日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH31] 教師が理想とする学級雰囲気に基づく学級内掲示物の分類

高橋陸斗 (北海道大学)

Keywords:学習環境、学級雰囲気、掲示物

問題と目的
 大崎・吉村(2013)は,教師が学習意欲を向上させるために掲示物を工夫することには,児童の自主性を育てる意図があるとした。しかし,掲示物に関する調査・研究では,掲示物の分類について研究毎に異なる基準で行われているため,学級内掲示物に関して量的研究を行うにあたって明確な分類基準が必要だと考える。
 本研究では,教師が期待する児童の姿と,教室内掲示物の効果に対する認識を分析することから,教室内掲示物を教師が理想とする学級雰囲気によって分類すること目的とする。
方  法
調査対象と実施時期
 北海道内の公立小学校に勤める現職教員77名から回答を得た。2018年12月から2019年1月に実施した。事前に承諾を得た北海道内の小学校2校に用紙を送付したほか,教職大学院や,北海道で実施された教師の勉強会・研究大会で配布した。
質問師の内容 
 北海道内の小学校4校63教室で行なった掲示物の実態調査と,教育実習を経験した北海道の大学生3年生24名のグループワークから得られた結果を元に,退職教員3名との協議で助言を得た筆者が質問紙を作成した。教師が理想とする学級雰囲気及び児童の意識・姿勢に関する質問項目は14種類,具体的な教室内掲示物は11種類を抽出した。質問紙は最終的にフェイスシート,「学級雰囲気に関する質問項目(6件法)」,「教室内掲示物のねらいに関する質問項目(6件法)」であった。
結果と考察
 まず,「教師が理想とする学級雰囲気」の14項目について因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行なった。因子寄与率が低い項目と,複数の因子に高い負荷量を示した項目を削除した。固有値が1以上で因子を抽出した結果,第一因子を「自己・他者理解」(理解),第二因子を「規範意識」(規範),第三因子を「クラス内の活気」(活気)とそれぞれ命名する因子を得られた。
 次に,掲示物の関係性の平均得点を算出し,参加者内の1要因分散分析(Table 1)を行った。例えば,時計という掲示物に対し,学級雰囲気の「理解(6項目)」,「規範(3項目)」,「活気(2項目)」に分類された項目同士の平均値を参加者内分散分析で比較した。その結果,11種類中,8種類の掲示物で有意差がみられた。なお,得点の平均値はTable 2に示した。
 本研究では教師が理想とする学級雰囲気によって,具体的な掲示物がそれぞれ使い分けられていることが示された。教師が「理解」と「規範」を重視する際に,学級において共同生活を送る上で必要な仕事に言及する掲示物を,「理解」と「活気」の際には,学習の進捗や軌跡がわかる掲示物や,児童自身が自分の努力の成果を確認できる掲示物を,そして「規範」の際に,学級担任や学校全体で決められるルールや枠組み,目標を示す掲示物を用いると考えられる。