日本教育心理学会第62回総会

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ポスター発表(教授・学習・認知)

[P] ポスター発表(教授・学習・認知): P055-P188

2020年9月19日~21日

[P152] リスク認知を促進する脅威遭遇事例の特徴

被害者との心理的距離と行動の落ち度に着目した検討

長谷部 育恵, 楠見 孝 (京都大学)

Keywords:リスク認知、脅威遭遇事例、心理的距離

本研究では,他者の脅威遭遇事例には聞き手のリスク認知を高める効果があるかについて検討した。その際,脅威遭遇事例における (a) 被害者との心理的距離,(b) 被害者の行動の落ち度に着目した。実験には740名が参加し,148名には脅威遭遇事例を呈示せず(統制群),残りの592名の参加者には「親しい友人(または,TV番組で話す一般人)が健康管理に普段から努めていたが(または,健康管理に無頓着であり),ある日,食中毒で苦しんだ」という内容の脅威遭遇事例(計4種類)のうち,いずれか一つを呈示した。実験の結果,(1) 脅威遭遇事例を呈示した方がしないよりもリスク認知を高めること,(2) 被害者の落ち度にかかわらず,心理的距離の近い人物の脅威遭遇事例の方が遠い人物の事例よりもリスク認知を高めることが示された。脅威遭遇の体験談を身近な人と語り合うことは,互いのリスク認知の促進に繋がる。コミュニケーションを通してリスク認知を高める方法を示した点で,本研究には社会的意義があるといえる。