日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH13] 看護学生に対するコーチングを活かした授業の効果(1)

レジリエンスとコーチングに対する自己効力感の変化に着目して

西垣悦代1, 鳥羽きよ子2, 藤村あきほ3 (1.関西医科大学, 2.ハートランドしぎさん看護専門学校, 3.関西医科大学)

Keywords:レジリエンス、自己効力感、コーチング

背景と目的
 「人間関係論」は,看護教育における専門基礎科目として位置づけられている。その授業目的は,自己理解を深め,他者とのコミュニケーションにおける知識・技能を高めることによって,将来,患者やその家族,医療チーム内でよりよい人間関係を築くことができるようになることである。
 筆者らは,コーチングがこの目的に合致していると考え,授業に取り入れてきた。コーチングでは,相手を承認し,価値評価や否定することなく傾聴することで他者との間に信頼を築き,その技法には,質問によって気づきを与えたり,行動を促すスキルが含まれているからである。筆者らはコーチングを活用することで,学生の自己理解,自己肯定感,コミュニケーション能力などに肯定的変化が見られることを,これまで明らかにしてきた(鳥羽他, 2018)。
 本研究では,コーチングを取り入れた授業の前後で,学生のコーチングに対する自己効力感およびレジリエンスに変化が見られるかどうかの検証を行った。
方  法
 対象は人間関係論を受講している看護専門学校の1年生,38名。学生をランダムなペアに分け,全体でのワーク,グループワーク,ピア・コーチングを計10回の授業でおこなった。
 コーチングに対する自己効力感の指標として,コーチングコンピテンシー自己効力感尺度改良版;CCSES-R(西垣, 2015)を, レジリエンスについては,コナー・デビッドソン回復力尺度(CD-RISC)を授業初回および最終回に実施した。
結  果
 授業前後のCCSES-Rの各項目の平均値をFigure 1に示した。CCSES-Rは24項目,6段階の自己評価尺度である。すべての項目において,授業後の方が高い値となった。またt検定の結果,全ての項目において,授業前・後の平均の差が,0.1%水準で有意であった。中でも特に差が大きかった項目は「相手に状況やその人自身についての気づき(新しい発見)を与える」「会話の中で感じた直観を相手にフィードバックする」であった。
 授業前後のCD-RISCの平均値をFigure 2に示した。授業後の平均値は66.77(SD = 15.81)であり,授業前(平均値 48.00,SD = 14.69)と比較して高かった。
考  察
 ピア・コーチングを経験することにより,学生のコーチングに対する自己効力感およびレジリエンスが上昇することが明らかとなった。ピア・コーチングは学生にとって自己成長のきっかけになると考えられる。今後は効果の持続性や,比較対象群を用いての検証が必要であると考える。