[PH38] 児童のテレビゲームの使用が社会性・攻撃性に与える影響
ゲームを行う人数と社会性・攻撃性の関係
Keywords:テレビゲーム、児童の社会性、集団
問題と目的
近年,不登校児童の増加が問題となっており,要因も様々である。その中の一つには学校や学級といった集団に適応できないことが上げられる。相川(2009)は,社会的スキルの低い子どもは,仲間からの無視や拒否を受けやすく強い孤独感や抑うつ感情を抱きやすいと述べている。そのため,集団に適応できなくなる児童の特徴の1つとしてとして社会的スキル(social skill)の欠如が挙げられる。
社会的スキルを高める要因は様々あるが,誰もが経験をし,近年大きく変わってきているものである「遊び」について着目をする。近年は屋外で遊ぶことよりも屋内でテレビゲームを行うことが増えている。遠藤ら(2007)では外遊びを行うことの方が社会性は高くなり,集団で遊ぶことが社会性の発達につながると述べられている。社会性だけではなく,屋内で遊ぶ児童の攻撃性が屋外で遊ぶ児童よりも高いと述べられている。
そこで本研究では,小学生の児童を対象とし,テレビゲームの使用状況を調査すると共に,テレビゲームを集団で行うことが,重要視されている児童の社会性・攻撃性に与える影響について検討をするものである。
方 法
調査時期 2019年1月に実施をした。
調査協力者 千葉県A市の公立小学校8校に在籍する5・6年生450名(男子242名,女子205名,無回答3名)を対象とした。
質問紙 以下の①②③からなる質問紙を使用した。
①テレビゲームの使用状況に関する項目 1週間使用日数や使用時間,使用しているゲーム機などの7項目。
②社会性に関する尺度 瀧口ら(2014)の学校現場における児童の社会性測定法による調査項目の一部を使用した。「機能面」5項目,「情緒面」5項目の計10項目。回答は4件法である。
③攻撃性に関する尺度 坂井ら(2004)の小学生用P-R用質問紙から一部を使用した。「表出性攻撃」4項目,「不表出性攻撃」4項目,「関係性攻撃」4項目の計12項目。回答は4件法である。
手続き 各教室で教員が読む説明文を作成し,その指示のもと,質問紙の回答を行ってもらった。
結 果
社会性・攻撃性の関係 社会性は機能面・情緒面社会性の3項目,攻撃性は表出性攻撃・不表出性攻撃・関係性攻撃・攻撃性の4項目それぞれの平均得点を算出し,テレビゲームを行う人数との相関関係を検討した。その結果,社会性3項目,攻撃性4項目それぞれとテレビゲームを行う人数の間には有意な相関がみられなかった。
社会性に与える影響 各学校とテレビゲームを行う人数の2要因分散分析を行った結果,人数の主効果は有意ではなかったが,学校の主効果はF(7,369)=2.55,p<.001で有意となった。また,学校とテレビゲームを行う人数の交互作用(F(30,369)=1.61,p=.025)も有意となった。下位検定の結果,8校中NG小学校においては,3人でゲームを行う群・4人でゲームを行う群ともに(3人:p=.011,4人:p=.005)1%水準で5人以上でゲームを行う群を有意に上回っていた。
次に人数別に注目すると,「まったくしない群」「2人でゲームを行う群」「5人以上でゲームを行う群」において,その他の人数より有意に情緒面の点数が高かった(全くしない:p=.013,2人:p=.019,5人以上:p=.007)。
考 察
今回の調査を行った地域は地方であり,各学校の児童数や学区の広さなどの特性がとても強いことが考えられる。その他にも地域の特性自体もそれぞれで異なっている。そのため分散分析では学校の主効果が有意になった理由であると考えられる。
人数では5人以上という大人数で行う中で,お互いを助け合ったり,コミュニケーションを取り合ったりする機会が増加する。その中で相手の気持ちを考えながらやり取りをするため,情緒面が有意になったと考えられる。2人では5人以上の時よりも常にお互いにやり取りをするため,同様のことが言えるのではないかと考えられる。しかし3人や4人の場合では有意差が出なかったため,人数が増えることが社会性の向上につながるとは考えにくい。
