日本教育心理学会第62回総会

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ポスター発表(教授・学習・認知)

[P] ポスター発表(教授・学習・認知): P055-P188

2020年9月19日~21日

[P178] 仮説実験授業のたのしさを決めるもの(6)生態学的合理性

ベイズ学習論とシャノン情報学とで明らかとなる「生態学的に合理的」な学習の姿と授業デザイン

守屋 明佳 (仮説実験授業研究会)

Keywords:仮説実験授業、ベイズ学習論、シャノン情報学

日本の生徒の「学力」は高いが学びの喜びは低い(本田由紀)。この理由を学び手が人間という生物である事実に立ち戻って原理的に考察した。参考にしたのは「仮説実験授業」である。結果以下が判明した。(1)自己の可能性を左右する「世界についての内部モデル」が予測を生み試される時にこそ,学び手の学びは深くたのしい。(2)内部モデルの予測能力を高める,よって環境内の「不確実性の縮減」をもたらし,シャノン情報学的にみて「情報価」を持ちかつそう認識される情報こそ,学び手にとっては価値を持つ。情報も知識も主体による「予測行為」を経ずには「情報価」を生まない。(1)(2)の時初めて,学習には「生態学的合理性」が実現する。予測誤差最小化原理に基づく内部モデルの修正は乳児期に始まり生涯続くベイズ学習であり,「手本がないか誤っている場合の個体学習」や「模倣による社会的学習の有効性の確認」はいずれもこれによっている。そしてこの予測を駆動するのが情報価なのである。予測すればこそ世界の「応答性」の発見もあり得る。「学び手にとっての情報価」を重視した授業デザインの為に,情報概念に依拠した「教育のメタ理論」が必要とされていないか。