[PH52] 本当の自己肯定感を育成する学校予防教育の実践
徳島県藍住町での実践
Keywords:学校予防教育、自律的セルフ・エスティーム、自己肯定感
問題と目的
徳島県藍住町の多くの学校では鳴門教育大学予防教育科学センターと連携し,TOP SELF (Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)授業プログラムを実施している。TOP SELFとは「『いのちと友情』の学校予防教育」の略称である。全ての児童・生徒を対象として心身の健康・適応上の問題が顕在化する前の予防的な対処を行うものであり,教育に科学的根拠を持たせた教育的介入プログラムである(鳴門教育大学予防教育科学センター編, 2012)。
TOP SELFでは自律性と対人関係性の育成を中核としている。また,無意識において発生する身体的な反応である情動とその情動が強く生起して意識に上り,特定の感情として表出される感情としての情動を授業で十分に喚起し,教育目標としての心的特徴を学習させ,情動や感情とともに教育目標が記憶化されることを目指している(山崎,2013; 山崎ら,2018)。
近年,この教育は第3世代まで発展しつつあり,そこでは適応的ならびに不適応的な自己肯定感(セルフ・エスティーム,SE)を弁別し,適応的なもののみを育成するプログラムが開発ずみである。また,第3世代のプログラムは,最低限の準備で容易に実施できるような方法上の工夫が随所に行われることも特徴になっている。
この適応的な自己肯定感は自律的SEと呼ばれ,不適応的な他律的SEとは異なり健康や適応に有益な特性となる。そして,この適応的なSEは非意識のままに測定する必要があり,教育効果においては新たに開発された紙筆版自尊感情潜在連合テスト(P-SE-IAT,横嶋ら,2017)を使用することになる。
本研究では,第3世代予防教育「本当の『自己肯定感』の育成」を小学校5年生に実施し,統制群との比較の上でP-SE-IATで教育効果を測定した。
方 法
調査対象 小学校第5学年児童(教育群:男子31名・女子52名・計83名,統制群:男子45名・女子29名・計74名)。有効回答は,教育群男子21名・女子42名・計63名,統制群男子31名・女子19名・計50名。
手続き 教育群において2018年11月に全4回の授業を週1時間で実施した。内容はTOP SELF授業プログラム「本当の自己肯定感の育成(自律的セルフ・エスティームの育成)」である。
調査方法 教育前後1週間以内に,P-SE-IATを実施(統制群では同時期)。これは,制限時間内で紙面に並ぶ言葉を「自分」と「ポジティブ」および「自分以外」と「ネガティブ」の組み合わせに振り分けるテストである。
結果と考察
従属変数をP-SE-IAT得点とし,独立変数を時期(教育前,教育後)と性別(男児,女児)と群(教育,統制)とした3要因分散分析を行った。分析の結果,時期の主効果(F(1, 109) = 5.46, p < .05)および時期×群の交互作用(F(1, 109) = 9.24, p < .01)が有意になった。交互作用が有意であったため単純主効果の検定を行った結果,教育群のみに時期の単純主効果が有意になり(F (1, 112) = 16.52, p < .001),教育前よりも教育後のP-SE-IAT得点が上昇していた(Figure 1)。
この結果から,本授業プログラムの実施が少なからず児童の自律的セルフ・エスティームを高めていると考えられる。自己を肯定的に捉えることにより,子どもたちにとって教室や学校が安心できる「居場所」になる。このプログラムの実施を一つのきっかけとして,各学級や学校が安心感のある「居場所」になっていくことを願う。
徳島県藍住町の多くの学校では鳴門教育大学予防教育科学センターと連携し,TOP SELF (Trial Of Prevention School Education for Life and Friendship)授業プログラムを実施している。TOP SELFとは「『いのちと友情』の学校予防教育」の略称である。全ての児童・生徒を対象として心身の健康・適応上の問題が顕在化する前の予防的な対処を行うものであり,教育に科学的根拠を持たせた教育的介入プログラムである(鳴門教育大学予防教育科学センター編, 2012)。
TOP SELFでは自律性と対人関係性の育成を中核としている。また,無意識において発生する身体的な反応である情動とその情動が強く生起して意識に上り,特定の感情として表出される感情としての情動を授業で十分に喚起し,教育目標としての心的特徴を学習させ,情動や感情とともに教育目標が記憶化されることを目指している(山崎,2013; 山崎ら,2018)。
近年,この教育は第3世代まで発展しつつあり,そこでは適応的ならびに不適応的な自己肯定感(セルフ・エスティーム,SE)を弁別し,適応的なもののみを育成するプログラムが開発ずみである。また,第3世代のプログラムは,最低限の準備で容易に実施できるような方法上の工夫が随所に行われることも特徴になっている。
この適応的な自己肯定感は自律的SEと呼ばれ,不適応的な他律的SEとは異なり健康や適応に有益な特性となる。そして,この適応的なSEは非意識のままに測定する必要があり,教育効果においては新たに開発された紙筆版自尊感情潜在連合テスト(P-SE-IAT,横嶋ら,2017)を使用することになる。
本研究では,第3世代予防教育「本当の『自己肯定感』の育成」を小学校5年生に実施し,統制群との比較の上でP-SE-IATで教育効果を測定した。
方 法
調査対象 小学校第5学年児童(教育群:男子31名・女子52名・計83名,統制群:男子45名・女子29名・計74名)。有効回答は,教育群男子21名・女子42名・計63名,統制群男子31名・女子19名・計50名。
手続き 教育群において2018年11月に全4回の授業を週1時間で実施した。内容はTOP SELF授業プログラム「本当の自己肯定感の育成(自律的セルフ・エスティームの育成)」である。
調査方法 教育前後1週間以内に,P-SE-IATを実施(統制群では同時期)。これは,制限時間内で紙面に並ぶ言葉を「自分」と「ポジティブ」および「自分以外」と「ネガティブ」の組み合わせに振り分けるテストである。
結果と考察
従属変数をP-SE-IAT得点とし,独立変数を時期(教育前,教育後)と性別(男児,女児)と群(教育,統制)とした3要因分散分析を行った。分析の結果,時期の主効果(F(1, 109) = 5.46, p < .05)および時期×群の交互作用(F(1, 109) = 9.24, p < .01)が有意になった。交互作用が有意であったため単純主効果の検定を行った結果,教育群のみに時期の単純主効果が有意になり(F (1, 112) = 16.52, p < .001),教育前よりも教育後のP-SE-IAT得点が上昇していた(Figure 1)。
この結果から,本授業プログラムの実施が少なからず児童の自律的セルフ・エスティームを高めていると考えられる。自己を肯定的に捉えることにより,子どもたちにとって教室や学校が安心できる「居場所」になる。このプログラムの実施を一つのきっかけとして,各学級や学校が安心感のある「居場所」になっていくことを願う。