日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH51] 学校予防教育「TOP SELF」の最新第3世代の特徴

教員の実施負担を軽減した新しい予防教育の授業スタイルについて

横嶋敬行1, 賀屋育子2, 内田香奈子3, 山崎勝之4 (1.鳴門教育大学, 2.兵庫教育大学, 3.鳴門教育大学, 4.鳴門教育大学)

Keywords:予防教育、児童・生徒、教育プログラム

はじめに
 近年の教育現場では,いじめや不登校,学級崩壊,校内暴力などの諸問題の解決が重要な課題になっている。特に,問題を未然に防ぐための予防教育は注目すべきアプローチの観点である。
 児童・生徒を対象とした学校予防教育の1つに,「いのちと友情の学校予防教育(Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship: TOP SELF)」がある(山崎, 2013)。TOP SELFは複数の教育プログラム群から構成されており,ここ数年の間に全国的な実施が進んでいる。そして,現在では「第3世代のTOP SELF」と呼ばれる授業システムへと改訂が進んでいる。
 本発表では,第2世代までのTOP SELFの概要および課題を示しながら,その改善を試みた第3世代のTOP SELFの特徴を紹介する。
学校予防教育「TOP SELF」
 TOP SELFは学校現場における諸問題の抜本的な予防を目指し,ユニバーサル予防教育として作られている。TOP SELFは自律性と対人関係性の育成を大目標とし,その目標を達成するため,自己信頼心の育成(本当の自己肯定感の育成),感情の理解と対処の育成,向社会性の育成,ソーシャル・スキルの育成の4つから構成されるベース総合教育がある。さらに,特定の問題の予防に焦点化したオプショナル教育も用意されている(例えば,いじめ予防教育)。
 上記の教育は,意識的な変容だけでなく,無意識に至るまで効果的に教育を浸透させるために,全人格的アプローチと呼ばれる教育の理論を提唱している。とりわけ,情動・感情の喚起に伴う学習スタイルはその中核的要素であり,情動・感情という砂地に適切な行動と認知と思考を埋め込んでいくことがTOP SELFのすべての教育に組み込まれている(山崎, 2013)。
 授業は遊び心が満載な授業空間のなかで実施される。授業の進行はパワーポイントスライド(PPT)に沿い,色彩豊かな教材やミニゲーム,アニメーション,グループ活動,ディベート,ロールプレイなどの授業内容によって情動・感情の高まりが引き出されながら,児童・生徒の主体的参加によって進められる。教育の効果検証の結果も報告されており,最新のものでは非意識レベルの心的特性の変容も確認されている(横嶋・賀屋・内田・山崎, 2018)。
 一方で,第2世代までのTOP SELFの課題は,PPTの操作や授業運営に関する一定の習熟を必要とする点にある。現在,学校教育は非常に多忙な現状にあり,授業準備や運営上の負担が改善すべき課題となっていた(山崎・内田・横嶋・賀屋・道下, 2018)。第3世代のTOP SELFは,教育の効果を維持しつつも,上記の点を改善する授業システムが取り入れられたプログラムである。
第3世代のTOP SELFの特徴
 第3世代のTOP SELFの最大の特徴は,授業運営およびPPTの操作に関するガイドがすべてスライド上に表示されることである。授業者は,画面に表示されるPPTの操作ガイドに沿ってPCの操作を行い,表示される授業運営についての説明を児童・生徒とともに読みながら授業を進めることができる。さらに,説明が難しい活動やミニゲームに関しては,音声およびアニメーションによって自動で説明が行われる。つまり,音声およびアニメーションによる自動説明機能に補助され予防教育を行うことができるというイメージが,第3世代の予防教育のコンセプトである。
 これにより,授業の準備に必要な負担は大幅に削減された。また,授業運営(主にPPTの操作性)に関する負担も軽減されているため,授業実施者が児童・生徒同士の活発な活動を促したり,発話を丁寧に取り上げたり,教室全体に指導を行き渡らせたり,授業者と児童・生徒がより豊かな相互作用の中で授業実施が可能になっている。
 教育効果に関しても,「本当の自己肯定感の育成」プログラムにおいて検証が行われており,適応的なセルフ・エスティームである自律的セルフ・エスティーム(山崎・横嶋・内田, 2017)の上昇が確認されている(e.g., 影山・横嶋・賀屋・内田・山崎, 本総会で発表予定)。
 TOP SELFは担任教員が実施することを想定して作成されているが,児童・生徒の精神的健康と行動適応を高めるためには,治療と予防が両輪となって取り組まれることが望ましく,その点において公認心理士や臨床心理士を持つスクールカウンセラーによる実施も勧められる(山崎, 2019)。
 実際のポスター発表では,具体的なTOP SELFの授業風景および教育効果の一例を扱いながら第3世代の特徴の詳細を紹介していきたい。