日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

2019年9月16日(月) 13:00 〜 15:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH34] 座席位置とエゴグラム及び情動知能の関係

多根井重晴1, 岡村季光2, 豊田弘司3, 陳福士#4, 安西和紀#5 (1.日本薬科大学, 2.奈良学園大学, 3.奈良教育大学, 4.日本薬科大学, 5.日本薬科大学)

キーワード:座席位置、エゴグラム、情動知能

 学校における環境の整備は重要な課題であるが,中でも座席位置は児童・生徒の居場所(豊田・吉田,2012)との関わりがあり,注目すべき要素である。座席位置は,視線,距離,動機づけの関係によって決まり,距離は親密度と関係があり,視線は状況によって親愛と敵意という異なる機能を持つという(Cook,1970)。従来の研究では座席位置と様々な心理特性の関係が検討されてきた。例えば,リーダーシップ(Hare & Bales,1963; Howell & Becker,1962),自己概念(Dykman & Reis,1979),Y-Gによる性格特性(北川,1980; 渋谷,1986),授業に対する意欲(北川,2003)等である。従来の研究では,実際の座席位置による違いを検討したが,仮想場面における座席位置の違いによっても,心理的特性の違いが見いだせる可能性はある。前報(多根井・豊田,2018)では,本報でも用いる2つの仮想場面における座席選択と相互独立-相互協調的自己観(高田,2000)の関係を検討し,仮想場面(Figure 1)における座席3を選択した者は個の認識・主張及び独断性が,他の座席を選択した者よりも低かった。本報では,同じ仮想場面における座席選択とエゴグラム及び情動知能の関係を検討する。
方  法
調査対象 大学生及び専門学校生132名。これらの調査対象には年齢及び性別はたずねていない。
調査内容
a)仮想場面における座席の選択 
参加者にFigure 1の仮想場面における座席位置を選択させた。
仮想場面 あなたは,ある教職に関するセミナーに参加し,はじめて会った人たち4名と,話し合って,一つの結論を出すように指示されました。さて,あなたは,どの座席に座りますか?
b)エゴグラム・チェックリスト 杉田(1990)による尺度。CP(「後輩がミスをするとすぐにとがめますか。」),NP(「人から道を聞かれたとき、親切に教えてあげますか。」),A(「感情的というよりも、理性的なほうですか。」),FC(「うれしいときや悲しいときに、顔や動作にすぐ表しますか。」)及びAC(「あなたは遠慮がちで消極的なほうですか。」)の各尺度に対応する項目が10項目ずつ,合計50項目。2件法で回答。なお,原版では,「どちらでもない」という回答も含めた3件法であるが,豊田(2010)と同じく,回答のしやすさとエゴグラムの特徴が見えやすいように2件法を採用した。
c)日本版(J-WLEIS) 豊田・山本(2010)による尺度で「自己の情動評価」,「他者の情動評価」,「情動の利用」及び「情動の調節」という下位尺度(4項目ずつ)から構成。回答は7件法。
結果と考察
選択率 各座席の選択率を算出すると,座席1が23%,座席2が21%,座席3が13%,座席4が7%,座席5が36%であった。前報と同じく,両方から挟まれた座席4がパーソナルスペースを侵害される可能性から選択されない可能性が高い。
座席選択とエゴグラム及び情動知能との関係 エゴグラムにおけるAC得点と座席選択との間に関連が認められた。すなわち,座席1及び2を選択した者のAC得点(M=10.00,SD=5.74)が座席3,4及び5を選択した者のAC得点(M=12.49,SD=4.84)よりも低かった。リーダーシップに関する研究(Hare & Bales,1963)によれば,席数が少ない座席列を選択する者がその席数が多い座席列を選択する者よりもその座席での話合いのリーダーになる確率の高いことが示されている。この視点からすると,座席数の多い列を選択した者はフォロアーになる可能性が高いことになり,それはACの順応的自我状態(期待に応えようとする自我)を反映していると解釈できよう。なお,情動知能尺度(J-WLEIS)と座席選択との関連は見いだせなかった。今後,さらに多様な特性に関する検討を行うことが課題である。