今回は学校の特性がとても強い地域での調査だったため,比較的特性が弱くなるであろう都市部でも同様の調査を行う必要がある。
近年,不登校児童の増加が問題となっており,要因も様々である。その中の一つには学校や学級といった集団に適応できないことが上げられる。相川(2009)は,社会的スキルの低い子どもは,仲間からの無視や拒否を受けやすく強い孤独感や抑うつ感情を抱きやすいと述べている。そのため,集団に適応できなくなる児童の特徴の1つとしてとして社会的スキル(social skill)の欠如が挙げられる。
社会的スキルを高める要因は様々あるが,誰もが経験をし,近年大きく変わってきているものである「遊び」について着目をする。近年は屋外で遊ぶことよりも屋内でテレビゲームを行うことが増えている。遠藤ら(2007)では外遊びを行うことの方が社会性は高くなり,集団で遊ぶことが社会性の発達につながると述べられている。社会性だけではなく,屋内で遊ぶ児童の攻撃性が屋外で遊ぶ児童よりも高いと述べられている。
そこで本研究では,小学生の児童を対象とし,テレビゲームの使用状況を調査すると共に,テレビゲームを集団で行うことが,重要視されている児童の社会性・攻撃性に与える影響について検討をするものである。
方 法
調査時期 2019年1月に実施をした。
調査協力者 千葉県A市の公立小学校8校に在籍する5・6年生450名(男子242名,女子205名,無回答3名)を対象とした。
質問紙 以下の①②③からなる質問紙を使用した。
①テレビゲームの使用状況に関する項目 1週間使用日数や使用時間,使用しているゲーム機などの7項目。
②社会性に関する尺度 瀧口ら(2014)の学校現場における児童の社会性測定法による調査項目の一部を使用した。「機能面」5項目,「情緒面」5項目の計10項目。回答は4件法である。
③攻撃性に関する尺度 坂井ら(2004)の小学生用P-R用質問紙から一部を使用した。「表出性攻撃」4項目,「不表出性攻撃」4項目,「関係性攻撃」4項目の計12項目。回答は4件法である。
手続き 各教室で教員が読む説明文を作成し,その指示のもと,質問紙の回答を行ってもらった。
結 果
社会性・攻撃性の関係 社会性は機能面・情緒面社会性の3項目,攻撃性は表出性攻撃・不表出性攻撃・関係性攻撃・攻撃性の4項目それぞれの平均得点を算出し,テレビゲームを行う人数との相関関係を検討した。その結果,社会性3項目,攻撃性4項目それぞれとテレビゲームを行う人数の間には有意な相関がみられなかった。
社会性に与える影響 各学校とテレビゲームを行う人数の2要因分散分析を行った結果,人数の主効果は有意ではなかったが,学校の主効果はF(7,369)=2.55,p<.001で有意となった。また,学校とテレビゲームを行う人数の交互作用(F(30,369)=1.61,p=.025)も有意となった。下位検定の結果,8校中NG小学校においては,3人でゲームを行う群・4人でゲームを行う群ともに(3人:p=.011,4人:p=.005)1%水準で5人以上でゲームを行う群を有意に上回っていた。
次に人数別に注目すると,「まったくしない群」「2人でゲームを行う群」「5人以上でゲームを行う群」において,その他の人数より有意に情緒面の点数が高かった(全くしない:p=.013,2人:p=.019,5人以上:p=.007)。
考 察
今回の調査を行った地域は地方であり,各学校の児童数や学区の広さなどの特性がとても強いことが考えられる。その他にも地域の特性自体もそれぞれで異なっている。そのため分散分析では学校の主効果が有意になった理由であると考えられる。
人数では5人以上という大人数で行う中で,お互いを助け合ったり,コミュニケーションを取り合ったりする機会が増加する。その中で相手の気持ちを考えながらやり取りをするため,情緒面が有意になったと考えられる。2人では5人以上の時よりも常にお互いにやり取りをするため,同様のことが言えるのではないかと考えられる。しかし3人や4人の場合では有意差が出なかったため,人数が増えることが社会性の向上につながるとは考えにくい。
今回は学校の特性がとても強い地域での調査だったため,比較的特性が弱くなるであろう都市部でも同様の調査を行う必要がある。