点として“キャラ”という概念が注目されている(瀬沼, 2007;土井,2009)。キャラとは,「小集団内での個人に割り振られた役割や,関係依存的な仮の自分らしさ」である(千島・村上,2015)。キャラを介した友人関係については,他者から付与されたキャラについて,友人関係満足度や心理的適応との関連などが検討されてきた(千島・村上,2016)。
 本研究では,当人が自認するキャラに焦点を当て,有するキャラの種類と承認欲求,評価懸念との関連について検討を行った。さらに,キャラの種類によって,自分のキャラをどのように受け止めるか,及びキャラに沿った振る舞いに差が見られるかを検討した。なお,千島・村上(2016)において,学校段階によってキャラの機能に差異があることが示されており,本研究においても中学生と大学生の比較による検討を行った。
方  法
調査協力者 中学生434名(男性221名,女性213名),大学生219名(男性120名,女性99名)の計653名。
調査内容 (1)デモグラフィック変数:年齢,性別,学年。(2)現在の友人関係におけるキャラの有無と種類。(3)キャラの特徴:(2)で回答したキャラについて自由記述形式。(4)キャラの受け止め方:千島・村上(2016)で作成されたキャラの受け止め方尺度16項目,5件法の表現を一部改変して使用。(5)キャラ行動:千島・村上(2016) によるキャラ行動尺度3項目,5件法。(6)承認欲求:菅原(1986)による賞賛獲得欲求・拒否回避欲求尺度9項目,5件法。(7)評価懸念 :山本・田上(2007)による評価懸念尺度10項目,5件法。
結果と考察
学校段階別の“自認するキャラ”の種類と割合
 キャラの有無について,学校段階別に集計し,カイ2乗検定を行った。その結果,有意な差が見られ(χ2= 6.45, p< .05, V= .099),中学生では,キャラを持たない者の割合が高く,大学生では,キャラを持つ者の割合が高いことが示された。
 続いて,自認するキャラの種類については336個の記述が得られ,心理学を専攻する大学院生4名によってKJ法による分類を行った。その結果,他者から付与されたキャラの種類について分類を行った千島・村上(2014)と同様, “お笑い(28.3%)”,“真面目(18.8%)”,“天然(16.1%)”,“変人(13.1%)”,“いじられ(12.8%)”,“ツッコミ(11.0%)”の6カテゴリが得られた。この6カテゴリを学校段階別に集計し,カイ2乗検定を行ったところ有意であり(χ2= 25.61, p< .001, V= .28),残差分析を行った。その結果,中学生で“お笑い(キャラを有する中学生のうち33.7%)”,“天然(20.2%)”の割合が高く,大学生で“真面目(キャラを有する大学生のうち28.1%)”,“変人(18.0%)”の割合が高いことが明らかとなった。
“自認するキャラ”の種類ごとの得点の比較
 キャラの6種類を要因とし,キャラの受け止め方,キャラ行動,承認欲求(賞賛獲得欲求・拒否回避欲求),評価懸念を従属変数とした,一要因分散分析を行った(Figure 1)。その結果,賞賛獲得欲求,キャラの積極的受容,拒否,キャラ行動において有意差が示された。多重比較を行ったところ,賞賛獲得欲求については,“天然”よりも“変人”の方が高いことが示された。キャラの受け止め方については,キャラの積極的受容において“天然”“いじられ”“真面目”よりも“お笑い”が高く,“変人”よりも“真面目”が高かった。また,キャラ行動は,“天然”よりも“変人”“お笑い”が高いことが示された。
 以上の結果から,学校段階が上がると,自認するキャラを有する者が増え,中学生では場の雰囲気を盛り上げる“お笑いキャラ”が多い一方で,大学生では自分自身の個性を周りに強く打ち出す“変人キャラ”が多いと考えられた。さらに,“変人”は賞賛獲得欲求が高く,キャラ行動をとる傾向が強いことから,周囲に存在感をアピールする目的でキャラを利用している可能性が示された。