[PH48] 技術教育の作業学習における主体的学びと「段取り」に関する検討
聴覚障害特別支援学校の全国調査から
Keywords:技術教育、段取り、聴覚障害
問 題
中学校学習指導要領(2017)技術・家庭科の技術分野の目標に,「ものづくりなどの実践的・体験的な学習活動を通して,材料と加工,エネルギー変換,生物育成及び情報に関する基礎的・基本的な知識及び技術を習得する」と記述がある。
作 業学習を通して,ものづくりの重要性や技能技術が果たす役割を理解し,働くことの意義や喜び,自らの果たせる役割,共同作用に必要なコミュニケーション力等を理解・修得することは重要な課題である。
一方で,技術教育における作業学習では,授業時間の経過とともに,作業の早い学習者と遅れがちな学習者との間に,作業において大きな進度差が生じ,とりわけ作業に遅れがちな生徒の中には,作業意欲を失い,途中で投げ出す問題が指摘されている。
土井(2001)は,「作業に遅れがちな学習者は,作業に入る前に,自分自身が授業時間毎に作業の見通しや作業の方略をもたず,具体的な作業準備もせず,さらに他者からの情報を集めるなど,不十分な状態で作業に入ろうとしている」と指摘している。
このような事態を避けるために,教師は,作業の遅れがちな学習者の作業を直接手伝ったり,作業の早い学習者を待たせたり,あるいは,作業の早い学習者に遅れがちな学習者の手助けをさせるなど様々な指導をしているが,このような指導は,「作業に遅れがちな学習者自身の力で作業処理を合理的に遂行できるように作業改善を図った学習指導とはいえず,対処療法的な学習指導である」とも指摘している。
また,聴覚障害のある生徒は,情報受容やコミュニケーションなどの制約に限らず,作業遂行において状況把握や見通しをもってプランニングし,効率的な行動をとることにも苦手さがあると学校現場では指摘されることが多い。
このような,学習者が自律的に作業に取り組むことや,作業の見通しを立てること,作業手順の理解や工具準備への困難さによる学習者間に作業進度差が起こる問題に対して検討する。
目 的
本研究は,聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部のものづくりの授業担当者に質問紙調査を実施し,作業をすすめる「段取り」に関してや,授業での配慮等について実態を明らかにすることを目的とする。
方 法
対象・手続き
全国にある聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部110校(内64校は高等部及び中学部のある学校)のものづくりの授業担当者担任教諭を対象に質問紙調査を実施し,返送があった聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部48校(回収率44%)を対象にした。
調査内容 作業段取りに関する質問項目(37項目)
土井康作(2001)の尺度の項目を参考に,特別支援学校に即した計37項目からなる尺度であった。
結 果
回答者の平均教員経験年数は22.5年(SD = 11.7)であった。回答のあった高等部及び中学部のものづくりの授業担当している生徒数は,1129名であった。
質問項目の「立てた計画通りに物事を進めることができる生徒数」についてFigure 1とTable 1に示す。
考 察
本研究においては,先行研究ならびに,実践の概観から,聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部のものづくりの授業担当者に,作業をすすめる「段取り」に関してや,授業での配慮等について実態を調査した。
今回の調査から生徒の作業学習において,作業手順を特徴づける方略に対応するような学習指導法について検討する必要性が推察された。また,作業遂行において状況把握や見通しをもってプランニングし,効率的な行動をとるなどの総合的に判断する経験を積ませることが課題として上げられる。
(HIRONO Masato, HASHIMOTO Soichi, HAYASI Akiko, KAJII Yoshiaki, KUSAKA Kotaro, SUGIOKA Chihiro, MIURA Takuya, KUMAGAI Ryo)
中学校学習指導要領(2017)技術・家庭科の技術分野の目標に,「ものづくりなどの実践的・体験的な学習活動を通して,材料と加工,エネルギー変換,生物育成及び情報に関する基礎的・基本的な知識及び技術を習得する」と記述がある。
作 業学習を通して,ものづくりの重要性や技能技術が果たす役割を理解し,働くことの意義や喜び,自らの果たせる役割,共同作用に必要なコミュニケーション力等を理解・修得することは重要な課題である。
一方で,技術教育における作業学習では,授業時間の経過とともに,作業の早い学習者と遅れがちな学習者との間に,作業において大きな進度差が生じ,とりわけ作業に遅れがちな生徒の中には,作業意欲を失い,途中で投げ出す問題が指摘されている。
土井(2001)は,「作業に遅れがちな学習者は,作業に入る前に,自分自身が授業時間毎に作業の見通しや作業の方略をもたず,具体的な作業準備もせず,さらに他者からの情報を集めるなど,不十分な状態で作業に入ろうとしている」と指摘している。
このような事態を避けるために,教師は,作業の遅れがちな学習者の作業を直接手伝ったり,作業の早い学習者を待たせたり,あるいは,作業の早い学習者に遅れがちな学習者の手助けをさせるなど様々な指導をしているが,このような指導は,「作業に遅れがちな学習者自身の力で作業処理を合理的に遂行できるように作業改善を図った学習指導とはいえず,対処療法的な学習指導である」とも指摘している。
また,聴覚障害のある生徒は,情報受容やコミュニケーションなどの制約に限らず,作業遂行において状況把握や見通しをもってプランニングし,効率的な行動をとることにも苦手さがあると学校現場では指摘されることが多い。
このような,学習者が自律的に作業に取り組むことや,作業の見通しを立てること,作業手順の理解や工具準備への困難さによる学習者間に作業進度差が起こる問題に対して検討する。
目 的
本研究は,聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部のものづくりの授業担当者に質問紙調査を実施し,作業をすすめる「段取り」に関してや,授業での配慮等について実態を明らかにすることを目的とする。
方 法
対象・手続き
全国にある聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部110校(内64校は高等部及び中学部のある学校)のものづくりの授業担当者担任教諭を対象に質問紙調査を実施し,返送があった聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部48校(回収率44%)を対象にした。
調査内容 作業段取りに関する質問項目(37項目)
土井康作(2001)の尺度の項目を参考に,特別支援学校に即した計37項目からなる尺度であった。
結 果
回答者の平均教員経験年数は22.5年(SD = 11.7)であった。回答のあった高等部及び中学部のものづくりの授業担当している生徒数は,1129名であった。
質問項目の「立てた計画通りに物事を進めることができる生徒数」についてFigure 1とTable 1に示す。
考 察
本研究においては,先行研究ならびに,実践の概観から,聴覚障害特別支援学校高等部及び中学部のものづくりの授業担当者に,作業をすすめる「段取り」に関してや,授業での配慮等について実態を調査した。
今回の調査から生徒の作業学習において,作業手順を特徴づける方略に対応するような学習指導法について検討する必要性が推察された。また,作業遂行において状況把握や見通しをもってプランニングし,効率的な行動をとるなどの総合的に判断する経験を積ませることが課題として上げられる。
(HIRONO Masato, HASHIMOTO Soichi, HAYASI Akiko, KAJII Yoshiaki, KUSAKA Kotaro, SUGIOKA Chihiro, MIURA Takuya, KUMAGAI Ryo)