日本教育心理学会第62回総会

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ポスター発表(教授・学習・認知)

[P] ポスター発表(教授・学習・認知): P055-P188

2020年9月19日~21日

[P105] 課題解決における既有知識の使用に及ぼす大学教育の影響

「誘導法」による分析

工藤 与志文1, 進藤 聡彦2, 佐藤 誠子3 (1.東北大学, 2.放送大学, 3.石巻専修大学)

Keywords:課題解決、大学教育、誘導法

本研究は,大学生であれば解決に必要な知識を持っていると想定されるタイプの課題を用意し,その解決過程を「誘導法」によって分析することにより,課題解決における既有知識の使用状況と大学教育との関連を検討したものである。医学系,農学系,社会系,工学系学部の1年生70名に対し,塩素系と酸素系の洗剤を混ぜるとなぜ危険なのか説明する課題を与え,ヒントを段階的に与えて正答に誘導する過程での回答変化を分析した。その結果,塩素ガスが発生するというヒントは全く効果がなかったものの,塩素ガスと水の化学反応式をヒントとして与えた段階では,正答できた者の割合が医学系と農学系の学生で急増したが,工学系の学生は社会系と同程度の低い増加率にとどまり,化学式に関する知識を課題解決に使えないケースが目立った。理系学部間の違いを高校までの理科教育の違いに帰すことは困難であり,大学教育が既有知識の使用に影響していることが示唆される。