日本教育心理学会第62回総会

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ポスター発表(臨床)

[P] ポスター発表(臨床): P234-P248

2020年9月19日~21日

[P245] 国内における不登校研究の概観

2008-2018年の論文による研究動向の検討

松下 ひとみ, 森下 文, 伊藤 美奈子 (奈良女子大学)

Keywords:不登校研究、文献検索

不登校の小中学生数は2012年度以降増加し,2018年度は16万人を超えた(文部科学省,2019)。一方,2016年に公布された教育機会確保法により,学校以外での教育機会確保が国と自治体の責務となり,学校復帰を前提とした不登校対策は大きく転換した。この変化を踏まえ2008 -2018年の不登校研究動向を分析した。2008年以降不登校児童生徒の増減と研究総数は呼応していたが,2015年をピークに減少傾向となった。減少が著しい心理領域論文460件を研究フィールドで分類すると,「学校」が43%と最多だが,2009年を境に半減していた。背景として,不登校渦中の児童生徒対象調査の難しさ,教職員の多忙,個人情報保護意識の高まりなど,不登校問題研究自体の困難さがみてとれる。教育機会確保法の施行により,「学校以外での教育機会確保」の意識から,学校現場での不登校対応への関心が低下した可能性も示唆されるが,児童生徒の受け皿となる「学校外」に関する研究は僅か2%であることも,今後の課題であろう。