日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PH] ポスター発表 PH(01-65)

Mon. Sep 16, 2019 1:00 PM - 3:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:00~14:00
偶数番号14:00~15:00

[PH61] 小学校教員の二次元レジリエンスと協働的効力感の関係

松本慎也 (関西学院大学大学院)

Keywords:小学校教員、レジリエンス、協働的効力感

 文部科学省の調査(2018)によると,教員の離職率は5年間で減少しているが,教員の病気による離職者の約6割が精神疾患を理由に離職せざるを得ない状況にあることが明らかになっている。また,調査では明らかにならない,苦悩を抱えた教員も少なからず存在しているに違いない。
 以上のような社会的背景のもと,本研究の目的は,教員が教職経験を通し,「レジリエンス」をどのように獲得的に高めていくことができるか,そのプロセスを見出すことである。本研究では,小学校現場の実態把握のため,小学校教員を対象としたインタビュー調査を行った。
方  法
インタビュー 兵庫県,京都府,静岡県の小学校に勤務する教員7名(男3名,女4名)。
手続き 半構造化面接を行い,自身の教員生活における危機的状況や困難な出来事と,その危機的状況や困難にどのように向き合ったのかを語ってもらった。インタビューの場所は,対象者から話しやすい場所を提示してもらった。インタビューの内容は,対象者の同意を得たのち,ICレコーダーに録音した。一人あたりのインタビュー時間は,60分~70分であった。
 質問項目は以下の5項目であるが,状況に応じて必要な質問を追加した。
1.校務分掌・クラス担任など
2.仕事の中で、最も苦しい・辛い・困難だと思う出来事はあるか。またどのようなことか。
3.上記の出来事に対して,現在は克服できているか。またどのようにして克服できたか。
4.現在進行中の困難な出来事はあるか。またどのようなことか。
5.この先,自分にどのような能力が身につけば自信になるか。また身に付けることは可能か。
結果と考察
 本インタビュー調査では,教員が危機的状況や困難な出来事に直面した際,その状況をどのように乗り越えていくのか,また,どのように受け止めているのかに注目した。危機的状況や困難な出来事への対応として,インタビュイーの多くは,職場環境や同僚の関係性,職場の雰囲気を大切だとする発話をした。
 以上のような結果を統計的に探索するため,筆者は,教員の同僚性や教師効力感に注目し,二次元レジリエンス尺度(平野,2010),教員の協働的効力感尺度(淵上・西村,2004)を使用することとし,以下のような仮説を立てた。
1.新任教員の自己理解項目の得点が高いこと,かつ,同僚の他者心理の理解項目の得点が高いと,新任教員の獲得的レジリエンスが高いだろう。
2.資質的要因の行動力項目の得点が高く,かつ,獲得的要因の問題解決志向の得点が高い教員は,協働的効力感の得点も高いだろう。
3.協働的効力感の得点が高いほど,獲得的レジリエンスが高いだろう。
 今後,これらの仮説を検証する手立てとして,小学校教員を対象とした質問紙調査を検討中である。